おはようございます。
2024年1月1日の「 令和6年能登半島地震(M7.6) 」から 2年5か月 (889日) です。
2011年3月11日の「 東日本大震災(M9.1) 」と「 福島第一原発事故 」から 15年 (5569日) を迎えました。
2016年4月14日と4月16日の2日間に震度7が2度襲った「 熊本地震(M6.5、M7.3 死者275人、重軽傷者2,739人) 」から 10年 です。
1995年1月17日の「 阪神・淡路大震災(M7.3 死者6,437人、重軽傷者43,792人) 」から 31年 です。
米国とイスラエルによる対イラン攻撃(2月28日)から、今日で 3か月 (101日) が経過しました。
ホルムズ海峡封鎖問題の今…
この3か月間で、ホルムズ海峡封鎖問題は、当初は物流停止(実質的な完全封鎖)だったものが、タンカーの通航リスクの問題(不安定な情勢下での部分再開)へとシフトしてきています。
今も、海峡の原油輸送網の高リスク化によって、物理的な流れが細くなっている状態であることに変わりはありません。
そんな中、現地時間6月2日付のロイター報道で、先月5月末にアラブ首長国連邦(UAE)の国営石油会社・アブダビ国営石油(ADNOC)が、オマーンのソハール港経由でナフサ輸出を再開した、と報じられました。
従来とは異なり、ペルシャ湾内(ホルムズ海峡内側)から小型タンカー等でナフサを運び、オマーンのソハール沖で別のタンカーへ積み替えて送るという、実質的な代替輸送網が構築された形です。
この報道を受けて「供給が戻る」という市場の安心感が一気に広がり、3月に史上最高値の1300ドル/トンまで高騰したナフサ価格は、日本時間の6月3日(水曜日)に、788ドル/トンまで急落しました。
ただし、依然としてホルムズ海峡の通航リスクは残っており、紛争以前の600ドル台(約600〜650ドル/トン)の水準には戻っていません。
今回の代替輸送はあくまで応急的な措置とみられ、地政学リスクは依然として継続しています。それでも、異常な高騰を大きく押し戻したことは、世界経済にとって一定の朗報と言えるでしょう。
モノクロパッケージ化の企業リスク
…さて、ホルムズ海峡の裏側では、国民的スナック菓子ブランドのカルビー「ポテトチップス」のモノクロ印刷パッケージが大きな話題でした。なんとなく日本は平和だなと思えるニュースです。
中東情勢を背景に、包装用フィルムなどの原料となるナフサが不足し、ナフサ価格が高騰する「ナフサショック」が発生した影響が、食品や日用品にまで拡大したものです。
そのなかで、政府の「足りている」と、企業側の「足りてない」との認識に齟齬が生じ、ついには農水省がカルビーという私企業に異例ともいうべき聞き取り調査を行ったことが判明しました。「政府 vs 企業」の構図がマスコミの格好のネタとなってしまった訳です。
あれは「単なるコストダウンだ」とか、「いち企業が政府に喧嘩を売った」だとか、「奇をてらった宣伝マーケティング手法だ」とか、憶測も交じった様々な意見がテレビからSNSまで飛び交っていました。そして先週、ついにこのポテトチップスがスーパーの陳列棚に並びはじめることになります。
色とりどりな商品棚のなかで、白黒だけのパッケージは悪目立ちしますから、初見では“おっ!いいね”したくなる気持も理解できます。ですが、私の場合は、モノクロに、とてつもない忌避感(気持ち悪さ)のようなものを覚えました。
よく考えてみると、様々な色やフルカラーの写真などを使って「美味しさ」を伝える食品においては、わざわざ白黒にしてまで「不味そう」に見せるメリットはないのではないか、と思いました。私の感じたある種の忌避感からすると、むしろデメリットしか思いつきません。なぜでしょうか?
