おはようございます。
東日本大震災(2011年3月11日)から 4,673日が経過しました。
本日はクリスマスです。
もう年の瀬ですね。
クリスマスに災害の話題で恐縮ですが…
インド洋を巨大津波が襲い35万人が死傷した2004年のスマトラ島沖地震津波(インド洋大津波)は、クリスマスの翌日12月26日に発生しました。
その地震エネルギーの規模はマグニチュード9.1で、311東日本大震災(M9.0)の1.4倍、阪神淡路大震災(M7.3)の1100倍という、とてつもない規模の歴史的な大地震でした。
また、キリスト教国では、クリスマス2日目は「聖ステファンの日」「ボクシング・デー」としてキリスト教にちなんだ記念日(休日)ですから、正月前の休暇時期と重なったことで、海辺の保養地で休暇を過ごしていた多くの外国人旅行者も巻き込まれました。
被害の大きかったインドネシアやタイ、インドなどでは、19年経た今でも、津波アニバーサリー(Indian Ocean tsunami
anniversary)などとして、毎年12月26日に追悼の記念式典が行われているようです。
余談ですが…、
防災業界におりますと、一般の人から「災害の記念日に違和感がある」というお話をよく耳にします。
“記念日”というと、祝日・祝賀を意味する日と勘違いしがちのようですが、終戦記念日や震災記念日というように、祝賀以外の記念日もあるのですね。
記念という言葉には、記念碑のように、過去の出来事を思い起こすという意味が含まれているのです。
例えば、防災界隈で有名なものでも、、
・防災の日(9月1日、関東大震災の記念日)
・防災とボランティアの日(1月17日、阪神淡路大震災の記念日)
・津波防災の日(11月5日、安政南海地震にちなんだ日)
など挙げると、他にもたくさん出てきます。
ところで、12月と言えば…
12月は何故だか大災害が多いのをご存じでしょうか?
特に最近4回の南海トラフ巨大地震は、奇妙なことに全て12月に発生しているのです。
・昭和南海地震(M8.0 1946年12月21日)
・東南海地震(M7.9 1944年12月7日)
・安政南海地震(M8.4 1854年12月24日)
・安政東海地震(M8.4 1854年12月23日)
判明している過去1300年間の12回の南海トラフ巨大地震のうち、直近4回が12月で、旧暦も含めると、慶長地震(旧暦:慶長9年12月16日→現行歴:1605年2月3日)も12月です。
他にも被害規模の大きなものをざっと挙げてみても、
・富士山の大噴火(1707年12月16日~31日)*宝永噴火・1つ前の富士山噴火
・ローマ帝国 アンティオキア地震(M7.5 115年12月13日)*死者26万人・歴史上3位の被害地震
・中国の海原地震(M8.6 1920年12月16日)*死者24万人・歴史上6位の被害地震
・スマトラ島沖地震津波(M9.1 2004年12月26日)*死者23万人・歴史上7位の被害地震
・ペルシア帝国 ダムガン地震(M7.9 856年12月22日)*死者20万人・歴史上10位の被害地震
・イタリア バジリカータ地震(M7.0 1857年12月16日)*死者19,000人
・イタリア メッシーナ地震(M7.2 1908年12月28日)*死者12万人・歴史上14位の被害地震
・アゼルバイジャン シェマハ地震(M6.9 1667年12月17日)*死者8万人
・ソ連 スビタク地震(M6.8 1988年12月7日)*死者3万人
・元禄地震(M8.2 1703年12月31日)*1つ前の関東大震災
・慶長三陸地震(M8.1 1611年12月2日)*三陸沿岸に10m-20mの大津波
・越後三条地震(M6.9 1828年12月18日)*新潟最大の被害地震 死者1千人以上
…などと専門書にでてくるレベルの超有名な歴史地震が目白押しです。
そういえば、中国の武漢で新型コロナウイルスの第一報が流れたのも12月(2019年12月31日)でした。
12月は不思議と大災害が多いように思いますが、
科学的には、これらは“単なる偶然”とされています…。
単なる偶然の確率を考えて見ましょう。
私たち人類は1年単位の暦で生活をしていますので、1年365日のどこかが「特別な日」と感じてしまうものです。
人間なのだから仕方のないことですね。
でも、人間の認知、とりわけ私たちの直観や常識がいかに頼りないものであるのか、という例え話に「誕生日のパラドックス」という確率理論があります。
これは、確率計算で、23人の人が集まるパーティでは、少なくとも誰か二人が同じ誕生日である確率が50%を超え、さらに70人も集まれば、その確率は99.9%にまで跳ね上がる、というものです。
えーっ、同じ誕生日!!
