おはようございます。
東日本大震災と福島第一原発事故から 13年 (4862日) です。
元日の令和6年能登半島地震から 半年(182日)が経ちました。
また、今週の7月3日(水曜日)は、記録的な大雨による土石流で、128棟の住居が押し流され、災害関連死1人を含む28人が犠牲となった静岡県熱海市の「伊豆山土石流災害(2021年)」から 3年 です。
7月4日(木曜日)は、熊本県球磨村の球磨川が大氾濫し、村の三分の一の地域が最大9メートルも浸水した2020年の「熊本豪雨(令和2年7月豪雨)」(死者・行方不明者86人)から 4年 です。
そして、平成最悪の豪雨災害「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」から 6年 です。
この西日本豪雨災害は、平成以降の豪雨災害で初の100人を超える犠牲者をだしたものです。
西日本から東日本、北海道の広い範囲で大雨が降り、とくに西日本で河川の氾濫や土砂災害が多発しました。
全国の死者・行方不明者271人、重軽傷者484人という甚大な被害となりました。
このメルマガの過去の災害史をみてわかるように、梅雨という日本の雨季は、日本列島で停滞した梅雨前線に沿って多量の水蒸気を次々に補給するような湿った雲が流れ込んできて、長雨となったり、局地的にゲリラ的な集中豪雨(線状降水帯)を降らせたりします。
この季節は、河川の氾濫や土砂災害といった水害が目に見えて増える傾向があるのです。
最も重要なものは、私たち自身の日頃からの備えです。
なかでも、川の近く、山の近く、浸水しやすい場所に住んでいるなど、水害ハザードマップで自宅周辺の環境をご自身で確認し、日頃から、天気予報や気象状況に気を付けて、自宅が危険な地域にあった場合には、非常食や持ち出す物などを準備し、あらかじめ避難経路や避難所を家族で確認しておくなどといった“日頃からの心がけ”がとても重要です。
そして、土砂崩れや河川氾濫といった命の危険が差し迫った場合には、避難など安全確保行動を早め早めに行えることが大切です。
はじめに【お知らせ】です。
メルマガが書籍化しました。

「防災格言」という連載を執筆して参りました。
2007年から2023年までの16年間で、782編の格言を紹介してきました。
昨年(2023年)からは、防災歳時記の体で随筆(コラム)を一年ばかり続けております。
駄文をお読みいただき、毎回感想までお寄せいただく読者様方にありがとうございます。たいへん励みになっております。
これら連載はバックナンバー化もしていますので、よろしければお読みください。
※「防災格言」のバックナンバー
⇒https://shisokuyubi.com/category/bousai-kakugen
※「防災歳時記(コラム)」バックナンバー
⇒https://www.seishop.jp/blog/category/diary/hiroya-hirai/
そして、人との“縁”とは有り難いものです。
古今東西の著名人らの“災害時のお言葉”を収集して、その人物の人となりとともに解説した「週刊防災格言」は、連載直後から、お寺のご住職の“説法”にちょうど良いとウケまして、全国のご住職のための専門雑誌「月刊住職」の編集長様に取り上げていただき、震災を経て、しばらく後に書籍化いただくことにもなりました。
その書籍こと拙著『天災人災格言集』が、このたび(本日より)、多少の加筆修正をへて電子書籍化する運びとなりました。
★『 天災人災格言集 Kindle版 』発売中!★
購入ページはコチラ
⇒https://amzn.to/4bpKkhc(amazon.co.jp
のWebページに飛びます)
電子化にあたり紙の書籍より少しお安くお求めやすくなっております。
電子書籍版もぜひお買い求めいただき、自助防災の輪を広げる一助となればよいなと思っています。
筆者・平井からのお願いでした。
よろしくお願いいたします。
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…さて
今日から「七月(文月)」です。
この7月は、旧暦6月の異名で「晩夏(ばんか)」とも呼ばれています。
暦の上では“夏の終わり”といった意味で、立秋(8月7日)の前の1か月くらいの期間を指すようですが、
ただ、
実際のところ7月から8月にかけて連日のように真夏日の夏真っ盛りの暑い頃で、どう考えても、晩夏じゃありません。
ですから、気象学的には、処暑(しょしょ)の頃を過ぎた8月23日頃から9月1日頃を「晩夏」と呼んでいるみたいです。
気象と季語の世界は大きくズレているのですね。
なお、俳句の季語で、正午から三時頃までの真昼の太陽の照り付けが最も暑い盛りという意味で「日盛り(ひざかり)」「日の盛」などや、また、このときの太陽の日差しが焼き付けるように強いことを「炎天(えんてん)」と言ったりします。
これから晩夏でなく炎天下も多くなってまいりますので、引き続き、熱中症には気を付けてお過ごしください。
《 日盛りや、砂に短き、松の影 》正岡子規(1867〜1902)
《 炎天や、裏町通る、薬売 》寺田寅彦(1878〜1935)
半夏生(はんげしょうず)
