おはようございます。
本日は 海の日 の祝日です。
今週末7月26日(日曜日)は 土用丑の日 です。
2024年1月1日の「 令和6年能登半島地震(M7.6) 」から 2年6か月 (931日) です。
2011年3月11日の「 東日本大震災(M9.1) 」と「 福島第一原発事故 」から 15年4か月 (5611日) を迎えました。
2016年4月14日と4月16日の2日間に震度7が2度襲った「 熊本地震(M6.5、M7.3 死者275人、重軽傷者2,739人) 」から 10年 (3750日) です。
1995年1月17日の「 阪神・淡路大震災(M7.3 死者6,437人、重軽傷者43,792人) 」から 31年 (11508日) です。
米国とイスラエルによる対イラン攻撃(2月28日)から、来週で 5か月 (143日) です。
ホルムズ海峡危機からもうすぐ5か月
未だ、戦争が終わる兆しが見えません。
終息どころか再び情勢が悪化しているようにみえます。
6月中旬には米国とイランの間で一時的な停戦枠組み(イスラマバード覚書)が結ばれ、海上輸送の正常化を世界中が期待しました。
しかし7月に入ってから商船攻撃や報復空爆が相次ぎ、停戦枠組みそのものは公式に破棄されていないものの、戦闘の再燃によって、その実効性が大きく損なわれています。そして、米軍はイラン港湾に対する封鎖措置を再開し、イラン側も対抗姿勢を強めることになりました。
そもそも“覚書”は本来60日間の暫定措置でしたが、その期間中に再び戦闘が激化しています。最初から“恒久和平”を目指したのではなかった可能性もあります。
これにより、ペルシャ湾を通る商船は、6月に比べて通航環境が再び悪化し、海峡は平常時からほど遠い状態へ逆戻りしています。“ホルムズ海峡の完全閉鎖”とまでは行っておらず、現在も軍事的緊張下で不安定な通航が続いている状態です。
国際海事関係機関からも、依然として商船や船員の安全確保には懸念が残るとの指摘が続いています。
そして先日は、トランプ大統領が「通航料20%」構想を打ち出しましたが、国際的な反発を受けてわずか1日で撤回されました。しかし、より重要なのは、米国によるイラン港湾への封鎖措置そのものは継続されていることです。問題は通航料ではなく、海峡の管理権と安全保障を誰が担うのか、という根本問題へ移りつつあります。
結局のところ、ホルムズ海峡は現在も中途半端で危険な状態にあります。原油価格や物流コストが再び大きく揺れ動くリスクは残ったままです。
争点も単純な軍事衝突から、誰が海峡を管理するのか、どの航路を公式ルートと認めるのか、通航料やサービス料を認めるのか…という主権と国際秩序を巡る対立へ移りました。
歴史上、この種の主権問題や海洋権益問題は文書だけでは解決しにくく、長引く傾向があります。
一番困るのは長期化です。この戦争がいつ終わるかは誰も分りません。
米国のシンクタンクPIIE(ピーターソン国際経済研究所)は、この戦争に、ロシアと中国が大きな声で介入せずに、米国が中東で長期戦に巻き込まれるのを静観している状況を、ロシアも中国もこの戦争から多くの面で恩恵を受けている、と分析しています。
米国が中東に縛られ、原油価格が上がることは、ウクライナ戦争を続けるロシアにとって追い風であり、中国は経済的には損をするものの、地政学的・戦略的には利益を得る可能性がある、といいます。
一方で、日本は違っています。
日本はこの危機で何かを得る立場になく、原油、LNG、物流費、電気代、ガソリン価格、石油化学原料のすべてで影響を受ける立場です。
短期なら備蓄で耐えられても、長期化すれば、暮らしと企業活動のコストにじわじわ効いてきます。とくに日本はエネルギーだけでなく、ナフサ(石油化学原料)やプラスチック原料の多くも中東に依存しており、製造業への影響も無視できません。
イランが親日国である事実に楽観論もささやかれますが、しかし、ホルムズ海峡の安全は友情ではなく国益によって左右されます。イランが日本船の通航を認める可能性は他国より高いかもしれませんが、それは親日感情だけでなく、日本を利用する戦略的判断による面も大きいと考えられます。
さらに、通航が許可されても機雷や軍事衝突、保険などの問題は残るため、親日だから日本のタンカーは大丈夫と考えるのは楽観的だ、といった論調も占めています。
日本には「親日イラン」という保険と、強固な「日米同盟」という二重の保険がありますが、しかし、保険は事故の確率を下げるものであって、事故そのものをゼロにするものではありません。
※PIIE > How Russia and China are winning the war in Iran(2026.03.30)
https://www.piie.com/blogs/realtime-economics/2026/how-russia-and-china-are-winning-war-iran
( *コラム は 7月16日 に執筆しています。 )
