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防災コラム


家庭でできる浸水対策|家やガレージを都市型水害(大雨・洪水・高潮)から守るグッズ・防災用品



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台風や局地的な集中豪雨。ここ数年、水災害に関するニュースをよく目にするようになりました。水災害による被害は多種多様ですが、その中でも暮らしに大きな打撃を与えるのが浸水被害です。
そこで今回は、浸水被害でどのような被害が暮らしの中に発生するのか、事例と対策をご紹介します。

都市圏で台風・大雨・豪雨による浸水被害が増加している理由


スーパ台風や記録的な大雨、局地的な集中豪雨、ゲリラ豪雨などの水災害は、日本では避けて通れない災害です。国土の7割が山地や丘陵地で傾斜が厳しい地形のため、川の流れが速く、一度に激しい大雨が降ると森林が雨水を吸収しきれずに川に流れ出てしまいます。

また近年では市街化が進んだ都市圏で、都市型災害とも言うべき甚大な浸水被害へのリスクも懸念されるようになってきました。道路の冠水や家屋の損壊、洪水(内水氾濫や外水氾濫)など、甚大な浸水被害をもたらす都市型の水災害が増加していると言われている理由について、見ていきましょう。

「1時間降水量が50mm以上」の年間発生回数が増加


降水量のレベルを見る目安として、1時間当たりの雨量というものがあります。

そのうち、傘が役に立たない大雨と呼べる基準となるのが、「1時間当たり50mm以上」の降水量です。実際にこれがどれくらいすごいのかというと、雨が滝のように降り注ぎ、下水道の許容範囲を超えてマンホールから水が噴出します。土石流も起こりやすくなるなど災害発生リスクが高まります。
これが「1時間当たり80mm以上」になると、雨による大規模災害につながる危険性がさらに高まります。土砂災害の発生など厳重な警戒が必要なレベルです。

近年、大雨によるニュースを目にする機会が増えたと感じる人は多いでしょう。
実際に気象庁のデータを見ると、2010年~2019年の10年間で、「1時間当たり50mm以上」の降水量を記録した回数は平均で年間約327回でした。これは1976年~1985年の平均年間226回の約1.4倍に相当する数字です。

また、2020年1月~7月までの発生回数は242回。ここ10年の傾向と変わらず、大雨の発生回数が増加していることが分かります。

市街地の都市化により失った雨水の行き場


統計がとられ始めた1976年以降、日本では全国的に都市化が進んできました。私たちの暮らしはとても便利になりましたが、一方で「雨水の行き場」に大きな変化が生まれています。

都市化前、降ってきた雨水は、地下に染み込んだり、田畑にたまったりしていました。たまった雨水はゆっくりと時間をかけて河川へ流れ出ることができたため、河川に大量の雨水が一気に流れ込むようなことは、ほとんどなかったのです。
しかし都市化が進み、アスファルトによる舗装、地下鉄や地下街といった地下開発が進んだことで、雨水が自然に循環される機能が失われ雨水の行き場もなくなってしまいました。
さらに、大都市圏では河川よりも低い土地、ゼロメートル地帯での土地開発・都市開発も進み、排水をポンプで行うなど、自然循環以外の方法を前提とした雨水処理も当たり前のものとなっています。

こうした市街地の都市化によって、雨水は自然と下水道や排水路をたどって河川に集中します。これが河川の水量増加を一気に押し進め、河川の氾濫へとつながることになった要因と言われ、都市部を中心に浸水被害が発生しやすい状態が生まれました。
さらに近年の降雨量増加によって、各自治体で整備していた下水道や河川の整備状況・想定を上回る水量が流れ込むようになっています。

今までの“常識”にとらわれない浸水対策の必要性



都市部での想定を超えた浸水被害。その実例として記憶に新しいのが、2019年10月に本州を直撃した台風19号です。台風による大雨により、神奈川県・武蔵小杉駅周辺の道路やマンションに冠水被害が発生。東京都・世田谷区の二子玉川駅周辺では、多摩川氾濫などの被害が発生しました。

この時、発生した浸水被害は、多摩川の水が下水管を通じて逆流する「内水氾濫」が原因とされています。川の水が排水管を逆流して市街地にあふれ、道路や駅、マンション地下の電気設備が浸水で故障。マンション1棟が丸ごと停電する事態も発生しました。エレベーターが動かないため、高階層の居住者はほぼ孤立状態になるなど、都市部の住環境のもろさを浮き彫りにしました。

