おはようございます。
2024年1月1日の「 令和6年能登半島地震(M7.6) 」から間もなく 2年7か月 (938日) です。
2011年3月11日の「 東日本大震災(M9.1) 」と「 福島第一原発事故 」から 15年4か月 (5618日) を迎えました。
2016年4月14日と4月16日の2日間に震度7が2度襲った「 熊本地震(M6.5、M7.3 死者275人、重軽傷者2,739人) 」から 10年 (3757日) です。
1995年1月17日の「 阪神・淡路大震災(M7.3 死者6,437人、重軽傷者43,792人) 」から 31年 (11515日) です。
米国とイスラエルによる対イラン攻撃(2月28日)から、5か月 (150日) です。
観測史上初の 5日連続「40℃以上(酷暑日)」
暦の上で“厳しい暑さ”を意味する二十四節気「大暑(たいしょ)」を迎えた先週7月23日(木曜日)を境に、暑さが一層厳しくなりました。
三連休が明けた21日(火曜日)から25日(土曜日)にかけ、日本列島は太平洋高気圧と上空のチベット高気圧(ダブル高気圧という)に覆われ、暖かい空気が吹き下ろされて、晴天が続きました。
これにより、各地を災害級の暑さが襲い、連日“酷暑日(40℃以上)”が観測されました。5日連続で40℃以上が観測されるのは、日本の観測史上初めてのことです。
また、今年、酷暑日が観測された地点は、のべ22地点となったそうで、これは2018年の17地点を上回り、昨年(2025年)の30地点に次ぐ史上2番目の多さとなりました。
7月21日(火曜日)は 3地点(八幡、豊田、多治見)で今年初の 40℃ が観測されました。翌7月22日(水曜日)には 4地点(美濃、多治見、佐久間、桑名)、23日(木曜日)には7地点(金山、浜松、豊田、多治見、佐久間、美濃、桑名)で、24日(金曜日)は 2地点(美濃、桑名)、25日(土曜日)は 6地点(甲府、豊田、浜松、多治見、美濃、桑名)で観測されています。
7月23日は、静岡・佐久間で日本歴代6位タイ記録の 41.1℃ も観測されました。
このままだと夏の平均気温が平年より +2.36℃ も高く、1898年の統計開始以来で「史上最も暑い夏」と言われた昨年(2025年)を追い抜くかもしれませんね。
昨年(2025年)の酷暑日の初観測が 2025年7月30日の 41.2℃(大阪府柏原市)でしたから、すでに、昨年を上回るペースで“酷暑”が積みあがっています。
実際、今年は、どうなるのでしょうか?
さて、以前もコラムに書きましたが…、
2010年代前半くらいまでは「40℃超え」は数年に一度のニュースでした。それが現在は「 今年は40℃超えが何回あるか 」という話になっています。
調べると、40℃以上 の「酷暑日」は、年による振れ幅が割と大きいようですが、2018年頃からは 40℃ は珍しくない状況になってきたように見えます。
2010年代以降の酷暑日の観測回数をみると、
2010年から2012年までは一度も観測されず(0回)、2013年(8回)、2014年から2017年も一度も観測されず(0回)、2018年(17回)、2019年(6回)、2020年(8回)、2021年(1回)、2022年(8回)、2023年(2回)、2024年(9回)、2025年(30回 *最多)観測されています。そして、今年(2026年)は すでに 22回(*7月25日時点)を数えます。
40℃ という気温になるためには「温暖化」だけでなく、日本列島の上空に真夏の高気圧が居座るという「強烈な高気圧配置」という気象が必要なのだそうです。
そうした条件が整わなかった 2021年〜2024年 は酷暑日の観測が比較的少なく、特に2021年は、 40℃ の観測は岐阜県多治見市の1回だけでした。
2021年は コロナ禍の「東京オリンピック」の年でしたが、このとき、太平洋高気圧の張り出しが断続的で、オリンピック期間中も雨が多く降りました。台風や上空の寒気の影響を受けて 近年では比較的に涼しい夏だったと思います。