本日7月1日(月曜日)は七十二候(1年を72に分けた暦)の「 半夏生(はんげしょうず) 」です。
和名「半夏(はんげ)」ことサトイモ科ハンゲ属のカラスビシャクが生え始める頃です。
カラスビシャク(Pinellia ternata)は、日本全国の畑や庭に生える雑草(多年草)です。
その芋にあたる根球部分は、ホモゲンチジン酸(フェノール類)やエフェドリン、 コリンなどの成分を含み、漢方では重要な生薬となっているそうです。
健胃、去痰、抑うつ、神経症を和らげる作用があるとされていて、漢方のさまざまな生薬と組み合わされて使用されることで、胃腸の痛み、吐き気、嘔吐、咳、痰、喉の痛みなど広く用いられているとのことです。
これらの事柄から、別名「へそくり」とも呼ばれており、農家の女性が、家の畑から球根を拾い集め、薬屋に売って小遣い稼ぎをしたことにちなむのだそうです…。
夏至から数え11日目にあたる半夏生は、農耕の暦でもあります。
農家は、夏至(6月21日)から半夏生(7月1日)にかけて、麦の収穫と田植え、畑の仕付けとかなり忙しい時期と重なります。
昔から農家には《 田植えは半夏生まで終えろ 》など農作業の節目として伝わっているといいます。
東京の奥多摩には「はげん様(半夏生)」の農耕行事で、この日に、夏負けをしないように新麦のこがしを食べるという伝統があったり、三重県の北牟婁郡では、小麦団子を食べぬうちは畑に出るな(畑に出るとハゲッショ坊に遭う)といった物忌み(災厄)に奇禍するという言い伝え(民間伝承)があったりします。
同じような話は全国にあるようで、道祖神研究で著名な民俗学者の倉石忠彦(1939〜2023)氏は、麦の収穫祭のための物忌みの日が半夏生だったとも述べています。
※「物忌み」の関連記事 > 「八日節句(事始め)」と災厄除け
⇒https://www.seishop.jp/blog/staffblog19/
素人見解ですが、農家にとって“とても忙しい時期”なのだから、ということで、早め早めに半夏生の日までに収穫しておけ…といった戒めで派生した農業伝承のような気もしました。
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さて…先週、6月26日(水曜日)
「富士山」が話題になりました。
富士山の火口付近で、別々のパーティの3人の遺体が相次いで見つかり、また、8合目では登山中の男性1人も同じ日に亡くなられニュースとなりました。
一日で4人もの人たちが亡くなっていたという報道がされたことで、「すわ、火山ガスか? 噴火か?」と一時話題になったというものです。
実際は、山開き前の富士山頂付近では、真冬並みの気温と体が飛ばされるほどの強風が吹き荒れることもあり、低体温症になった可能性が専門家から指摘されていました。
…さて、火山ガスとは、いったい何でしょうか?
火山学会の古いWebページに「火山学者に聞いてみよう」というコーナーがあって、
※火山学会 > 火山学者に聞いてみよう
⇒http://www.kazan.or.jp/J/QA/topic/topic43.html
この中に、小学生6年生の娘さんの「火山ガスって何?」の質問への学者(東海大理学部・大場武教授)の答えが面白く的を得ていましたので、そのまま引用してご紹介します。
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【Q.火山のガスって何?】
A.ちょっと汚い例えで申し訳ありませんが、火山から流れ出る溶岩は、いわば地球のウンチのようなものです。
これに対し火山ガスは地球のオナラです。
火山ガスとは活火山から立ち昇る噴煙のことです。
火山の噴煙は主に水蒸気と火山灰の混合物です。
火山ガスは正確には火山灰以外の気体の部分を指します。
今年(2000年)の有珠山の噴火では、噴火の初期のころに黒いきのこ雲が出ましたが、あれは火山ガスと火山灰が混ざったものです。最近の噴煙は白くてほとんどが火山ガスであり火山灰はごく僅かしか含まれていません。
火山ガスはマグマから抜け出てきた気体と、マグマの熱で地下水が沸騰して発生した水蒸気が混ざったものです。
噴火中の火山でなくとも、例えば箱根の大湧谷のように噴気がでている火山もあります。それも火山ガスです。
火山ガスは主に水蒸気からなりますが、二酸化炭素や二酸化硫黄、硫化水素などが含まれ人体に悪影響があるので、火山ガスが出ているところへは近づかないように注意して下さい。
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確かに火山の観光地で、温泉卵を食べてるときに、なんかオナラのような(腐った卵の)臭いがするものです。
調べると、多くの火山の噴気のなかには、「二酸化硫黄(SO2=亜硫酸ガス)」や「硫化水素(H2S)」「二酸化炭素(CO2)」という有毒な火山ガス(気体)が含まれているのだそうです。
どのガスも無色で、例えば山の窪地に空気よりも重い火山ガスがたまっていたとしても、一見したところ気付きにくく、危険な場所の予測が困難だといわれています。
そのため日本でも、毎年のように1人から数人が火山ガス災害で命を落としているようです。