武蔵小杉および二子玉川の事例は、整備されていると思われている都市空間においても、近年の大雨による浸水被害は、その想定を超えていることを改めて認識させられます。各家庭で、浸水への防災対策や防災用品の備えを、これまでの常識にとらわれない意識で行うことが大切です。

家庭でもできる!建物への浸水を防ぐ対策グッズ【住宅への浸水対策】



2020年2月、大型の降雨実験施設がある防災科学技術研究所で、住宅の浸水防止対策に関する大規模実験が行われました。
実際に一般仕様の住宅と浸水対策を施した住宅を2棟建てて、洪水を想定した1000トン以上の水を地面に流して、どのような浸水被害が起こるのかを研究するものです。

この実験結果を取り上げたNHKの番組によれば、実験開始から20分ほど経過すると、一般住宅のドアのすき間や窓、床下からあっという間に水が入ってくることが分かりました。浴室では、排水溝から逆流した泥水が流れ込み、トイレも水が逆流してきました。浸水が始まって約30分の間に、水は床上70cm近くまで上がりました。
このように大量の雨水などの浸水は、短時間で住宅を襲い、停電などの被害ももたらすことになります。

一方、浸水対策を施した住宅側はどうだったでしょうか?
窓の途中まで水が来ていましたが、部屋の中には変化が見られず、目に見えた被害はありませんでした。これは、ドアや窓のすき間をなくしたり、排水管の逆流防止装置を設置したりするなど、新築住宅向けに開発中の浸水対策技術が盛り込まれていたことが大きな要因です。

実は、こうした浸水対策は、最新技術による対応まではできないにしても、家庭での対策でもある程度まで軽減することが可能です。
対策グッズを販売している企業や、行政が発信している情報も参考に、家庭でもできるさまざまな浸水対策グッズ・防災用品をご紹介します。

止水板・浸水防止板~業務用から家庭用まで種類はさまざま



ドアからの浸水を防ぐのに使えるのが、止水板と呼ばれる板です。板を使ってすき間なく出入口を塞ぐことで、急激な増水に伴う浸水被害を防ぐことができます。

各社からオフィスビル用、店舗用、家庭用が販売されていますが、一般的な止水板では、中柱やレールなどの設置工事を事前に行うものが主流です。一方、事前工事が不要で女性1人でも設置できる軽量タイプもあります。
一般住宅向けのものを選ぶ際は、設置場所や設置方法などを検討して設置すると良いでしょう。

ブルーシート~止水にも使える活用方法


浸水被害対策として、水深の浅い初期段階に使える「簡易水防工法」というものがあります。
レジャーやレクリエーションで使用できるブルーシート(レジャーシート)は、簡易水防工法で非常に役立つグッズで、行政が発信している浸水対策にも取り上げられています。

簡易水防工法は、やり方がいくつかあります。
例えば、ポリタンクとレジャーシートを使った工法です。水をいっぱいに入れたポリタンクを並べ、それらをレジャーシートに包んで玄関前などに並べます。
もうひとつの方法はプランターとレジャーシートを使った工法です。やり方はポリタンクと同じで、土が入ったプランターをレジャーシートで包んで玄関前などに並べて浸水を防ぎます。

水を弾くレジャーシートでポリタンクやプランターなどの重しを包んで設置することで、水が進入するのを防ぐことができます。

水のう・土のう~家庭でも作れる水のう



浸水対策では、消防団や自衛隊などが土のうで堤防を築くシーンをニュースなどの映像で目にすることがあります。簡易的な堤防で水をせき止めることができる土のうですが、大量の土が必要となるため、一般家庭でマネするのはなかなかハードルが高いものです。
そこで、土の代わりに水を用いる「水のう」の作り方を覚えておくと役立ちます。

三重県鈴鹿市のYouTubeチャンネルでは、家庭でも簡単に作れる水のうを紹介しています。
用意するものは、ビニールシートと段ボール、そして普段ゴミ袋として使っているような45リットル程度のビニール袋です。

水のうを作る手順は次のようなものです。

  • ●ビニール袋の半分(重い場合は3分の1)に水を入れ、口をかたく縛る。
  • ●浸水を防ぎたい出入口にビニールシートを敷き、段ボールを並べる。
  • ●段ボールの中に、水を入れたビニール袋を重しとして入れる。
  • ●段ボールをビニールシートで覆って、水のうが完成。