逆に 2025年 が何故異常に暑かったのかというと、気象庁の異常気象分析では、偏西風が平年よりかなり北を流れ、ダブル高気圧(チベット高気圧と太平洋高気圧)が重なり、日本列島が分厚い暖気に覆われました。
またフィリピン東方の対流活動が活発で、日本近海の海面水温も高かった結果、群馬県伊勢崎市で 41.8℃ の国内最高気温を観測するなど、40℃以上の地点が過去最多になったと分析されています。
では、今(2026年)、なぜ再び暑いのでしょうか。
それは、日本周辺の海水温が高いため高気圧の勢力が維持されやすい環境にあり、太平洋高気圧とチベット高気圧のダブル高気圧が時々出現しているためです。
ただ、気象庁が7月21日に発表した3か月予報だと、今年は、厳しい暑さの日もあるものの、それほど続かないので(2025年ほどではない)、といった見方がされています。
史上最も暑かった昨年(2025年)は、高気圧がほぼ居座ったのに対し、2026年は高気圧が強まる時期と弱まる時期を繰り返していると分析されています。
そのため、あるタイミングでは猛暑となるが、少し暑さが和らぐ期間も交互に現れる、と予報されています。
いずれにしても、これからの真夏という時期は、気温と湿度も高く暑い(不快な暑さを感じる)ものです。
例年、夏の暑さ は 8月末頃までは続きますので、あとひと月ほどは暑さへの備えが欠かせない時期が続きそうです。
熱中症 に十分お気を付けください。
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※関連コラム
・史上最も暑い一日「歴代最高気温41.8℃」の衝撃(2025.08.11)
・カムチャッカ半島地震の津波騒動と「酷暑論」(2025.08.04)
・猛暑(35℃)、酷暑(40℃)と災害級の危険な暑さ(2024.07.08)
「涼しい」を考えてみる
その昔、人間には快適な温度が決まっているもの、と考えられてきましたが、近年の研究では「涼しい」は心理現象でもあるとされます。
今何℃か よりも その人が何を期待しているか が重要な要素で、例えば、風鈴の音に涼しさを覚えたり、28℃の海辺が涼しく感じたり、28℃の満員電車が暑いと感じたり、はどれも心理的な影響もある現象となります。
近年は「Adaptive Comfort Theory(適応的快適性理論)」という「人間の快適性は温度計の数字だけでは決まらず、その人の環境への適応状態にも大きく影響される」という理論が知られるようになりました。
シンガポールの人々は28℃を快適と感じやすい一方、北欧では同じ28℃を暑く感じる人が多いようですが、同じ人間なのに快適と感じる温度が違うのはなぜか――。
1998年頃に、Richard de Dear(リチャード・デ・ディア)とGail
Brager(ゲイル・ブラガー)という科学者が、世界中で約2万件以上のデータを分析し、人間は温度環境に順応する、という適応的快適性理論を体系化しました。
35℃で何週間も生活している人は28℃を快適と感じ、15℃で生活している人なら28℃を暑いと感じる、ということです。
当たり前すぎるので、一般にはほとんど知られていませんが、こうした人間の感じる「快適性」の研究モデル(科学的根拠)が基となり、今では、都市計画や建築業界、エアコン業界で応用されているそうです。
ただ、人間の順応能力にも閾値(限界)があります。
特に近年のような猛暑日や熱帯夜が続く環境では、適応だけで快適さを維持することは難しくなり、熱中症リスクも高まります。
※ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)の適応モデルは、平均外気温がおよそ33.5℃までの観測データを基に構築されています。そのため、それを超える環境では理論の適用範囲外とされています。
以前「100年前と比べて、気温もだいぶん高くなってきている」ことをコラムに書きましたが、このなかで、100年前の物理学者・寺田寅彦は、
