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熊本城

おはようございます。

先週7月28日(火曜日)に九州を襲った震度7の地震「 令和8年熊本地震(M7.1) 」から 1週間 (7日目) です。

2024年1月1日の「 令和6年能登半島地震(M7.6) 」から 2年7か月 (946日目) です。

2011年3月11日の「 東日本大震災(M9.1) 」と「 福島第一原発事故 」から 15年4か月 (5625日目) を迎えました。

2016年4月14日と4月16日の2日間に震度7が2度襲った「 熊本地震(M6.5、M7.3 死者275人、重軽傷者2,739人) 」から 10年 (3764日目) です。

1995年1月17日の「 阪神・淡路大震災(M7.3 死者6,437人、重軽傷者43,792人) 」から 31年 (11522日目) です。

米国とイスラエルによる対イラン攻撃(2月28日)から、5か月 (157日目) です。

熊本地震(令和8年熊本地震)の発生から7日目を迎えました。

私の記憶では“真夏の震度7”は、初めてかもしれません。
今、一年で最も暑い時期となります。

現在、太平洋高気圧が東シナ海付近でほとんど停滞したような状態となっており、高気圧圏内の東海や西日本では厳しい暑さが続いています。
西日本を中心に連日35℃以上の猛暑日となり、熱中症警戒アラートも発表されています。

水道、電気、ガスといった都市インフラが断たれた地域では、連日の真夏日や猛暑日の中で大変なご苦労をされていることと思います。

8月1日(土曜日)までに熊本県内の停電は概ね解消へ向かっているようですが、熊本県宇城市南部を中心に、断水やガス供給停止などのインフラ被害が続いている地域もあるようです。

熱帯夜が続く中で停電している地域では、断水による水不足、給油渋滞によるガソリン不足、物流停滞による食料不足などが深刻です。

避難所等を通じて熱中症対策の注意喚起は行き渡っていると思いますが、とくに屋内避難所ではなく車中泊をされている場合には、できるだけ暑さを避けるとともに、喉が渇いていなくてもこまめに水分・塩分を補給してください。

また、身体が熱い、返事がおかしい、呼びかけへの反応が鈍いなど、少しでも熱中症の疑いがある場合には、自分たちだけで対処しようとせず、ためらわずに救急車(119)を要請してください。

地震により被害を受けられた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧を願っております。

…さて、

2016年の熊本地震(M6.5、M7.3)から10年。
熊本を再び震度7の地震が襲いました。

7月28日(火曜日)午後4時27分、熊本県熊本地方を震源(深さ16km)とするマグニチュード7.1の地震が発生し、宇城市や氷川町では最大震度7が観測されました。

熊本市南区、八代市、宇土市、美里町、益城町で震度6強、合志市、大津町、西原村、御船町、上天草市、芦北町で震度6弱を観測しています。

西日本では九州地方から北陸地方にかけて震度5強から震度1までの揺れが観測され、熊本県熊本地方では最大階級となる「長周期地震動階級4」も観測されました。

地震活動は全体として少しずつ低下傾向にありますが、その後も活発な余震活動が続いています。

7月28日午後5時8分にはM6.1(震度5弱)の地震が発生するなど、震度1以上を観測した地震は8月1日までに328回に達しました。その内訳は、震度5弱が4回、震度4が15回、震度3が42回、震度2が92回、震度1が174回となっています。(※2026年8月1日午前10時現在)

熊本県災害対策本部によると、8月2日までに死者38人、重軽傷者等105人が確認され、県内22市町村で開設された210か所の避難所には9,226人が避難しています。(※2026年8月2日午前7時30分現在)

今回の地震では、強い揺れによる住宅被害だけでなく、長周期地震動の影響とみられる工場煙突の倒壊、地震後の火災、大規模ショッピングモールでのガス爆発など、さまざまな複合被害も発生しました。

建物被害は全壊181棟、損壊1,924棟のほか、被害程度が未確定の建物が1,746棟に上っています。停電は1,590戸、断水は46,800戸となっています。

大きな地震のあとに断層がゆっくりと滑り続ける現象を「余効すべり」と呼びます。

2016年の熊本地震の後には、日奈久断層帯周辺などで「地表余効すべり」が観測されました。熊本地震以降も地表のずれは長期間にわたって続き、10年間で最大40センチに達したことが研究で分かっています。

こうした地表余効すべりは数年にわたって継続することがあり、地震後に修復された道路や上下水道などの地上・地下インフラに再び損傷をもたらす可能性があるとされています。

今回の令和8年熊本地震でも、地震直後の断層破壊だけでなく、その後も地下ではゆっくりとした変動が続いている(GNSS観測などで地震後も地殻変動が続いている)そうです。
今後、余効すべりの有無や規模について詳しい解析が進められるものと思われます。

