災害発生時に、被災者の生活拠点として機能する「避難所」。実は、自宅や周囲に問題がなければ、あえて避難所に行かない方がいい可能性があることをご存知ですか。
今回は、避難所のメリット・デメリットとともに、避難所へ行くべきか判断する基準を解説。避難所に行く際に最低限必要なもの・あると便利なもの・持っていかない方がいいものほか、在宅避難の選択肢についてもご紹介します。
避難所は行かない方がいい?
災害発生時に、避難所へ行かない方がいいかは、自宅・周囲の状況から判断します。
つまり「災害が起きたら、絶対に避難所で過ごさなければならない」わけではありません。
実際に東京都も、自宅・周囲に危険がなく、生活が継続できる場合は、在宅避難(自宅で避難生活を送ること)を推奨しています。(※1)
※1「大震災シミュレーション 避難生活」東京都
そもそも避難所とは?
避難所は、災害によって自宅で生活できなくなった人々に対して提供される、一時的な生活の場です。
2016年4月時点で、 避難所数は全国に92,561施設あります。(※2)
「避難場所」と混同されやすいですが、 避難場所は、想定される災害に対してあらかじめ避難して命を守る場所を意味します。
なお、避難所にはメリットとデメリットの両方があるため、しっかり理解しておきましょう。
※2「平成29年版 防災白書|第1部 第1章 第2節 2-4 指定緊急避難場所と指定避難所の確保」内閣府
避難所のメリット
避難所には以下のようなメリットがあります。
● 集団生活の中で見守りやサポートが受けられる
● 共同生活のため孤独を感じない
● 避難所の建物が倒壊する恐れはほとんどない
避難所では、見守り・サポート・コミュニケーションなど、共同生活ならではのメリットが享受できます。
また、避難所は、耐震基準などを満たす堅牢な建物が選ばれるため、倒壊などのリスクもほぼないと言えるでしょう。
避難所のデメリット
避難所にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあります。
● プライバシーが確保しづらい
● 1人当たりの居住空間が狭い
● 感染症のリスクがある
● 集団生活におけるルールが複数ある
いずれも、在宅避難ではあまり感じることがないデメリットと言えるでしょう。
避難所へ行くかどうか判断する基準
避難所へ行くか、在宅避難するか決める際は以下の2点から判断します。
● 自宅や周囲の危険性
● 自宅で生活ができるか
なお、避難所へ行くか、在宅避難するかを判断するフローチャートは、各自治体からも出されています。詳しくは、お住まいの自治体のホームページなどでご確認ください。
自宅や周囲の危険性
はじめに、自宅や周囲に危険がないか、以下のような点をチェックします。
● 自宅に倒壊の被害や危険があるか
● 周囲の家の火災・倒壊などの影響を自宅が受けるか
● 土砂災害・水害などの影響を受けているか
以上のような危険がある場合は、避難所へ移動します。
なお、被災建築物応急危険度判定などによって危険と判断された場合ほか、不安や危険を感じる場合も、 避難所への避難が得策です。
自宅や周囲の危険性がない/少ないと判断される場合は、次の「自宅で生活ができるか」をチェックしてください。
自宅で生活ができるか
自宅で生活できるかどうかのポイントは「他人のサポートを必要とするか」です。
「本人・同居人が災害によって怪我をした」「持病・障がい・介護・高齢などの家族がいる」などの場合は、避難所への移動も検討してください。
なお、自宅で生活を続ける(在宅避難する)場合、食料・携帯用トイレ・カセットコンロなどの備蓄が充分にあることが望ましいです。
例えば、阪神淡路大震災では「電気の復旧に6日、ガスの復旧に84日、水道の復旧に90日」の期間を要しました。(※2)
在宅避難を選択しても避難所での食料受給やトイレの利用などは可能ですが、上記の復旧期間を念頭に置いた上で、充分な備えをしておきましょう。
※2「データで見る 阪神・淡路大震災」神戸新聞 NEXT
避難所へ避難する際に最低限必要なもの
避難所へ避難する際に最低限必要と考えられるものは、以下の通りです。
必要なもの | 備考 |
水 | 飲料水・水筒・給水袋・ポリタンク など |
食料品 | 缶詰・エネルギーバー・栄養補助食品・レトルト食品など |