《 涼しさは温度だけではなく、暑さとの対比や変化があって初めて感じられる感覚である。 》
と考察したと紹介しました。(「さまよえるユダヤ人の手記より:涼しさと暑さ」昭和4年(1929年)9月)
今考えると、Adaptive Comfort Theory(適応的快適性理論)として科学的に定量化されるより97年も前のことです。
理論を寺田寅彦が先取りした訳ではありませんが、人間の感じる「涼しさ」が単なる温度計の数字だけでは説明できないことを、約1世紀前に鋭く見抜いていた点は興味深いところですね。
人間には順応する力がありますが、近年の猛暑はその順応能力を上回る速度で続くことがあります。だからこそ、気合いや慣れに頼るのではなく、冷房や水分補給などの対策が必要になるのです。
※関連コラム
・“史上最も暑い7月”に考える「涼しさ」と「暑さ」(2023.07.31)
・大暑の不快指数と芥川龍之介の自殺の関係を科学する(2024.07.22)
「涼しい」の科学
近年の熱中症対策は、単に気温を下げることから、人間がどう暑さを感じるかへ関心が移っています。
風を当てる、日陰を作る、打ち水をする、ミストを使う、緑化する――こうした方法は、実際の気温低下以上に「体感温度」を下げる効果があることが知られています。
その理論的背景の一つとなっているのが Adaptive Comfort Theory(適応的快適性理論)です。
もっとも、人間の感覚だけで暑さを克服できる訳ではありません。現実には、心理的な快適性とともに、物理的に熱を逃がす仕組みが利用されています。
物理学や気象学の世界では、人や地面が冷える現象は主に次のような仕組みで説明されます。
・放射(輻射)冷却
⇒物体が赤外線として熱を放出する現象です。晴れた夜に地面や屋根が冷える「放射冷却」が代表例です。
・蒸発(気化熱)冷却
⇒汗や打ち水の水が蒸発する際に周囲の熱を奪う現象です。
・伝導冷却
⇒冷たい物に触れることで熱が移動する現象です。冷却シートや保冷剤などがこれに当たります。
・対流冷却
⇒風や空気の流れによって熱が運び去られる現象です。扇風機やうちわで涼しく感じるのはこのためです。
・断熱膨張冷却
⇒空気が膨張すると温度が下がる現象です。積乱雲の発達や山の上が涼しい理由の一つでもあります。
・熱ポンプ冷却(冷凍サイクル)
⇒エアコンや冷蔵庫に利用されている仕組みです。電気の力を使って熱を別の場所へ運び出します。
私たちが夏の夕方や夜に感じる「涼しさ」は、これらの現象のどれか一つではなく、放射冷却、風による対流、汗の蒸発などが複合して生まれています。
例えば、夕立の後に風が吹くと急に涼しく感じることがありますが、これは雨による気化熱冷却に加え、風による対流冷却が同時に働いているためです。
つまり「涼しい」とは単に気温が下がることではなく、人間と環境との間で熱がどのように移動するかによって決まる現象なのです。
熱中症のお話
熱中症対策として「こまめな水分補給」が大切だとよく言われます。
その理由は、人間に備わっている最大の冷却装置が「汗」だからです。
汗は単なる水分ではありません。
汗が蒸発するときには周囲から熱を奪います。これを気化熱(気化冷却)と呼び、人間はこの仕組みを利用して体温を調節しています。
汗の原料は血液中の水分です。
大量に汗をかくと体は脱水状態になり、血液量も減少します。
すると体はこれ以上水分を失わないよう発汗を抑えます。
さらに血液量が減ると、体の内部で発生した熱を皮膚まで運びにくくなります。
その結果、熱が体内にこもり、体温が上昇してしまいます。
これが熱中症の危険な状態です。
では、なぜ「こまめに」水分補給しなければならないのでしょうか。
喉の渇きは、実は脱水が始まってから現れる警告サインです。
そのため、喉が渇いてから一度に大量に飲むよりも、早めに少量ずつ補給した方が血液量や発汗能力を維持しやすいと考えられています。