水のうの前に大きな木の板を立てかけて、簡易的な止水板にすることもできます。重しの中は水なので、使用後の処分も簡単です。

窓からの浸水~台風にも有効な浸水対策



浸水被害で玄関ドアなどの出入口以外にチェックすべきなのが、窓からの浸水です。窓のすき間をしっかり塞ぐことでもある程度の浸水を防ぐことができます。
そこで役立つのが、止水テープと呼ばれる防水性の高いテープです。

止水テープ『ウォータープロテクトテープ』を販売しているグローバルアーク株式会社では、YouTubeチャンネルで止水テープの張り方と効果を紹介しています。

止水テープを貼る際は、窓枠(あるいはドアのすき間)の下部方向に貼り、その後、縦方向に貼っていきます。どちらもすき間ができないように、しっかり手で押さえながらテープを貼るのがポイントです。
ドアに止水テープを貼る場合、すき間になりやすい蝶番(ちょうつがい)の部分は、広い幅でテープを貼ります。

玄関・ベランダからの浸水を防ぐ


玄関やベランダは雨水が侵入しやすい場所です。こうした場所は、次に紹介する方法を活用して念入りに浸水対策をしておくのがおすすめです。

●簡易水防工法で出入口をふさぐ
レジャーシートの活用で紹介した簡易防水工法で、玄関やベランダからの浸水を防ぎましょう。段ボールとビニール袋を使った水のう、ビニールシートとポリタンクを使った簡易水防など、身近なグッズが活用できます。

●止水テープによる養生
水のうやポリタンクといった重いものの持ち運びが難しい場合は、専用の止水テープを使って玄関、ベランダ、窓のすき間をしっかり塞ぎましょう。

●雨水ますにブロック・プランターをおかず、掃除もこまめに行う
側溝や雨水ますは、雨水の流れを作るための重要な場所です。排水機能を妨げないように、ブロックやプランターなどの障害物を置かないようにしましょう。また、普段から落ち葉などのゴミが溜まっていないかチェックして、定期的に掃除を心がけると良いでしょう。

家庭でもできる!車・ガレージ・地下駐車場への浸水を防ぐ対策グッズ・防災用品


自宅に車がある家庭では、車やガレージ、地下駐車場の浸水対策も非常に重要です。
車は雨水などの浸水被害にあった場合も、ある程度の冠水・浸水には対応できる設計になっていますが、基本的に精密機械である車は水に弱いです。車内に水が入り込むことで、エンジンルームや車内に張り巡らされた電気系統の配線がショートしてしまうこともあります。

特に都市部では雨水だけでなく、下水や排水溝を逆流してくる汚水があふれ出てくる恐れもあります。汚水がフロアカーペットやシートに染み込み、腐食やカビ、細菌の繁殖につながることも。こうなると浸水被害が車に与えるダメージは甚大です。
目も当てられない事態を避けるために浸水対策をしっかり行いましょう。

ガレージ・地下駐車場への浸水防止【車・ガレージへの浸水対策】


都市部で自宅に駐車場がある場合、地下駐車場や半地下になった駐車場を利用している人も多いでしょう。
地下駐車場は道路や居住部分よりも低い位置にあるため、より浸水・冠水しやすい場所です。こうした地下駐車場への浸水を防ぐのに有効な対策用品が止水板とゴムです。

止水板は地下駐車場前の門扉・出入口に設置して、駐車場への雨水の侵入をできる限り防ぐ対策です。簡易水防工法で紹介した自作の水のう・土のうでもOKですが、ある程度の浸水を許してしまうため、なるべく止水板を用意しておいたほうがいいでしょう。

もうひとつの方法は、地下駐車場の門扉・出入口のすき間部分を、専用のゴムを使って埋めるというものです。このほか、玄関やベランダの浸水と同様に、普段から雨水ますの掃除もしておきましょう。

マフラーへの浸水防止【車・ガレージへの浸水対策】


車やバイクに設置されたマフラーは、直接エンジンなどとつながっているため、浸水対策でも非常に重要な場所です。
浸水対策としては、丸めた新聞紙やビニール袋などで、マフラーの排気口を塞いでしまうというのが簡単な方法です。身近なもので対処できるため、突然の雨での緊急時にも対応できます。とはいえ、完全に水の侵入を防げるだけではないので応急措置と捉えましょう。

