おはようございます。
7月28日(火曜日)に熊本を襲った震度7の地震「 令和8年熊本地震(M7.1) 」から 49日目 です。
2024年1月1日の「 令和6年能登半島地震(M7.6) 」から 2年8か月 (988日目) です。
2011年3月11日の「 東日本大震災(M9.1) 」と「 福島第一原発事故 」から 15年6か月 (5667日目) を迎えました。
2016年4月14日と4月16日の2日間に震度7が2度襲った「 熊本地震(M6.5、M7.3 死者275人、重軽傷者2,739人) 」から 10年 (3806日目) です。
1995年1月17日の「 阪神・淡路大震災(M7.3 死者6,437人、重軽傷者43,792人) 」から 31年 (11564日目) です。
米国とイスラエルによる対イラン攻撃(2月28日)から、6か月 (199日目) です。
特別警報が続いた2026年夏
今年(2026年)5月29日には気象庁の新しい防災気象情報の運用が始まり、「大雨」「土砂災害」「河川氾濫」「高潮」の4つの災害について、5段階の警戒レベルが整備されました。
レベル3相当の「警報」、レベル4相当が「危険警報」となり、最も高い 警戒レベル5「特別警報」 では、災害がすでに発生している、または発生している可能性が極めて高い状況を示し、すぐに身を守る行動をするように自治体から「緊急安全確保」が出されます。
その後、8月から9月にかけて、各地で警報級の大雨が相次いでいます。
8月中旬には千葉県(8月13〜14日)、石川県・富山県(8月27日)、そして福井県(8月30日)で、「レベル5大雨特別警報」が相次いで発表されました。
その後も、秋雨前線や台風24号(熱帯低気圧)の影響で大雨が続き…、
9月5日、鹿児島県屋久島で「レベル5土砂災害特別警報」、
9月7日、伊豆諸島で「レベル5土砂災害特別警報」が、
9月8日には愛知県・岐阜県(庄内川)で「レベル5氾濫特別警報」が相次いで発表されています。
尚、警戒レベル3は「高齢者等避難」、警戒レベル4は「避難指示」であり、この段階から、避難行動を意識する必要があります。
つまり、気象庁が発表する防災気象情報は、警戒レベル5に達する前の、まだ安全に動ける段階で避難を行うための重要な情報源となる訳です。
災害が発生する恐れがあるとして市民に避難を促す警報はレベル3「高齢者等避難」と警戒レベル4「避難指示」からですので、気象庁の「警報(レベル3)」や「危険警報(レベル4)」まで含めれば、実際に発表された警報や避難情報の数はたいへん多かったと思います。
数えてはいませんが、各地で数多くの警報や避難情報が発表されました。
紛らわしい“警戒レベル5”の「特別警報」と「緊急安全確保」の違い
どちらも最高レベル「警戒レベル5」ですが、少し役割が違います。私のまわりの人も混乱しているようなので、わかりやすく簡単に整理します…。
一言で解説すると、
「特別警報」は気象庁が発表する災害リスク情報で、
「緊急安全確保」は地元の市町村が発表する避難情報です。
つまり、「特別警報」は“災害発生の危険が極めて高いことを知りましょう” という情報であり、「緊急安全確保」は“命を守る行動に直ちに移しましょう”という警報です。
…さて、災害になるような大雨は連続してずっと降っているものですから、実際の警報は、2つセットで出ることが多いようです。
例えば、気象庁が「レベル5大雨特別警報」を発表し、市町村が「緊急安全確保」を発令します。
先週9月8日(火曜日)には愛知県瀬戸市や名古屋市で「緊急安全確保」が発令されました。
このとき気象庁の「特別警報」が庄内川流域に出されており、浸水が想定される地域のなかに、名古屋市や瀬戸市が含まれていました。
ただ、特別警報が発表されたから必ず緊急安全確保が発令されるわけではありませんし、逆に、緊急安全確保が発令されても、特別警報が発表されていない場合もあり得ます。
9月3日(木曜日)の青森・秋田豪雨では、気象庁から「レベル4大雨危険警報」と「レベル4土砂災害危険警報」が出されましたが、このとき気象庁からは レベル5の特別警報 は出されませんでした。しかし青森市と五所川原市では警戒レベル5「緊急安全確保」が発令されています。