写真家でライターの澤村徹さんは、マーケティング上の話題性への言及について、ご自身のnoteで上手に言語化されていらっしゃいました。
《 暖色は食欲に直結するカラーであり、うすしおのオレンジ、のりしおの黄色、コンソメのベージュは、それぞれ記号としての役割を担っている。長らく採用されてきたこれらの配色は、スーパーやコンビニで遠目にもひと目で認識可能なほどに定着している。パッケージにおいて、カラーは“機能”として不可欠なものだ。ブランディングにからむ重要な要素である。 》
…と、そして、さすが専門家という明快な解説を加えていらっしゃいます。
《 写真における色とデザインにおける色は、その役割がそもそも違う。写真においてモノクロは表現手段だが、デザインにおけるモノクロは色という機能性を手放すことになる。 》
つまり、食品パッケージにおける色は「装飾ではなく機能」であり、色を失うことは、その重要な機能を捨てることに他ならない。だから、その機能性を単なる話題作りのために捨てる企業などあり得ないのではないか?――とマーケティング戦略説に一定の疑問を呈されていました。
私のデザイン上のモヤモヤ感は、澤村徹さんの解説でとてもスッキリ腑に落ちたのでした。
カルビーがモノクロパッケージ化を断行した経営意思決定のプロセスのなかには、もしかすると、国のエネルギー安全保障政策への啓発や、世間の話題性を狙ったマーケティング的な打算的な意図というのも多少はあったかもしれません。
でも、今回の本質は、カルビーが「供給不安への実務的対応」と説明したように、本当に生産現場の危機意識からのリスク管理だったのだろうと思いました。もし何も考えずにとった行動がこれだったら逆にすごいなと思います。
※note > モノクロパッケージは本質を示すのか?|澤村徹(2026年5月17日)
https://note.com/metalmickey/n/n69d049d47d85
ナフサは足りていたのか?
日本政府の説明は、(4か月分など当面は)ナフサは足りてる、と言うことで、マクロな視点での国家全体の供給総量では、原油やナフサは足りている認識でした。
きっと、それは正しいでしょう。
これに対して企業側は、サプライチェーンの末端というミクロな視点で物事を見ており、ナフサショックにより、いま必要な資材が、必要なタイミング・規格・価格で現場に入って来ないという製造ラインの経営リスクを感じていました。
また、これも事実でしょう。
さらに言えば、企業経営では、3年後・5年後・10年後といった中長期の事業継続を前提に意思決定が行われます。そのため、原料調達の不確実性が少しでもある時点で、将来の生産継続が担保できないというリスクが生じます。
だから、政府が示す「今年1年は持つ」程度の供給認識だけでは、企業の来年度以降の売上計画や投資判断を保証するものではありません。経営者が不透明な先行きを警戒するのは当然の対応と言えます。
そうした両者の感覚(レイヤー)のズレがあったと見るのが、今回のナフサ不足の白黒パッケージ騒動の本質だと思います。
経営者と政治家の視点(レイヤー)のズレを、報道が面白おかしくまくしたて、直火で加熱して焦がしちゃった結果、想像以上に政治・社会に波紋を投げてしまったのかもしれません。
あるタイミングで発表された企業行動が、結果的に政策批判になった現象(意図なき政治性)を感じます。面白いですね。
実際、いま、塗料メーカーでは50%以上の値上げと出荷制限が行われ、カゴメ、日清製粉ウェルナ、イオン、ローソン、イトーヨーカドー、セブンイレブンなどでもインク削減やら包装材など石油由来素材の最適化が行われています。
また、接着剤や溶剤不足を理由にTOTOやLIXILは新規受注停止などの制限を設けてもいると報道されてもいます。
これらの企業がやっていることは、基本的にカルビーと同じようなことなのですが、今回は、国民的スナック菓子のパッケージ変更のリリースの発表タイミングと、それが社会へ与えたインパクトが絶妙にかみ合ったこともあり、カルビーだけが狙い撃ちにされてしまいました。カルビーが気の毒なのか、ラッキーなのかは、もう少し先になるまで分らないかもしれません。
…さて、そもそも、原油を精製する過程で必ず生じるという“ナフサ”は、副産物なので単独では増産することができず、収率にも限界(歩留まりが悪いので余りやりたくない)があるそうです。
さらに、政府の補助金が入るガソリンは、高価格で、需要も大きいため、製油所にとってはガソリンを優先して生産する方が収益性に優れています。その結果として、ナフサの収率が抑えられてしまうのは、現在の社会構造では自明です。
ナフサは石油化学産業の出発原料で、需要も安定して大きいものの、供給側は燃料需要やエネルギー政策の影響を強く受けるという、非対称的な状況に置かれています。
こうしたなかでは、燃料が優先される一方で、石油化学原料であるナフサは国内生産だけでは需要を満たしきれず、結果として海外からの輸入に依存せざるを得ない状況が続いているように思います。
石油はあるのに、化学製品が足りないという一見矛盾した現象は、このような非対称な国家政策・制度に起因している側面にもあるようです。そのため、政策的な優先順位や供給の配分設計について、改めて検討する議論があってもよいのかもしれません。
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《 執筆者 》
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらいひろや)
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