さらに研究者の間では、今回破壊した断層帯の周辺に「割れ残り」と呼ばれる領域が存在する可能性も指摘されています。

今回のコラムでは、この「割れ残り」とは何かについて、見てみたいと思います。

※熊本県 > 令和8年熊本地震に関する情報
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/1/274517.html


「割れ残り」という考え方

大地震が発生すると、多くの人は「地下に蓄積していたエネルギーが一気に解放された」と考えます。

もちろん、それは間違いではないそうです。しかし実際の活断層は一本の線ではなく、複数の断層や区間が連なった巨大なシステムで構成されていると考えられています。
例えば長さ100kmに及ぶ断層帯があったとしても、その全てが一度の大地震で破壊されるとは限りません。

地下の岩盤には長い年月をかけて力(応力)が蓄積されます。
そして限界に達した場所から断層が破壊され、地震が発生します。しかし、その破壊が断層帯全体に広がることもあれば、一部で止まることもあるそうです。

地震学では、「大地震で断層全体が破壊されず、比較的すべりが小さいまま残った可能性がある区間」を「割れ残り」と呼ぶそうです。

ただこの言葉には注意も必要です。

現在の科学では地下深部の断層のずれを直接見ることはできません。そのため、「確実な割れ残り」という意味ではなく、「十分に破壊されなかった可能性がある領域」という意味合いで使われることが多いそうです。
したがって、「割れ残りがあるから必ず次の大地震が起きる」という意味とはならないのです。

それでも研究者がこの概念を重視するのは、大地震後の地震活動を理解する重要な手掛かりになるからです。

今回の令和8年熊本地震を理解する上でも、この「割れ残り」という考え方が一つの鍵となっています。


熊本地震から10年、再び動いた日奈久断層帯

今回の震源周辺は、2016年熊本地震の発生以降も地震活動が活発な状態が続いていた地域でした。

2016年熊本地震では、布田川断層帯と日奈久断層帯が連動するように活動したと考えられているそうです。

布田川断層帯は、

・布田川区間(約19km)
・宇土区間(約20km)
・宇土半島北岸区間(約27km以上)

の3区間に分けて評価されています。

一方の日奈久断層帯も、

・高野−白旗区間(約16km)
・日奈久区間(約40km)
・八代海区間(約30km)

の3区間に区分されています。

2016年4月14日の前震(M6.5)は日奈久断層帯北部の高野−白旗区間、4月16日の本震(M7.3)は主として布田川断層帯の布田川区間が活動したとされています。

しかし、布田川断層帯と日奈久断層帯を合わせると延長は約100kmにも達します。

2016年の地震で全ての区間が同じように活動したわけではなかったため、その後の地震本部の評価では、2016年の熊本地震で割れ残った、

・布田川断層帯(宇土区間)
・布田川断層帯(宇土半島北岸区間)
・日奈久断層帯(日奈久区間)
・日奈久断層帯(八代海区間)

4つに注目をしてきました。

そして、今回の令和8年熊本地震について地震調査委員会は、「高野−白旗区間」及び「日奈久区間北東部」が主に活動した可能性が高い、と評価しました。

そのため、今回の地震発生については、「2016年熊本地震で十分に破壊されなかった可能性のある領域との関係」に注目されました。

もちろん現時点で「今回の地震は2016年の割れ残りそのものだった」と断定できるわけではありませんが、多くの研究者が「令和8年熊本地震は、2016年熊本地震から続く地殻活動の一部(2016年の熊本地震の続き=一連の地殻活動の延長上に位置付ける見解)」という見方をしているようです。

※地震調査委員会 > 令和8年熊本地震の評価(2026年7月29日公表)
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2026/20260728_kumamoto_1.pdf


大地震は終わらない

なぜ研究者は「割れ残り」に注目するのでしょうか。

その理由の一つが、「応力移動」という考え方だそうです。

地下の岩盤は互いに押し合い、引っ張り合いながら力を蓄えています。

大地震によって断層が動くと、その場所の応力は解放されます。しかし同時に、その力の一部は周辺の断層や地下構造へ再配分されることがあるそうです。

つまり研究者は、「どこが割れたのか」だけでなく、「その結果どこに力が移ったのか」にも注目しているのです。

「割れ残り」が次の大地震となったケースは、歴史を振り返ると、いくつか考えられます。

1854年には安政東海地震と安政南海地震が約32時間差で発生し、1944年の昭和東南海地震と1946年の昭和南海地震は約2年の間隔を空けて発生しました。

巨大断層が一度に全て破壊されるとは限らず、東側が先に動き、西側が後から動くという現象が実際に繰り返されてきたのです。

また、東日本大震災(2011年)でも「どの部分が大きく滑り、どこが十分に滑らなかったのか」という議論が現在も続いています。

さらに阪神・淡路大震災(1995年)でも、原因となった野島断層や六甲断層系の周辺に応力が移った可能性について数多くの研究が行われました。ただし30年以上が経過した現在も「ここが1995年の割れ残りである」と断定されている場所はありません。