また、汗には水分だけでなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質も含まれています。
大量に汗をかいた場合には塩分不足になることもあるため、スポーツドリンクや経口補水液などが有効とされています。
長年、人類の理論上の生理学的限界として注目されてきた指標に「湿球温度(Wet-Bulb Temperature)」というのがあります。
湿球温度とは、気温と湿度を合わせて評価した温度のことです。
例えば、
気温35℃・湿度100%
気温46℃・湿度50%
気温55℃・湿度25%
は、おおよそ同じ湿球温度35℃に相当します。
人間は汗を蒸発させることで体温を下げています。
しかし湿球温度が極端に高くなると、汗が蒸発しにくくなり、体が十分に熱を逃がせなくなります。
その結果、深部体温が上昇し、命に関わる熱中症を引き起こす危険があります。
つまり、熱中症とは単に「暑いから起きる」のではなく、体が熱を逃がす仕組みが追いつかなくなることで発生する現象なのです。
近年の猛暑では、「まだ大丈夫」「もう少し我慢できる」という感覚よりも、体温調節の仕組みそのものを守ることが重要です。
こまめな水分補給や適切な冷房の利用は、そのための科学的な対策なのです。
エアコンの設定温度のお話
今から20年ほど前、夏になると「エアコンは28℃設定にしましょう」とよく言われていました。
ところが最近は、この言葉をあまり聞かなくなったように感じます。
なぜでしょうか。
実は環境省が当時呼びかけていたのは、「エアコンの設定温度28℃」ではなく、「室温28℃を目安に」でした。
しかし世の中では「冷房は28℃設定」だけが独り歩きしました。そのため、西日が当たる部屋や断熱性能の低い建物では、エアコンの設定温度28℃なのに、室温は30℃〜32℃…になってしまうこともよくありました。
近年の熱中症対策では、設定温度そのものではなく、実際の室温や湿度、暑さ指数(WBGT)を見ながら冷房を使うという考え方が重視されています。
東京都も現在は、「エアコンを適切に使用して命を守る」というメッセージを発信しています。
考えてみれば、2005年にクールビズが始まった頃と、現在では社会を取り巻く状況も大きく変わりました。
クールビズが始まった背景には、1997年の京都議定書があります。日本は開催国として温室効果ガス削減を進める立場となり、この当時は、冷房使用を抑えて省エネルギーを進めることが重要な課題でした。
当時の発想は、「冷房を少し弱めて電力消費と二酸化炭素(CO2)排出を減らそう」というものです。
一方、2026年の日本では、記録的な猛暑や熱帯夜が毎年のように発生しています。
そのため現在は、「省エネ」と同時に「熱中症から命を守る」ことも重要な課題となっています。
もちろん温暖化対策が不要になった訳ではありません。
しかし、高効率なエアコンを使いながら安全に暑さを乗り切ることも、現代の重要な適応策の一つです。
かつては「緩和(Mitigation)=温暖化を防ぐための取り組み」が中心でしたが、現在では、「適応(Adaptation)=温暖化した気候の中で被害を減らす取り組みの重要性」が高まっています。
クールビズの時代は、「冷房を減らして温暖化を防ぐ」という発想が中心でしたが、今では、「温暖化した世界の猛暑から、冷房を上手に使って命を守る」時代になったとも言えるのかもしれません。
この20年で、エアコンの省エネ性能も高まり、私たちが向き合う課題そのものが変わってきたのです。
「暑さは気合いで乗り切るもの」から、「科学的に備えるもの」へと移りつつあります。私たちの暑さとの付き合い方も、少しずつ変わり始めているのかもしれません。
《 執筆者 》
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらいひろや)
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