おはようございます。
本日で、2011年3月11日の東日本大震災(M9.1)と福島第一原発事故から 14年(5380日)です。
2024年1月1日の令和6年能登半島地震(M7.6)から1年11ヶ月(700日)です。
1995年(平成7年)1月17日の阪神・淡路大震災(死者6,437人、重軽傷者43,792人)から 30年 です。
…さて、今日から師走に入ります。
明日12月2日(火曜日)は、暦の七十二候「橘始黄(たちばなはじめて きなり)」で、柚子やミカンなど柑橘類が黄色に色づき始める頃となり、冬が深まって参ります。
11月29日(土曜日)、皇居・乾通りの秋の一般公開が始まったそうで、都内の紅葉が見頃を迎えました。
残暑の影響が続くほどに落葉樹の紅葉は遅れるものだそうで、昨年に引き続いて暑かった今年も、全国的に紅葉シーズンが遅くなっているようです。
また、紅葉の鮮やかさ(葉の色素の合成と分解)も、こうした気温の上昇と深い関係があるので、気のせいならよいのですが、少しくすみがちな葉も年々増えていっているような気もします。
温暖化がこのまま進行した場合、鮮やかに色づく紅葉は、だんだん見られなくなってくるのかもしれませんね。
香港のタワーマンション火災
先週のメルマガでも火災の話をしましたが、「火災」のニュースが相次いでいます。
香港・大埔区のタワーマンション群「宏福苑」で、改修工事中の11月26日に大規模火災が発生しました。火は発生から3日間燃え続け、28日にようやく鎮火しました。
11月29日現在、死者は128人に上っており、身元不明の遺体を含めると行方不明者は200人を超えるとみられています。被害の全容は依然として明らかになっていません。
火災当日は乾燥した気象条件に加え風も強く、建物周囲の竹製足場や可燃性ネットが火元となりました。
香港の火災では、工事用の竹製足場(香港では伝統的に使われている)、可燃性の防護ネットが火元となったとありますが、それ以外にも、各階のエレベーターホールや住戸の窓・外壁の保護材に、非常に燃えやすくまた有毒ガスを発生させる発泡スチロールが使われていたりしました。
また、外壁に防火基準に適合しない防水シート・ビニール布が使われていたり、工事中の窓ガラス保護に燃えやすい発泡ウレタン板(フォームボード)を使用していたとする報道もあります。
さらに強風と「煙突効果」(狭い空間で熱気が急上昇し炎が急拡大する現象)が重なり、延焼は急速に広がったとされています。
香港政府は、工事用仮設資材の防火基準違反が被害拡大の大きな要因だとして、工事関係者を過失致死容疑などで逮捕しています。この火災は刑事事件になりました。
香港の火災は、建物の構造・規制の不備が被害拡大につながった可能性が高いとも考えられます。
※関連コラム
・都市大火(大分市佐賀関大規模火災)と飛び火のお話(2025.11.24)
・火の用心の季節に(2023.10.23)
日本のタワマンで起こり得る火災シナリオ
ここであえて、日本でのタワーマンション火災を想定してみます。
先月公開された東京消防庁「令和7年版 火災の実態(速報版)」によると、2024年の都内の高層マンション火災は249件ありました。
※東京消防庁 > 火災の実態
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/elib/kasaijittai/index.html
うち69件(28%)は11階以上の階から出火したそうで、ここ10年間で高層マンションが増えていることからも、高層階から出火した火災件数は増加傾向にあるのだそうです。(…と言っても、昨年比で4件増なだけ)
そして、219件(88%)と、そのほとんどが「小火(ぼや)」であり、残りの30件(12%)の全ても「部分焼」だったそうなので、延焼するほどの大きな火災はありませんでした。
火災の出火原因をみると、「ガステーブル等」が61件(24.5%)、「たばこ」が27件(10.8%)、「放火(疑い含む)」が17件(6.8%)、「コンセント」8件(3.2%)、「電気ストーブ」8件(3.2%)、「その他」128件(51.4%)です。
こうしてみると放火が多いようにも見えますが、「ガステーブル等」はガスコンロなど調理器具の火災であり、電気火災となる「コンセント」「電気ストーブ」を含め出火原因の30%以上という断トツ1位は「住戸からの失火」だろうな、と想像します。