調理器具 | 多機能ナイフ・アルミホイル・ラップ・食器・クッキングシートなど |
衛生用品 | 簡易トイレ・ビニール袋・除菌シート・トイレットペーパー・水のいらないデンタルケア用品・ドライシャンプーなど |
薬・救急用品 | 常備薬・救急箱・マスクなど |
衣類 | 着替え・雨具・タオル・スリッパなど |
日用品 | ティッシュ・懐中電灯・ライター・風呂敷・使い捨てカイロ・保温シート・子供用のおもちゃ・筆記用具など |
貴重品 | 小銭を含む現金・車や家の鍵・身分証・健康保険証・母子健康手帳・年金手帳・防災手帳など |
防災用品 | 防災頭巾・ブザーや笛 など |
その他 | 女性の生理用品・子供のおむつ・おしりふき・哺乳瓶・抱っこ紐・スマートフォン・予備バッテリー・手回し式ラジオなど |
このように、最低限必要となるものだけでも非常に多いことが分かります。
災害時に慌てることがないよう、事前にリュックサックや非常持ち出し袋の中に用意しておきましょう。
避難所へ避難する際にあると便利なもの
避難所へ避難する際は、最低限必要なものに加えて、以下のようなものがあると便利です。
必要なもの | 備考 |
余分な消耗品・衣服 | 余分な食料・飲料水・衣服 など |
寝具 | エアマット・寝袋・毛布など |
ただし、避難所の居住スペースは限られるため、 コンパクトに収納できないものは持っていかない方がベターです。
避難所へ避難する際に持っていかない方がいいもの
避難所へ避難する際は、以下のようなものを持っていかない方が良いでしょう。
● 危険物
● アルコール(お酒類)
ガス・灯油・ガソリンなど揮発性の高いものは火災につながる可能性もあり、避難所への持ち込みが禁止されています。
この他、 集団生活において危険となり得るものの持ち込みは、できないと考えましょう。
また、避難所での飲酒は禁止されていると考えられるため、 アルコール類も持ち込まない方が良いでしょう。
避難所ではなく「在宅避難」という選択肢も
災害時には絶対に避難所に行かなくてはならないわけではなく「在宅避難」という選択肢もあります。
在宅避難とは、避難所ではなく自宅に住み続ける避難方法です。
自宅や周囲が安全で、生活が可能な場合は、 東京都ほか様々な地方自治体も在宅避難を推奨しています。
特にマンション居住者の場合、建物の安全性に問題がなければ、 在宅避難を求められるケースが多いです。
最後に、在宅避難という選択肢のメリット・デメリットを確認しましょう。
在宅避難のメリット
在宅避難のメリットは、以下の通りです。
● 自宅で生活が継続できる
● プライバシーを確保した避難生活が送れる
● ペットと一緒に暮らし続けられる
● 感染症のリスクが少ない
● 共同生活のルールに縛られない
在宅避難では、住み慣れた自宅で生活が継続できるため、ストレスも少ないです。
避難所生活では難しいケースもあるプライバシーも確保できるほか、食事時間や消灯など共同生活のルールもありません。
また、避難所にはペットを連れて行けない可能性もありますが、 在宅避難では一緒に暮らし続けることが可能です。
また、避難所生活と比較して、感染症の流行に対するリスクは少ないと考えられます。
在宅避難のデメリット
在宅避難のデメリットは、以下の通りです。
● 他人とのコミュニケーションが希薄になる可能性がある
● 最新情報の取得が難しいケースがある
在宅避難ではプライバシーが確保できる一方、家族や友人と思うように会うことができず、 他者とのコミュニケーションが希薄になる恐れが考えられます。
また、避難所生活と比較して、物資・救助・復旧などの最新情報が得にくい可能性があります。
関連記事:在宅避難とは?判断のポイントやメリット・デメリットをわかりやすく解説
まとめ
災害発生時に自宅やその周囲に危険がない場合、避難所に行かない選択肢もあります。
避難所は、プライバシーや十分な居住スペースの確保が難しいほか、集団生活のルールや感染症リスクもあるため、あえて無理をして行かない方がいいケースもあります。
ただし、自宅や周囲に危険があったり、諸事情で自宅での生活が困難な場合などは、 速やかに避難所へ移動してください。
避難所へ持っていくべきものは多数あるため、リュックサックや非常持ち出し袋に入れて、いつでも持ち出せる状態にしておきましょう。