ロシアでも暑い(シベリア熱波)
《 気候は期待するもの、天気は実際に起きるもの 》
“Climate is what you expect, weather is what you get”
この言い回しは、SF作家 ロバート・ハインライン(1907〜1988)の『Time Enough for Love(邦題「愛に時間を」)』の一節だそうです。
科学的にも「天気(weather)」はその日の気温や雨などの状態で、「気候(climate)」は30年以上の長期平均や変動を指します。だから科学的には、気候と天気は区別されてきました。
昔から、夏は普通に暑い と感じるものですが、しかし、ここ最近の温暖化傾向は少し様子が違うようです。
…欧州熱波が世界で話題になった6月下旬。ロシアのシベリア地域でも、6月上旬から30℃超えの異例の猛暑が続いていたそうです。
6月25日には、西シベリアの大都市ノボシビルスクで 最高気温 33℃ が観測されたそうで、現在(7月15日現在)も、一日の最高気温27℃〜31℃程度で暑さが続いているようです。
ヨーロッパと西シベリアは偏西風帯でつながっているので、欧州熱波と同じく、偏西風の大蛇行によるブロッキング高気圧(オメガブロックという高気圧異常配置)がこの熱波の原因だろうな、と思います。
…さて、たとえば昔から、夏になると、北海道でも 30℃ になるし、極東シベリアでも 35℃ になることがありました。
だから、温暖化で今だけ高温になっている訳ではありません。
実はロシアやシベリアは、湿度が比較的低く、雲が少なく、海の影響がない大陸性気候のため、冬は極寒である一方で、夏は意外と暑くなる地域なのだそうです。
ノボシビルスクの「夏の平年気温」は、日本人がイメージするシベリアよりかなり暖かく、札幌の夏と同じくらいです。
6月の平均が約18.0℃(最高約22.3℃〜最低12.8℃)、7月が約19.5℃(約23.5℃〜約14.7℃)、8月が約17.3℃(約21.5℃〜約12.2℃)です。ちなみに、ノボシビルスクの公式な歴代最高気温は
37.3℃(2023年6月)で、最低気温記録は -46.3℃(1969年2月)だそうです。
というわけで、33℃ は前代未聞ではありませんが、異常なのは、6月上旬から下旬まで長期間高温が続いていることです。
ロシアやシベリアで熱波が起こること自体は珍しくないものの、2020年代には、広範囲かつ長期間にわたる高温事例が繰り返し観測されています。2026年のノボシビルスク周辺の猛暑もその流れの中で捉えることができるのだそうです。
モスクワ熱波(2010年7月〜8月)と温暖化
今から16年前。2010年夏、モスクワ周辺は観測史上最悪と呼ばれる熱波と干ばつに襲われました。当時“千年に一度”と言われた「モスクワ熱波」です。
このときも、偏西風が大蛇行し、強力なブロッキング高気圧が数週間停滞し、平年の気温が約22℃のはずのモスクワでは38.3℃(2010年7月29日)が観測され、大規模な森林火災と煙害が発生しました。
モスクワを中心に、推計1万5000人が熱中症で亡くなり、 ロシアは国内総生産(GDP)の1%に相当する150億ドルを失う歴史的熱波となりました。
ロシア政府の気象部門「ロスギドロメト(ロシア水文気象環境監視庁)の公式見解では、ロシアは世界平均より速く温暖化している、といいます。2020年代からの高温を「一時的な暑い夏」ではなく、ロシア全域で進む気候変動(温暖化傾向)の一部であると論じています。
ロシアの温暖化の速度は、1976年〜2024年の年平均気温の上昇速度が、10年あたり +0.50℃ なのだそうで、これは世界平均の 約2.5倍の速さで上昇しているそうです。
こうした気温上昇に伴い、熱波、干ばつ、森林火災、永久凍土の劣化などが重大な環境リスクとされ、2020年はロシアの観測史上でも特に突出した高温年であり、その後も2024年、2025年、そして今年2026年も高温傾向が続いているようです。
したがって、2026年のシベリアの猛暑も、単独の偶発的な暑さというより、温暖化した気候背景のもとで発生した顕著な高温事例の一つとして捉えるのが妥当と結論しています。
※気象庁 > ヨーロッパ東部からロシア西部周辺にかけての異常高温について(2010年8月6日付)
https://www.data.jma.go.jp/cpd/monitor/extreme_world/monitor/world20100806.pdf
※ロシア連邦水文気象環境監視局(ロシギドロメット)2024年の気候レポート(ロシア語)
https://meteoinfo.ru/images/media/climate/rus-clim-annual-report.pdf
永久凍土から溶け出した未知の病原体リスク
とくに2020年代から、北シベリアや北極圏では高温傾向が継続しています。東シベリアなどの地温も、深さ320センチの層に至るまで、上昇が確認されているといいます。