このように、特別警報と緊急安全確保はどちらもレベル5相当ですが役割は少し異なることを知っておきましょう。
そして最も大切なのは、気象庁も「レベル5を待って避難するのではなく、レベル4(避難指示)までに避難を完了すること」を呼びかけている点です。
レベル5は避難開始の合図ではなく、すでに命に危険が迫っている状況と考えるべきでしょう。
「警報疲れ」という考え方
8月以降ずっと、北海道、東北、北陸、九州、関西、東海、関東…など、全国各地で大雨(線状降水帯)による浸水や河川氾濫、土砂災害が相次ぎました。
テレビのニュースやスマートフォンの通知では、連日のように避難情報や警報が発表され、「命を守る行動を」という呼びかけが繰り返されました。
こうした情報に日々接するなかで、「また警報か」と感じた方も少なくなかったのではないでしょうか。
SNSでも「警報が多すぎる」といった声を見かけました。
ここで心配なのが警報に慣れてしまうことです。
近年、豪雨や台風などの自然災害が頻発するなかで、「オオカミ少年効果(Cry-Wolf Effect)」や「警報疲れ(Warning Fatigue)」という現象が注目されるようになりました。海外では2010年代以降、こうした現象についての研究も進められています。
「オオカミ少年効果」は、イソップ寓話の『オオカミ少年』に由来する言葉で、警報が何度も発表されても被害が発生しなかったり、予測が外れたりすると、人々が次第に警報を信じなくなってしまう現象を指します。こうした傾向は気象や防災だけでなく、軍事や医療など幅広い分野でも指摘されています。
また、「警報疲れ」は、警報や注意喚起が繰り返されることで、人々の危機意識や注意力が低下してしまう現象を表す言葉として使われています。
もちろん、警報疲れはそう単純なものではありません。
警報の回数や頻度だけで決まるわけではなく、自分との関係性や情報の内容、過去の経験など、さまざまな要素が影響すると考えられています。
しかし、人は危険を前にすると、ときどき無意識のうちに「今回も大丈夫だろう」「前回も何も起きなかった」「もう少し様子を見よう」と考えてしまいます。
これは防災心理学でいう「正常性バイアス」にも通じる心理です。
実は、防災において最も危険なのは、災害そのものではなく、こうした“慣れ”や“思い込み”というバイアスなのかもしれません。
テレビだけでは分からない時代
災害時、多くの人はまずテレビやニュースサイトで危険を知ります。
テレビには、広い範囲に危険を知らせる大きな役割がありますが、その一方で、局地的な災害では、全国放送だけでは分からないことも当然あります。
自宅近くの川の水位はどうか。自分の地区に避難指示は出ているのか。土砂災害の危険区域に入っているのか。
こうした情報は、一人ひとりの住む場所によって異なります。
情報の量が増えた今、本当に重要なのは情報収集ではなく、自分ごととして危険を判断することです。
全国で起きている災害の情報を知るだけでなく、それが自分や家族にどのような影響を及ぼすのかを考えることが大切なのです。
だからこそ現在の防災では、テレビを入口として、「自治体の避難情報」、気象庁の「キキクル」、「緊急速報メール」、「防災アプリ」、「防災行政無線」など、複数の情報源を組み合わせて確認することが重要になっています。
「全国で危険が起きている」という情報と、「自分が今どの危険の中にいるのか」という情報は、別に確認しなければなりません。
本当に重要なのは「自分ごと化」
今回の豪雨報道で、「レベル4」「レベル5」という言葉を頻繁に耳にしました。
しかし、ここには大切な誤解があります。
現在の避難情報では、
レベル3:高齢者等は避難
レベル4:危険な場所にいる人は全員避難
レベル5:緊急安全確保(ただちに命を守る)
とされています。
特に重要なのは、「レベル4までに避難を完了する」という考え方です。気象庁や内閣府は、「警戒レベル4までに必ず避難」と繰り返し呼びかけています。
レベル5は、避難を始めるタイミングではありません。
すでに浸水や土砂災害が発生していたり、夜間で移動そのものが危険になっていたりする可能性があります。レベル5では、安全な避難所への移動よりも、その場で命を守るための最善の安全確保行動が求められる場合もあります。
