ホーム > 防災コラム一覧 > 風水害対策 > スーパー台風の日本上陸リスクが増加。家庭でできる台風(大雨・暴風・高潮)対策
スーパー台風の日本上陸リスクが増加。家庭でできる台風(大雨・暴風・高潮)対策
ツイート
近年、世界規模で勢力の強い台風の発生と、それに伴う被害を伝えるニュースが注目されています。
そこで今回は、今後、発生頻度が増えると予測されている「スーパー台風」と、家庭でできる台風への備えについてご紹介します。
フィリピンで甚大な被害をもたらしたスーパー台風「ハイエン」(台風30号)
史上最大級の上陸台風と言われ、フィリピンでは7,000人を超える死者・行方不明者が出るなど甚大な被害をもたらしました。
気象庁気象研究所の予測によれば、地球温暖化が進むと、このようなスーパー台風の地球全体での発生数は約3割減少する一方で、日本へ接近・上陸する可能性が高まることをご存じですか?
それを証明するように、日本では「氾濫危険水位」を超えた河川が2014年から2018年の5年間で5.7倍に増えており、国土交通省は気候変動を見据えた治水対策の検討に乗り出しています。
このような状況で「自分で対策をしたい」と考えている方のために、適切なスーパー台風対策をご紹介します。
- ●スーパー台風って何?
- ●スーパー台風ってホントに日本にくるの?
- ●スーパー台風の対策って何をすればいいの?
スーパー台風とは?日本の気象庁の定義
日本の気象庁は10分間平均の最大風速で台風の強さを分類しているため、日本の分類に換算してみると…最大風速54m/s以上の「猛烈な台風」に相当します。
ニュースや新聞で「猛烈な台風」という報道を目にしたら、スーパー台風にあたると考えると分かりやすいでしょう。
ちなみに、天気予報でよく耳にする「ヘクトパスカル」(hPa)は、国際的な気圧の単位です。台風の中心気圧(ヘクトパスカルの数値)が低いほど勢力が強くなります。
ただ、台風の勢力は中心気圧だけで決まるわけではありません。強風域の半径、最大風速(10分間平均風速)によって大きさ、強さが分類されています。
スーパー台風の被害目安。風速54m/sってどれくらい?
ハイエンは上陸台風としては、歴代最強クラスの勢力とされています。
<スーパー台風「ハイエン」の勢力と被害>
- ●中心気圧:895hPa
- ●最大瞬間風速:90m/s
- ●死者・行方不明者:7,000人以上
- ●被災者:約1,600万人
- ●家屋の倒壊・損傷:約100万棟以上
出典: NPO法人ジャパン・プラットフォーム|フィリピン台風30号(ハイエン)被災者支援
近年、日本に上陸した「猛烈な台風」には2019年の台風19号(令和元年東日本台風)があります。
<台風19号(令和元年東日本台風)の勢力と被害>
- ●中心気圧:915hPa
- ●最大瞬間風速:55m/s
- ●死者:104人
- ●行方不明者:3人
- ●負傷者:384人
- ●住家の全半壊:33,332棟
- ●住家の一部破損:37,320棟
- ●住家床上浸水:31,021棟
- ●決壊した堤防:142カ所
出典: 内閣府『令和元年台風第 19 号等に係る被害状況等について』(2020年4月10日発表)
スーパー台風が上陸することで、時に大きな被害が発生し、社会生活に大きな影響を与えることが分かります。
このようなスーパー台風が、今後、日本周辺で発生する確率が高くなる可能性が指摘されています。
◆2019年台風19号(令和元年東日本台風)の日本接近を伝えるニュース
◆2019年台風19号(令和元年東日本台風)の日本接近で、公共交通の計画運休の検討を伝えるニュース
「地球温暖化で日本周辺のスーパー台風の発生頻度が増える」気象庁シミュレーション
同シミュレーションでは、このまま地球温暖化が最悪の状況で進むと、全世界で台風の発生総数は3割程度減るものの、日本の南海上からハワイ付近と、メキシコの西海上にかけて猛烈な台風(最大地表風速59m/s以上)が発生する頻度が高まるとの予測が出されました。
つまり、「普通の台風は減る」一方で、「スーパー台風は増える」というシミュレーション結果です。