大地震は一度発生して終わるものではありません。今回の令和8年熊本地震は、10年前の熊本地震と地続きの現象として捉える必要があること、そして活断層は数十年ではなく数百年、数千年という時間尺度で活動していることを、改めて私たちに教えてくれているのかもしれません。


地震は「ドミノ倒し」ではない

ここで一つ注意したいことがあります。

地震の後によく、「前の地震が次の地震を引き起こした」という表現が使われます。本震の周辺で起こる「余震」、本震から少し離れたところが影響を受ける「誘発地震」や「関連地震」などとして説明されることが多いです。

確かに地震学では、断層破壊による応力移動が重要なメカニズムとして知られているそうですが、しかし実際の地下では、それほど単純ではないことも分かってきました。

近年の研究では、断層破壊による応力移動、地震波による動的誘発、地下水や間隙水圧の変化、余効すべり、マントルや地殻内部のゆっくりした変形、…など、さまざまな要因が複雑に重なり合って地震活動が変化すると考えられているそうです。

そのため現在の地震学では、「割れ残りがあるから必ず次の地震が起きる」とは考えないそうです。

むしろ、「大地震によって周辺の断層系の応力状態が変化した可能性があるため、その後の活動を注意深く監視する必要がある」というのが現在の一般的な考え方のようです。

今回の令和8年熊本地震も、2016年熊本地震との関係を考える上で非常に興味深い事例ですが、地震発生個所などを見ると、2016年熊本地震で十分に破壊されなかった可能性のある領域との関係を指摘する研究者も多く、今後の解析が注目されています。


次はどこで起きるのか

今回の令和8年熊本地震(M7.1)の発生場所は、今後、マグニチュード7.5程度の大地震の発生が警告されていた箇所でした。
事前に公表されていた地震調査委員会の地震確率予測によると、日奈久断層帯を含む九州南部では、M7クラスの地震が、今後30年以内に発生する確率が「7〜18%(Sランク=確率高い)」と評価されていたそうです。

そのため、今回の令和8年熊本地震を受け、多くの人が気になるのは、「次はどこで起きるのか」ということでしょう。
でも、その場所や時期を正確に予測することは現在の科学ではできません。

今回の地震を受けて、日奈久断層帯の八代海区間(九州本土と天草諸島に囲まれた内海の八代海の「割れ残り」部分)や、布田川断層帯の宇土区間・宇土半島北岸区間(益城町・熊本市・宇土市・宇城市の「割れ残り」)などへの関心は高まるでしょう。しかし、それが来年なのか50年後なのか100年後なのかは誰にも分かりません。

しかし忘れてはならないのは、熊本だけが特別ではないということです。

1995年の阪神・淡路大震災では「まさか神戸で」、2016年の熊本地震では「まさか震度7が二度も」、2024年の能登半島地震では「まさか能登で」という声が多く聞かれました。

日本列島には確認されている活断層だけでも数多く存在し、さらに地下にはまだ十分に把握されていない断層もあると考えられています。

今回の令和8年熊本地震が私たちに教えているのは、「大地震が起きた場所は安全になった」とは必ずしも言えないということです。

そして、「次の震度6弱や震度7の地震は、日本のどこで起きても不思議ではない」という現実でもあります。

だからこそ防災で最も重要なのは、「次はどこか」を予想することではなく、「明日、自宅のある地域で震度7が発生しても生き残れる備えを続けること」なのではないでしょうか。

家具固定、食料や物資の備蓄、非常用トイレ、家族との連絡方法、避難先の確認。そうした日々の備えこそが、大地震が発生したときに私たち自身や家族の命を守る力になるのだと思います。

※関連コラム
「世界津波の日」の物語「安政東海地震」「安政南海地震」(2023.11.06)
南海トラフ地震とスマトラ島沖地震のお話(2024.12.23)



《 執筆者 》
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらいひろや)

平井敬也

防災士(日本防災士機構登録No.040075)、日本人間工学会会員。
1970(昭和45)年、東京都世田谷区生まれ。神奈川県横浜市在住。日本大学大学院で安全工学・人間工学を専攻。大学院修了後、大手ゲーム製造メーカーに入社、企画開発、PL(製造物責任法)担当や品質管理(ISO9000)に携わる。2001(平成13)年、災害用長期備蓄食〈サバイバル®フーズ〉の輸入卸元、株式会社セイエンタプライズ取締役に就任。阪神淡路大震災で家族が神戸で罹災、日常の防災意識や危機管理の啓蒙普及を企図した無料メールマガジン『週刊防災格言』を07年よりスタート。毎週月曜日に防災格言を発信し続け2万人の読者を得ている。
【書籍】天災人災格言集―災害はあなたにもやってくる! ¥1,650(税込)




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