インフルエンザ大流行か？

今年はインフルエンザ大流行か…

今年（2023年）5月8日から、それまでの感染症法上の「2類（相当）」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられた
新型コロナウイルス感染症――。

いま、新型コロナが減少する一方で、季節性インフルエンザの感染者が急増しています。

2023年11月10日の厚生労働省の速報値や国立感染症研究所の発表によると…

全国約5千の医療機関による定点観測（10月30日～11月5日）で新型コロナの新規感染者数は1医療機関あたり「2.44人（1万2065人）」となり、9週連続で減少、5類移行後で最少の感染者数となりました。

ところが、インフルエンザの定点観測（10月30日～11月5日）では、1医療機関当たり「21.13人（10万4359人）」で、10週連続で増加しました。

流行警報の発令水準となる「30人」を超えた自治体も多いようです。

私の子どもが通う中学校でも先週に学級閉鎖となりました。

※厚生労働省「インフルエンザの発生状況（2023/11/10）」
https://www.mhlw.go.jp/content/001165791.pdf

※国立感染症研究所「新型コロナの発生状況」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/12015-covid19-surveillance-report.html


今年のインフルエンザは、昨年（2022年）末に流行の目安（1医療機関あたり1人）を超えてから、ずっと流行が継続しているようです。10年ぶりの異常事態だといいます。

以前、“ウイルス干渉”という仮説も話題になりましたが…、コロナ禍（2020年～2023年）では、インフルエンザだけでなく、水痘（みずぼうそう）やRSウイルスなどほとんどの感染症の患者が激減しました。

インフルエンザなど感染症が何年も流行しなかったことで、多くの人がこれらのウイルスへの免疫が低下し、しかも、新型コロナの5類移行で、人の動きが活発化したことが影響して、感染が広がっていると考えられているのだそうです。

今年はどうやら、４年ぶりのインフルエンザ流行の年となり、

もしかすると2009年～2011年にパンデミック（世界的大流行）を引き起こした通称ブタインフルエンザこと「新型インフルエンザA型（H1N1）」以来の大流行となるかもしれません。

「薬不足」が深刻な問題に…

ここで大きな問題となるのは、ニュースにもなっていますが…多くの医療機関や薬局で、インフルエンザの検査キットや処方薬などの医薬品が不足していることです。

そして、薬不足には構造的な問題もあるようです。

医薬品には、政府で定めた全国均一の公定価格（薬価）が定められていて、薬価改定のたびに価格が引き下げられ、しかも様々なメーカーから成分の変わらない後発薬もでるので、値段だけしか差別化できない薬の卸業者同士で価格競争が起こりやすいのだと、とある週刊誌の記事にありました。

流行しない年には売れずに赤字となるので、生産量も落ち込み…ということも想像できます。

セイショップでは感染症用のマスクも古くから取り扱いしていますが、これも同じようです。だいたい前年にマスクメーカーが翌年の需要を予測して生産計画をたてているのだそうです。
そのため、ある日突然パンデミックが発生して大勢がマスクを求めるような事態となっても、その時点では、市場にマスクの数量自体がそもそも足りていないのです。

本格的なコロナ禍となる前、2020年春に客船ダイヤモンドプリンセス号が横浜に入港し、日本で新型コロナが注目されはじめた頃でしたが、その時すでに大流行（エピデミック）となっていた（恐らく）中国の人たちが毎日のようにセイショップに来店され、マスクを買われていきました。そして、一月もかからず在庫切れとなりました。

「買い占めでしょう」と聞かれましたが、セイショップの場合、その時に大量に箱買いするような外国人は一人もいませんでした。

本当ですよ。

要は、日本国内でマスク需要が高まる数か月前に、中国の人たちのあいだで、すでにマスクの需要が爆増していただけだったのです。

買い占めと備蓄…

買い占めについて、こんな話もあります。

東日本大震災（2011年）の発生直後、直接の被災地ではなかった東京都内でも、多くのコンビニや量販店で、食料や水、電池や燃料など、様々な物資が品薄となりました。

これを「買い占め」だと騒いだマスコミもありましたが、後の学術調査で、当時、物資を買い求めたほとんどの人が「少ししか買わなかった」と回答しているのがわかりました。

緊急時に買い占めをする輩は（テレビ報道を見ている限り）何人かはいるみたいですが、現実にはほとんどいないようです。

つまり、災害時に、大勢の人たちが“自分に必要な少量の物資”を店で買い求めたために、普段ちょうどよい数だけしか仕入れていない店頭の在庫が、すぐ売り切れてしまったのでした。

これが非常時ではなく日常でしたら、翌日に商品が入荷され補充されるのでしょうが、様々な混乱が発生する災害直後はなかなかそうも行かず、店頭の品薄状態はしばらくの間続くことになりました。

2000年代初頭から、セイショップでは感染症禍も災害の一つと考えて、かねてからマスクや抗菌剤などの「備蓄」も推奨してきました。
これは、こういう事態となるのが災害だと知っていたからです。

実際、どの災害でも発生する物資の不足は、こういった需要と供給のバランスが一気に崩れたときに起こるものです。

備えあれば憂いなし…

インフルエンザも重症化すれば肺炎を併発し、時には命にかかわる事態へと発展します。

例年ですと、これからの季節、冬に、インフルエンザの流行のピークを迎えますので、そのときに、未だ医薬品類が不足しているかもしれません。

だから、この時期に罹らないに越したことはありません。
それには予防が一番であることはいうまでもありません。

予防にはいくつか方法が考えられますが、一般的には、手洗い励行、手指消毒、マスク、人ごみを避ける、栄養ある食事、健康で丈夫な体つくり、睡眠など…

要は、病原菌を避け、免疫力を高める、ということです。

そして、いつ起こるか知れない「災害」に備え、物資が豊富な平和な日常時だからこそ「備蓄」できることの意義を知り…、言わば“備蓄の思想”を考えて、普段から実践するとよいでしょう。

セイショップは、皆様に、備蓄と安心をお届けしています。

◆執筆者
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也（ひらい ひろや）

防災士（日本防災士機構登録No.040075）、日本人間工学会会員。
1970(昭和45)年、東京都世田谷区生まれ。神奈川県横浜市在住。日本大学大学院で安全工学・人間工学を専攻。大学院修了後、大手ゲーム製造メーカーに入社、企画開発、ＰＬ（製造物責任法）担当や品質管理（ISO9000）に携わる。2001(平成13)年、災害用長期備蓄食〈サバイバル®フーズ〉の輸入卸元、株式会社セイエンタプライズ取締役に就任。阪神淡路大震災で家族が神戸で罹災、日常の防災意識や危機管理の啓蒙普及を企図した無料メールマガジン『週刊防災格言』を07年よりスタート。毎週月曜日に防災格言を発信し続け２万人の読者を得ている。
【書籍】天災人災格言集―災害はあなたにもやってくる! ¥1,650(税込)