このシミュレーション結果が現実のものとなるかどうかは、さらなる研究が待たれますが、毎年夏季に発生する台風の通り道となっている日本列島の地理的条件を考えれば、自然災害に備える防災意識は常に持っておきたいものです。
出典: 気象庁気象研究所|地球温暖化で猛烈な熱帯低気圧(台風)の頻度が日本の南海上で高まる ~多数の高解像度温暖化シミュレーションによる予測~
気温上昇、水蒸気量の増加は、大雨・集中豪雨の発生にも影響する
また、地球温暖化による気温上昇や大気中の水蒸気量の増加は、スーパー台風の発生頻度だけでなく、大雨・集中豪雨の増加にも影響を与える要因となっていると見られています。
気象庁の発表データによれば、1年間で大雨(1時間の降水量50mm以上)が発生する回数は、以前と比べて約1.4倍に増加しています。
- ●1976年~1985年の10年間平均:約226回/年
- ●2010年~2019年の10年間平均:約327回/年
スーパー台風が日本列島に上陸しないときでも、日本周辺で発生した台風や熱帯低気圧の発達による降水量、それに伴う高潮にも注意して備える必要があると言えるでしょう。
出典: 気象庁|全国(アメダス)の1時間降水量50mm以上の年間発生回数
スーパー台風が東京都23区に上陸したときの浸水シミュレーション
- ●浸水が想定される区は17区:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区
- ●浸水が想定される区域の面積:約212平方キロメートル ※東京都23区の約3分の1。
- ●浸水が想定される区域内の人口:約395万人(昼間)
- ●浸水される最大の浸水の深さ:約10m
- ●浸水が継続する時間:1週間以上 ※排水が完了するまで継続。
出典: 東京都港湾局『想定し得る最大規模の高潮による浸水想定区域図を作成しました』
浸水の深さは50cm~10m。中には10m以上の浸水や、50cm以上の浸水が1週間以上続く水が引かないと予測されている地域もあります。
一般的な住宅では、地面から床上までの高さが60cm、1階までの高さが約3mなので、10mの浸水がどのような状況か想像するのは難しくないでしょう。
特に大きな被害が想定されているのは、地盤が低く、荒川沿いにある葛飾区、江戸川区、墨田区、江東区です。
また、ショッピングやビジネスの中心地域でもある中央区の銀座、港区の新橋・汐留や品川の湾岸沿いも、1~3m(場所によってはそれ以上)の浸水が予測されています。
家庭で、台風に備えておくものは?風・窓ガラス対策、食料、トイレ、避難場所
台風対策には大きく分けると以下の3つがあります。
- ●家を守る対策
- ●自分や家族の命を守る対策(道具・非常食・飲料水)
- ●避難対策
台風の備えは、台風が来る前に準備しておくべきものがほとんどです。
次項から紹介する対策を参考に、スーパー台風への備えができているかチェックしてみてください。
台風対策の防災・災害グッズリスト10!最低限の道具はコレ
在宅避難の場合、停電や断水が発生した場合の影響も考えるようにしましょう。
浸水や強風、降雨量が原因で、変電所設備や電線トラブルによる停電、浄水場の停電や水道管の損傷による断水など、台風の被害はライフラインの広範囲に及ぶことが想定されます。
特に、食料と飲料水は重要です。
2019年のスーパー台風19号(令和元年東日本台風)のときには、台風上陸に備えた買いだめによって東京都内のスーパーや量販店ではカップ麺や水が売り切れました。天気予報やニュースで情報を聞いてから買い物に行っても、スーパーの棚は空っぽかもしれません。
<台風対策のグッズリスト>
- ●非常食(賞味期限の長いものを購入すれば地震対策にもなります)
- ●飲み水(大人1人で1日最低2リットル)
- ●携帯ラジオ
- ●懐中電灯(LEDランタン)
- ●モバイルバッテリーや災害・非常用電池
- ●トイレ処理剤や簡易トイレ
- ●除菌ウエットティッシュ(普段使っているものでOK)
- ●救急用品
- ●レインコート(カッパ)
- ●貴重品(クレジットカード、通帳、印鑑など)
台風から窓ガラスを保護する方法!簡単にできる養生テープの効果は?