尚、「小火(ぼや)」は、焼損がごく軽微(焼損床面積1平米未満または建物評価額の10%未満の損害)のことを言い、「部分焼」は建物の焼損額が火災前の評価額の20%未満、それ以上が「半焼(損害額20%以上)」「全焼(損害額70%以上、または補修して再使用できないもの)」という区分となります。
…さて、皆さん防火に努めましょう、と言っても、高層マンションのどこかの一室から失火したり、マンション共用部の例えば、ゴミ収集場所や駐車場などから放火や原因不明の不審火もあるやもしれません。
でも、消防の専門家やマンション管理コンサルタントなどの解説によると、建築基準の厳しい日本では耐火構造・防火区画が徹底されているため、今回の香港や、2017年の英ロンドンのタワマン火災(グレンフェル・タワー火災:死者72人 負傷者78人以上)のような、タワーマンション全体がまるごと火に包まれるような大規模延焼の可能性は低いとされています。
日本の消防法・建築基準法では、足場や防護ネットは難燃性素材の使用が義務化され、設計上でも、タワーマンション内の各住戸は耐火構造で区画されており、特別避難階段なども整備されているのだそうです。
各住戸が防火区画で独立しているので、火が隣室や上下階に広がりにくく、それ故に、もし火災となったとしても延焼は限定的になる、と考えられています。
そして、火災時にはエレベーターを使わず階段避難が原則となるものの、延焼リスクが低いので、生命の危険がない限りは在宅待機(在宅避難)が基本となるようです。
これには、高層階の場合、はしご車が届かないため、無理に外へ逃げるより自室で待機する方が安全という考えもあるようです。
東京消防庁や防災関連機関の解説では、高層マンション火災時には「安全なら自室に留まる(煙や炎が迫っていない限り、部屋に留まって消防の指示を待つ)」「煙が侵入したら速やかに階段で避難する」という行動が推奨されています。
煙の侵入があれば避難が必要なのは当然ですが、ほかにも、断水や停電などのライフラインの停止が伴った場合にも、避難が必要となると考えた方が良いでしょう。
そのため、日本の高層マンション火災では、延焼そのものよりも「煙による避難困難」「ライフライン停止(停電やエレベーター停止、給水ポンプ停止)」が最大のリスクとなると思われます。
日本のマンション火災でも避難時の混乱や煙による危険は残るため、住民は日頃から避難経路を確認し、初期消火や煙対策、備蓄の準備を徹底することが重要です。
マンションで毎年開催されている消防訓練に、ぜひ参加されるのが良いでしょう。
参加率の低いマンションの消防訓練
日本では、一定規模以上の建物において消防法により防火管理者の選任と消防計画の作成が義務付けられており、この計画に基づき、原則年1回以上の自衛消防訓練(避難訓練、消火訓練、通報訓練等)を行うことが定められています。
しかし、共同住宅(マンション)では、管理組合が自主的に防災訓練を年1回程度実施するケースが多いものの、その居住者の参加率は2割〜3割程度にとどまり、過半数が不参加という調査結果が出ています。
参加率が低い理由としては、訓練が「義務的で形だけ」と感じられて住民の関心が薄いこと、毎回内容が同じでマンネリ化していること、周知不足や近所づきあいの希薄さ、週末開催でも予定が合わない人が多いことなどが挙げられています。
もっとも、子どもがいる世帯では参加率が高めであったり、交流が活発なマンションほど参加率が上がる傾向が見られるのだそうで、工夫次第では、参加率を大幅に改善できる可能性もあるのだといいます。イベント併催で参加率が大幅に増えた事例や、VR体験を導入して参加世帯数が増えた事例も報告されているのだそうです。
通常、マンション居住者コミュニティー内の共助(協働)は、火災に限らず、災害時や困ったときの大きな助けとなります。
だからこそ、隣は何をする人ぞ…とならないためにも、消防訓練といったコミュニティー内の貴重なイベントの機会には積極的に参加して欲しいとは思います。
ですが、これがなかなか難しいようで、どの理事会や管理組合でも頭を悩ます問題のようです。