これにより、ロシアの国土の多くに分布する「永久凍土」の活動層(夏に融ける層)の厚さが増加する傾向が続き、特にロシアのヨーロッパ地域や西シベリアで顕著な増加が見られるといいます。
永久凍土と言えば…、溶けた永久凍土から、人類滅亡級の未知の宇宙生命体がでてくるSFホラー映画『遊星からの物体X』というのがありました。
これ、まったくの荒唐無稽という話でもないそうで、ロシア国土のかなりの部分の永久凍土が溶けて数万年前の細菌や古代ウイルスが発見されることがありました。
2016年夏、ロシア北極圏の「ヤマル半島」で 30℃ を超える異常高温がありました。そのとき、炭疽菌の感染によるトナカイの群れの大量死が発生しました。人への感染と死亡例もあったそうです。
諸説ありますが、もっとも有力な原因とされるのは、永久凍土に閉じ込められていた、大昔に炭疽菌で死亡した動物の死骸が融解し、炭疽菌芽胞が草地を汚染し、野生のトナカイが感染した可能性です。
炭疽菌そのものは珍しい病気でもないそうですが、一般的にウイルスや菌が繁殖しないとされる北極圏で、炭疽菌感染拡大が発生したことが世界を驚かせました。
この事件以降、フランス・ロシアの研究チームなど世界中の研究機関がシベリア永久凍土や、アラスカ永久凍土、北極圏湖沼などを調査し、永久凍土に閉じ込められていた数万年前の細菌やウイルスなどの微生物を発見する事例も報告されています。
ただ、研究室で復活した古代ウイルスのほとんどは、人間に感染しないアメーバウイルスばかりなので、現在の科学者の見解では、人類滅亡級の未知ウイルスといったものが永久凍土から出現する可能性は「非常に低い」…だそうです。
2025年に面白い論文がASM(アメリカ微生物学会)の研究者らが発表しています。
その名も「 永久凍土の融解による病原性ウイルスリスクに関する冷静な視点 」という論文で、これによると太古のウイルスが再活性化する潜在リスクは、現時点の知識にもとづけば、通常の温帯土壌や水環境中に存在するウイルス以上の脅威ではない、としています。
つまり、永久凍土から“未知の病原体”が出現する可能性は完全には否定できないものの、現時点では、人類滅亡級のウイルス出現を示す証拠は見つかっていないので「過度に恐れる必要はない」といったものです。リスク論的には、100年前のスペイン風邪レベルの「鳥インフルエンザ」「新型コロナ」「エボラ」などのパンデミック(世界大流行)の発生リスクに比べると「可能性は非常に低い」ということになります。
※ASMの論文 > Cooling perspectives on the risk of pathogenic viruses from thawing permafrost(英語)
https://journals.asm.org/doi/epub/10.1128/msystems.00042-24
気候研究者が本当に恐れているもの
永久凍土から炭疽菌のような“既知の病原体”の再出現や、永久凍土融解による温暖化加速とインフラの被害は、現実的なリスクとして警戒されています。
そして病原体やインフラ被害よりも、実際は メタン放出 による「温暖化の進行が更に加速する可能性」が一番の問題とされています。
温暖化によって凍土が融けると、閉じ込められていた有機物が微生物によって分解され、二酸化炭素やメタンとして大気中に放出されます。とくに湿地や湖沼など酸素の少ない環境ではメタンが発生しやすいとされます。
メタンは二酸化炭素より短命ですが強力な温室効果ガスです。
すると永久凍土融解は温暖化をさらに加速させます。
このため、メタン放出リスクが、一番厄介で問題視されているわけです。これは地球滅亡のメタン爆発が起こるわけではなく、今すでに進行しつつある長期的な気候リスクの流れにあるために、現実的な温暖化加速の最悪のシナリオの一つとなっています。
今日のまとめ
地球温暖化は、もはや一地域だけの問題ではなく、地球全体の問題です。遠いシベリアの話に見えても、日本の猛暑や豪雨、エネルギー問題とも決して無関係ではありません。
これまでの「防災(災害対策)」というと、地震や台風、豪雨といった突発災害への備えが中心でした。そのため、防災備蓄も「3日分」「7日分」といった短期的な想定が主流でした。
しかし、気候変動による猛暑の常態化、エネルギー価格の高騰、食料供給の不安定化などは、数年から数十年という時間軸で進行するリスクです。
私たちは今、「災害に備える防災」だけでなく、「社会の変化に備える防災」も求められる時代に生きています。
すると、“備え”とは、明日の地震だけでなく、10年後の世界を見据えることでもある、と言えます。
《 執筆者 》
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらいひろや)
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