強い刺激臭がある「二酸化硫黄ガス」は、喘息の人には特に注意が必要なガスで、呼吸器の粘膜を麻痺させ呼吸困難となるそうです。
卵の腐った臭いで知られる「硫化水素ガス」も、非常に毒性が強い神経性ガスで呼吸麻痺を引き起こします。しかも、高濃度だと人は嗅覚も麻痺して臭いを感じなくなるので怖いですね。
「二酸化炭素ガス」は無色無臭で、危険個所の発見や事故発生の予測がとても困難で、酸欠により人は死に至るのだそうです。
カメルーン・ニオス湖の火山ガス災害(1986年8月21日)
世界的に有名な火山ガス災害は、1986年8月21日に西アフリカのカメルーン北西部のニオス湖(火口湖)で発生しました。
噴気活動が盛んなニオス湖底で、夜になって突然、大量の二酸化炭素ガスが放出されました。
空気より重い無色無臭の有毒ガスが、静かに谷地に沿って流下して、ふもとのニオス村の村民と家畜を襲いました。
ニオス村の村民全員と家畜は残らず全滅します。
火山ガスは更に8kmほど離れたソウボ村やチャ村まで押し寄せ、これらの村の人口の半数が死亡しました。
被害は死者1,746人、重軽傷者450人、家畜1,000頭超でした。
数日後に村にやってきた救助隊らは、村や家々が一切破壊されていないのに、いたるところに死体が転がり、鳥の鳴き声も聞こえず、死体にハエすら群れることもないという、異様な光景を世界に伝えています。
火山予知は“かなり”難しい

火山ガスは“噴気”ともいい、火山活動で地表に噴出する気体のことです。ここには火山噴火によって溶岩などの火山噴出物と一体となって噴出するものを含めて呼称することもある様です。
また、火山とは、地球内部のマグマが地表に噴出したり、地盤を押し上げたりして生じた地形のことをいい、マグマが噴出する場所を火口といいます。
いま現在、火山活動があるものや、過去に科学的に噴火した記録や噴火の形跡の確認できるものを“活火山”と私たちは呼んでいます。
定義的に“災害”というのは、人の生命と財産に被害が生じない限り災害とは呼びません。
火山災害も、人の活動範囲や生活範囲が広がることで、被害が大きくなったりしますので、いわゆる災害というものは、私たちの暮らしや時代とともに変化していくものだと言えます。
この定義は、地震による災害もまったく同じです。
ただ、火山防災は、その噴火の予知や予測が極めて難しいことが昔から言われています。
通常、同じ火山の噴火の発生頻度は極めて低いそうで、頻繁に噴火を繰り返す阿蘇山といった2〜3の火山を除くと、通常の火山は、数十年とか数百年に1回くらいの間隔でしか火山噴火をしません。
とくに大噴火となると、同じ火山では、数千年〜一万年に1回という割合になるそうです。
そのため、そもそもの前回の噴火が人類史よりも昔のことだったり、石碑の伝承や古文書にすら載っていない遠い昔のできごとだったりするので、過去の教訓を活かして次の災害に備えるといったこともできないのだと言います。
そして、同じ火山が噴火しても、次の噴火の現象が前回と同じであるとも断言できず、火山災害予知は極めて難しいとされています。
だから火山研究者は、世界的にも人数が少ない(人気が無い?)ようで、研究者でさえも、人生で一度も、自分が研究している火山の噴火を確認せずに生涯を終えてしまうこともあるのだそうです。
地震と同じく、火山噴火予知も、現状では、ほとんどの火山について、実用的な予知ができるだけのレベルには達していないようです。
《関連記事》
- ・災害に備えるということは?(防災論事始)|思則有備(しそくゆうび)
- ・火山学者・久保寺章(1926〜2004 京大名誉教授)の防災格言|思則有備(しそくゆうび)
- ・桜島大正大噴火(1914年)と「科学不信の碑」|思則有備(しそくゆうび)
- ・地質学者・横山卓雄(同志社大名誉教授)のジャワ島のガルングン火山噴火(1982年)|思則有備(しそくゆうび)
- ・中央気象台 鹿児島測候所の「口永良部島新岳の噴火(1931年)」報告書|思則有備(しそくゆうび)
- ・富士山噴火は必ず起こる。“南海トラフ大地震の直後”が最有力説。|思則有備(しそくゆうび)
- ・洞爺湖温泉街を襲った有珠山噴火災害(1977年)の防災格言|思則有備(しそくゆうび)
◆執筆者
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらい ひろや)
防災士(日本防災士機構登録No.040075)、日本人間工学会会員。
1970(昭和45)年、東京都世田谷区生まれ。神奈川県横浜市在住。日本大学大学院で安全工学・人間工学を専攻。大学院修了後、大手ゲーム製造メーカーに入社、企画開発、PL(製造物責任法)担当や品質管理(ISO9000)に携わる。2001(平成13)年、災害用長期備蓄食〈サバイバル®フーズ〉の輸入卸元、株式会社セイエンタプライズ取締役に就任。阪神淡路大震災で家族が神戸で罹災、日常の防災意識や危機管理の啓蒙普及を企図した無料メールマガジン『週刊防災格言』を07年よりスタート。毎週月曜日に防災格言を発信し続け2万人の読者を得ている。
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