また悪いことに、消防訓練と言えば、昔は所轄の消防署員が現場に来て指導するケースが多かったものの、近年は人員不足やら業務効率化の影響もあって、現場参加よりも書類確認や助言に重点を置く傾向が強まっているそうです。
実際の訓練は、管理組合や自主防災会が主体で実施し、消防署は必要に応じて立ち会う形が一般化しているので、これからの消防訓練・防災訓練は、今まで以上に自主性が求められてきているといいます。今後はますます、住民らが楽しめるような工夫や企画・運営が必要とされるのでしょうね。
※公益財団法人マンション管理センター > マンション防災対策事例集(2025年)
https://www.mankan.or.jp/cms-sys/wp-content/uploads/2025/07/condominium_disaster_prevention_countermeasure.pdf
※消防庁 > 消防団を中核とした地域防災力の充実強化取組事例集(令和7年)
https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/torikumi-jirei/item/pdf/zireisyuu.pdf
※東京消防庁 > ネットで自衛消防訓練
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jiei_shoubou/about.html
法制度の問題だけなのか…
今回の香港もロンドンのタワマン火災(2017年)でも、出火原因は前者がタバコの不始末による引火で、後者が冷蔵庫という電気機器の故障でしたが、被害を拡大させた大きな要因は、どちらのケースとも、燃えやすい外壁材を使用していたために煙突効果で炎と煙が上層階へ一気に短時間で最上階まで延焼してしまった、という現地国家の建築規制(可燃材の使用が許容されていること)という。言うなれば制度的な欠陥・不備が一番の問題だったように思われます。
海外にも消防の規制はあるものの、日本のような具体的な材料規定ではなく、言葉は悪いですが、一定の性能を満たせばよい、といった割と抽象的な基準がまかり通っているのかなと思っています。
だから厳格な規制のある日本は安心か…と問われれば、果たしてどうなのでしょうか…。
日本でも、2005年の「姉歯事件(マンション耐震偽装問題)」や2014年の「横浜市都筑区マンション傾斜問題(旭化成建材による杭打ちデータ改竄事件)」に代表される違反建築事件がたびたび発覚しています。
いずれも社会的に大きな衝撃を与え、建築基準法や検査制度の見直しが行われてきましたが、こうした不正や欠陥問題は大なり小なり起こり得るもので、規制を厳しくしても決してゼロにはなりません。
今回の香港火災でも工事業者の不正が火災拡大の一因ともされ逮捕者も出ました。こうした「なくならない不正」に対しては、単なる規制強化だけでなく、厳罰化はもとより、施工過程の透明性を高める仕組み、第三者による独立監査、住民や利用者が情報にアクセスできる環境づくりなど、多層的な監視と参加を組み合わせることなどもリスク低減には有効かもしれません。
災害大国である日本では、地震など広域自然災害のリスクが当然高くなります。そのため、諸外国と比べてもより厳格に耐震・耐火の法制度や規制が運用されているのです。
今回は高層マンションの火災のみを取り上げましたが、現実的には大地震の直後に停電や出火が発生する可能性もあり、複合的な被害を想定する必要があります。こうした大規模災害の混乱下では、消防活動だけでなく長期間にわたるインフラの停滞や多様な機能不全が生じることも考慮しなければなりません。したがって、最終的に頼れるのは自分たちで家族を守る備え「自助」であり、次いでコミュニティー内の助け合いという「公助(協働)」であると言えるでしょう。
《 執筆者 》
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらいひろや)
「平井敬也の防災歳時記」をメールで読みませんか?
スタッフブログ「平井敬也の防災歳時記」は、2007年から配信している防災情報メルマガ「週刊防災格言」を元に作成しています。
防災士・平井敬也が災害に備える知識を、毎週月曜日に無料でお届け。
いざという時の安心を日常の中で少しずつ備えませんか?






