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帰宅困難者対策
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2011(平成26)年3月11日、東北地方を襲った東日本大震災では、東日本の広い範囲で震度5以上の大きな揺れが発生しました。地震や津波による直接的な被害をほとんど受けなかった東京や横浜などの首都圏では電車が止まり、主要な幹線道路は全て大渋滞をし、翌日にかけて交通機関が長時間まひしました。東京渋谷駅や新宿駅などの主要ターミナルでは、515万人もの帰宅を急ぐ人たちであふれかえり、更なる混乱を招きました。埼玉、千葉、神奈川など郊外から都内に通うビジネスマンの多くが足止めされ、中には、徒歩で帰るのをあきらめて都内で一夜をあかした人もいました。マスコミや新聞紙上では、これらの人たちを便宜上「帰宅困難者」と呼びましたが、しかし、彼らのほとんどは被災者ではありませんでした。ただ、一時的に電車がストップして帰宅するのに少しだけ困った帰宅困難者予備軍なだけで、正確には、国や行政が想定している災害時の帰宅困難者ではなかったのです。もし、本当の災害が発生した場合には、あの時の混乱とは比べられない規模で、より長時間の支障が生じることを忘れてはいけません。
いざという時のために 職場に用意しておきたい防災グッズ【ジャンル:防災用品リスト】
日中であれば、職場にいて災害に遭うという状況も考えられます。
内閣府が行った調査によると、2011年3月11日の東日本大震災では、首都圏で推定約515万人が、当日自宅に帰宅できない帰宅困難者となりました。
都心部で災害に巻き込まれた際の移動手段 【ジャンル:地震対策コラム】
マグニチュード(M)7級の地震で、最悪の場合、死者が23000人、経済被害が約95兆円に上るとの想定が発表されています。
このような大規模の震災に直面した時のためにあらかじめ知っておきたいのが「地震が起きた時の移動手段」に関する知識です。
震災後は基本的に「むやみに動かない」ことが推奨されていますが、必ずしもじっとしておける状況とは限らないのです。
現在、国や行政では 地震は必ず来るもの として、減災・震災対策に本腰を入れて取り組んでいます。とくに首都直下地震や南海トラフ巨大地震(東海地震・東南海地震・南海地震)の被害が想定される首都圏と関西や東海の都市圏では、対策の大きな柱として帰宅困難者支援問題があげられます。国(内閣府)の2004年の想定では、東京西部(M6.9)や東京北部(M7.3)の地震で、死者が最大13,000人、住家全壊85万棟、一都三県で700万人(帰宅困難者:東京 448万人, 神奈川 110万人,千葉 82万人,埼玉 67万人)の帰宅困難者が発生すると発表されました。電力の回復に6日間、電話など通信に14日間、水道(下水道)が30日間、ガスの復旧に53日間かかり、羽田空港は液状化によりAC滑走路が使用停止となり、鉄道は663ヶ所が被害を受け特に大きな被害を受けた28ヶ所は復旧まで長期化することになります。そして、帰りたいのに帰れない人たちが大量に発生します。正式には、復旧の見通しが立たない災害の中で、自宅まで帰れない被災者たちを「帰宅困難者」と呼ぶのです。
地震直後、道路や鉄道など交通網は寸断します。とくに都市圏では、仕事をしていた人、たまたま買い物に来ていた人、学生などが、急な震災によりターミナル駅を中心にして長期間足止めされます。首都直下地震の想定では、歩いて帰れる距離に住む帰宅困難者予備軍の人たちは、時間の経過と共にしかたなく徒歩で家に帰る人が出ますので徐々に減っていきますが、徒歩で帰ることが困難な448万人の帰宅困難者はターミナル駅周辺に滞留し続けます。
長期間にわたってインフラが破壊される広域災害において、とくに昼と夜の人口が大きく異なる都市圏の帰宅困難者問題は、想像するよりも深刻であることをまず知ることが大切です。日本の災害対策では、私たちの命はそれぞれの市区町村という行政の単位が守ることになっています。そのため各行政は、税金などから予算をとって、住民のために、食料を備蓄したり、毛布を取りそろえるなどの何がしかの対策をしています。しかし、他県から通勤・通学している人たちは、地域の住民ではないので、この人達の分の備えは確保されていません。私たちが頼りにするその土地の行政機関にとっては、帰宅困難者たちはある意味で部外者なのです。そのため東京都では、7割がサラリーマンという日本の社会システムにおいて、会社単位で従業員を帰宅困難から守るように定めた「東京都帰宅困難者対策条例」を2012(平成24)年3月に制定し、翌2013(平成25)年4月から施行されています。
この帰宅困難者対策のコラムでは、東京都帰宅困難者対策条例などを中心に、自助(自分の身は自分で守る)ことや帰宅困難を取り巻く状況についての解説など対策について掘り下げていきたいと考えています。