と盛り上がったとしても、確率的には学校の同じクラスに同じ誕生日の人がいることは、そう珍しくないのかもしれません。
私は詳しく解説できませんので、ネットで調べて下さい。
例えば、コイントスをして、何度も続けて表がでたとすると、次こそは裏がでると人は期待しがちですが、例え何度も表が続いたとしても、確率的には次に裏がでる確率は、いつも1/2で変わりません。
物理学者のジョージ・ガモフ(1904~1968)は、七階建ての建物で、二階の部屋から六階の研究室に行くのに、待っているエレベーターがたいてい下りから来て、逆に、六階の研究室から二階に戻る際には、やって来るエレベーターが上りばかりなのに気付きました。
彼は、直観的にどの階でも上りも下りも同じようにエレベーターは来そうなものと勘違いしていましたが、確率的には実はそうではない、という自分の盲点に気付いたのでした。
建物の下層で待っていれば、エレベーターの大部分は上にいるのが当たり前ですし、上層階であれば、エレベーターの大半は下にいるので、やって来るのは上りが多いのは当たり前のことです。
正直、そんなに騒ぐほどの発見でもないような、と思うエピソードですが、彼には大真面目な話だったようです。
しかし、二度ある事は三度ある…
災害は同じ場所で繰り返し発生する…と科学的にも言われていますが、“偶然”にも年をまたいで同じ日に同じ場所で災害が発生することがありました。
昨年(2022年)のことです。
メキシコで、過去3度にわたって同じ日に大地震が起こりました。
1回目は、1985年9月19日(M8.0)
*震源はメキシコの太平洋岸で震源の深さは27km
2回目は、2017年9月19日(M7.1)
*震源はメキシコ中部(内陸)で震源の深さは約51km
3回目は、2022年9月19日(M7.6)
*震源はメキシコ中西部(内陸)で震源の深さは約15km
地震でメキシコが揺れたという点では同じですが、正確には震源は異なっているようにも思います。
ただ、同じ9月19日に3度も大地震が起きる確率は、当時の朝日新聞の記事を読むと 0.00000024% と天文学的なのだそうです。
同じ昨年ですが、2022年12月4日、インドネシアのジャワ島にあるスメル火山が大規模噴火して、「日本近海の潮位変化や津波なし」と気象庁が会見して(小さな)ニュースになりましたが、
実は、このスメル火山も、1年前の同じ日、2021年12月4日に大噴火しています。この時は死者57人・行方不明者23人、重軽傷者104人という大きな被害となっています。
科学的には“単なる偶然”で片づけますが…。
でも、その人の心の持ちようですが、運や不運を人は気にしますし、世の中には“偶然”といって、そう簡単に切り捨てられない事柄も多々あるのだと思うのです。
昔から、私も12月は異常なまでに自然災害や大事件が多いなー、と思っていたので、正直なところ、占い師にでも「本当のところ占ってください」とでも聞いてみたいのです。
当たるも八卦当たらぬも八卦と思いつつ…。
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◆執筆者
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらい ひろや)
防災士(日本防災士機構登録No.040075)、日本人間工学会会員。
1970(昭和45)年、東京都世田谷区生まれ。神奈川県横浜市在住。日本大学大学院で安全工学・人間工学を専攻。大学院修了後、大手ゲーム製造メーカーに入社、企画開発、PL(製造物責任法)担当や品質管理(ISO9000)に携わる。2001(平成13)年、災害用長期備蓄食〈サバイバル®フーズ〉の輸入卸元、株式会社セイエンタプライズ取締役に就任。阪神淡路大震災で家族が神戸で罹災、日常の防災意識や危機管理の啓蒙普及を企図した無料メールマガジン『週刊防災格言』を07年よりスタート。毎週月曜日に防災格言を発信し続け2万人の読者を得ている。
【書籍】天災人災格言集―災害はあなたにもやってくる! ¥1,650(税込)