家を守る対策のひとつとして、窓ガラスの台風対策があります。
有名な対策は、スーパー台風19号(令和元年東日本台風)のときにメディアやSNSなどで話題となった、窓ガラスに、家の内側から養生テープを縦・横・斜めに貼る方法です。
YouTube動画の映像にあるように、養生テープを貼ることで窓ガラスの保護や割れたときの飛散防止効果が期待できます。
家の内側と外側から、窓ガラス全体にプラスチック製のアクリル板やダンボールを貼る方法を組み合わせると、より衝撃に対する飛散防止効果があるようです。
養生テープやアクリル板は、ホームセンターなどで簡単に購入することができるため、台風に備えて事前に用意しておきたい防災グッズです。
台風当日は、万一の飛来物の飛び込みに備えて、カーテンを閉めたりブラインドを下ろしたりすることも忘れないようにしましょう。
家の中の浸水対策。お風呂、トイレからも水が逆流します!
排水の逆流は、下水道の急激な水位上昇と配管内の圧力変化によって引き起こされます。
どれくらいの下水が逆流するのか興味のある方は、YouTubeで「大雨 排水 逆流」と検索してみてください。かなり衝撃的な映像が見つかると思います。
緊急時、排水の逆流対策には「水のう」が有効です。
「水のう」は、ビニール袋に水を入れて、水がもれないように口を結んだものです。ビニール袋は強度を考えて二重にすると良いでしょう。
水のうの使い方は簡単です。
「トイレ」「お風呂」「洗濯機」「洗面台」「キッチン」など、水回りの排水口に上から被せて置きます。水の重みで逆流を抑える効果があります。
大雨の浸水対策は下記サイトが参考になります。
◆神奈川県平塚市|家庭でできる浸水対策
https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/bosai/page-c_02782.html
ハザードマップで避難経路の事前確認を!
※サイトの「重ねるハザードマップ」機能。
あらかじめ「ハザードマップポータルサイト」(「重ねるハザードマップ」機能)で確認することは、「自宅から一番近い避難所の場所」と「洪水浸水想定区域(想定最大規模)」です。
台風・大雨・高潮の影響で河川が氾濫したときに、どの地域がどのくらいの深さまで浸水するかの予想を、地図と重ね合わせて確認することができます。
また同サイトでは、お住まいの地域の各市区町村が作成したハザードマップを検索・入手することもできます。
※サイトの「わがまちハザードマップ」機能。
各市区町村が公開しているハザードマップ、避難情報なども合わせて確認しておきましょう。
◆ハザードマップポータルサイト(国土交通省)
https://disaportal.gsi.go.jp/
政府の「避難勧告等に関するガイドライン」を参考に避難を
2018年に発生した豪雨災害を教訓に、政府は2019年3月に「避難勧告等に関するガイドライン」を改定しました。災害発生時にとるべき避難行動を、警戒レベル1からレベル5の段階に区分けし、直感的に避難ができるようになりました。
- ●警戒レベル1:災害への心構えを高める
- ●警戒レベル2:ハザードマップなどで避難行動を確認
- ●警戒レベル3:高齢者や要介護者などは避難
- ●警戒レベル4:対象地域住民の全員避難
- ●警戒レベル5:命を守るための最善の行動を
各市区町村から避難勧告などが発令された場合は、テレビ・ラジオ、インターネット、防災無線、広報車などで呼びかけられます。
詳しくは国のWebサイトでも情報発信されていますので、ご確認ください。
◆避難はいつ、どこに?(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/hinan.html
まとめ
規模の差こそあるものの、毎年、台風が上陸する日本の気象条件を考えると、台風への備えをしておく大切さは言うまでもありません。いざというときのために自分や家族を守る、非常食や水、防災グッズの用意、避難場所の事前確認をして、しっかりと防災対策をしておきましょう。