最近では、車をすっぽり丸ごと包み込んでしまう浸水防止カバーという商品も販売されています。塗装の養生やホコリよけで使える使い切りタイプのポリエチレン製のカバーで、高い防水性を誇ります。
こうした専用グッズで車を守ることで、水災害によって車が使い物にならなくなってしまった…というリスクを少しでも減らすことができるでしょう。

シャッターへの浸水防止【車・ガレージへの浸水対策】


シャッターがあるタイプのガレージであれば、シャッターそのものが止水板として機能してくれます。しかし降水量が増大した場合、すき間から水が流れ込んで車の浸水につながってしまうかもしれません。
シャッター下部の端にゴムを付ける、雨水ますをこまめに掃除する、簡易水防工法で土のう・水のうを活用する、止水板で浸水を防ぐといった複数の対策から自宅でもできるものを選んで浸水対策をしましょう。

止水板は、備え付けタイプから1人で設置可能な簡易防水シートなど、さまざまな種類があります。簡易防水シートは、1人で5分~10分と短時間での設置も可能です。止水機能パネルが付いたタイプのシャッターなども販売されています。

マンション、店舗、個人住宅もOK!自治体の止水板・防水板の設置助成制度


マンション、店舗、個人住宅などの浸水対策として、これまでご紹介したようなさまざまな防災用品が販売されています。

一方、自治体の一部では、市民や企業が浸水対策を行う場合の支援を行っている自治体もあります。そこでここでは、止水板・防水板の設置工事に対して助成金制度を実施している自治体をご紹介します。
※2020年7月末現在の情報です。最新情報はお住まいの自治体などのホームページで確認ください。


東京都品川区:防水板設置等工事助成(上限100万円)


東京都品川区では、上限100万円で防水板設置の助成を実施しています。



東京都板橋区:止水板設置工事助成制度(上限50万円)


東京都板橋区では、上限50万円で防水板設置の助成を実施しています。

  • ●制度呼称:止水板設置工事助成制度
  • ●助成対象:申請日より1年以上前から板橋区に住民記録をしている個人。または申請日より1年以上前から板橋区に登記をしている法人
  • ●助成割合:工事費の2分の1
  • ●限度額:上限50万円(1,000円未満は切り捨て)
  • ●助成制度関連WEBページ:
    https://www.city.itabashi.tokyo.jp/bousai/bousai/shinsu/1005715.html


東京都北区:止水板設置工事費の助成制度(上限50万円)


東京都北区では、上限50万円で防水板設置の助成を実施しています。

  • ●制度呼称:止水板設置工事費の助成制度
  • ●助成対象:北区内に住宅、店舗、事務所などを所有する者。申請日より1年以上前から北区に住民登録をしている個人、および店舗または支店などの登記をしている法人(条件を満たしている場合も、交付対象としないケースもあります)。
  • ●助成割合:工事費の2分の1
  • ●限度額:上限50万円(1,000円未満は切り捨て)
  • ●助成制度関連WEBページ:
    https://www.city.kita.tokyo.jp/d-douro/bosai-bohan/bosai/suigai/shisui.html


千葉県千葉市:防水板設置工事の助成制度(上限75万円)


千葉県千葉市では、上限75万円で防水板設置の助成を実施しています。



大阪府寝屋川市:止水板設置工事助成制度(上限30万円)


大阪府寝屋川市では、上限30万円で防水板設置の助成を実施しています。



大阪府枚方市:止水板設置費 補助制度(上限50万円)


大阪府枚方市では、上限50万円で防水板設置の助成を実施しています。

  • ●制度呼称:止水板設置費 補助制度
  • ●助成対象:枚方市内の住宅または事業所(仮設のものおよび事業者が売買を目的として所有するものを除く)に止水板などを設置した者
  • ●助成割合:工事費の2分の1
  • ●限度額:上限50万円(1,000円未満は切り捨て)
  • ●助成制度関連WEBページ:
    https://www.city.hirakata.osaka.jp/0000003922.html

家庭でできる浸水対策を行って大切な財産を浸水から守ろう

浸水被害は都市部を中心に誰にでも起こり得る水災害です。短時間で局地的な集中豪雨は、一瞬で私たちの暮らしに甚大な被害をもたらします。
自宅や住んでいる地域の水害リスクをハザードマップなどで事前確認して、防災への意識を高めておきましょう。そして平時にできる限りの浸水・水災害対策を施しておくことをおすすめします。

文章:寄稿文 初出:2020年8月31日

賞味期限25年のおいしい非常食 サバイバルフーズ

 

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