避難の基本は、「レベル5を待たない」ことです。
「ムダ足覚悟で、早めの避難」
1957年の諫早豪雨の教訓で生まれた防災の避難標語に、
「ムダ足覚悟で、早めの避難」
という言葉が語り継がれています。
実際、避難した結果として何も起こらなかった場合、「避難しなくてもよかった」と感じるかもしれません。
しかし、その避難は本当に無駄だったのでしょうか。
どの道を通るべきか。何を持ち出すべきか。家族とどこで合流するのか。実際に行動してみなければ分からないことは数多くあります。
防災において、本当に怖いのは避難したことではなく、避難しなかったことで逃げ遅れることなのです。失った命は二度と戻りません。
警報があっても、実際に避難する人は少ないものです。
事例が自然災害ではありませんが、例えば2023年8月に北朝鮮がミサイルを発射し、沖縄県にJアラートが発令されました。
その後、政府が実施した調査では、実際に避難した人はこの時わずか 15.6% だけで、約半数は「避難する必要はないと考えた」と回答しています。
1982年の長崎豪雨では、大災害が発生する前の約2週間に5回の警報が発表されましたが、最初の4回は時間雨量100ミリ前後の豪雨となったものの大きな被害は発生せず、5回目の警報が出された際に線状降水帯による記録的豪雨が発生し、大規模な土砂災害へと発展しました。
長崎市で避難指示を受け取った人の避難率は 27.3% で、4人に3人は避難せず、また、警報がくり返される中で、避難に必要な物資を準備した人は、わずか 2% だけでした。
長崎豪雨災害の報告書には「調査結果で重要なのは、住民の警報への信頼度がきわめて低い」と書かれています。。
もちろん、直前の4回の警報で被害がなかったから次も避難しなかった、と単純に言えるわけではありません。
しかし、防災研究では、過去の経験が「今回も大丈夫だろう」という油断につながる可能性が指摘されています。
結果的に長崎市内だけで死者216人をだす大水害になりました。
※関連コラム
・「諫早豪雨(1957年)」の教訓(2017.07.10)
・長崎豪雨(昭和57年7月豪雨)の教訓(2021.08.16)
・「大雨注意報」と「洪水注意報」と青森県「百沢土石流災害(1975年)」(2023.08.07)
・長野県伊那地方の水害伝承「未満水(ひつじまんすい)(1715年6月)」(2020.06.29)
「空振りではなく素振り」
そこで、京都大学防災研究所の矢守克也教授は、結果的に災害が起きなかった避難を、「空振りではなく素振り」と捉える考え方を提唱しています。
野球選手は、本番の打席でヒットを打つために何百回、何千回と素振りを繰り返します。防災も同じです。
避難して何も起きなかった。非常持出袋を準備したが使わなかった。避難経路を確認したが出番がなかった。それらは失敗ではありません。
将来、本当に危険な状況になったときに命を守るための練習であり、経験なのです。
※関連コラム
・ロサンゼルスドジャースと素振りと地震(2023.12.18)
・開高健(作家)の「空振り大いに結構」(2011.11.14)
・萩原尊禮(東海地震判定会初代会長)の「空振りを恐れず、見逃しはせず。」(2008.09.08)
今日のまとめ
2026年の夏、私たちは何度も警戒レベル4やレベル5という言葉を耳にしました。
その中で忘れてはならないのは、「警報に慣れないこと」です。
報道の扱いが大きいか小さいかで、自分の地域の危険度が決まるわけではありません。
まず危険を知り、自分の地域の状況を確認し、レベル5を待たずにレベル4までに行動する。そして、たとえ結果的に何も起きなかったとしても、それを「空振り」と考えないこと。
その経験は、いつか本当に危険な状況に直面したとき、自分や家族の命を守るための「素振り」になります。
豪雨や台風の季節は、まだ続きます。今一度、ご家庭の避難先や連絡方法、防災用品を見直し、「いざ」という時に迷わず行動できる備えを整えておきましょう。
《 執筆者 》
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらいひろや)
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