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岩山に立つ熊

おはようございます。

本日は 文化の日 の祝日です。

文化の日(11月3日)は、晴天率が高いことで知られ、“晴れの特異日”として知られています。

他の日に比べて晴れる確率が高く、三連休のお出かけにもぴったりの一日ですね。

※関連コラム
「文化の日」は晴れやすい「特異日」のお話(2024.11.04)

本日で、2011年3月11日の東日本大震災(M9.1)と福島第一原発事故から 14年(5352日)です。

2024年1月1日の令和6年能登半島地震(M7.6)から1年10ヶ月(672日)です。

1995年(平成7年)1月17日の阪神・淡路大震災(死者6,437人、重軽傷者43,792人)から 30年 です。

「楓蔦黄(もみじ つた きばむ)」

昨日(11月2日・日曜日)は七十二候「楓蔦黄(もみじ つた きばむ)」です。

秋の主役のカエデやツタ、モミジの葉が色づき始める頃、いよいよ紅葉の季節がやってきます。

また、同じく11月2日は、中秋の名月(十五夜)に次ぐ名月「十三夜(後の月)」でもありました。

古くから、少し欠けた月を愛でる風習があり、
《 十五夜に曇りあり、十三夜に曇りなし 》
という言い伝えも残されています。

曇りがちな十五夜に比べて、十三夜の夜は晴天に恵まれることが多く、美しい月を楽しめる日とされています。

今年は、
“晴れの特異日”として知られる文化の日(11月3日)と、
“十三夜に曇りなし”の十三夜が連続する年です。

晴れが続くこの時季、空を見上げるのが楽しみになりますね。

※関連コラム
「菊の花」と「十三夜」と「晴れ」のお話(2024.10.14)


熊の被害が激増している。

…話変わって、クマが話題です。

野生の熊の推定個体数が増加傾向にあり、九州(すでに絶滅)と四国(ほとんど熊はいない)を除くすべての地域でその分布が拡大しているのだといいます。

クマの個体数は40年前と比べ約2倍に増えたそうで、また、山間部に生息する野生動物と、都市部の人との緩衝地帯の役割を担う“里山”が減ったことから、以前より、人の生活圏に野生動物が迷い込みやすくなった。

それに加えて、シカ、イノシシ、サル、タヌキやリスなどといった、クマと同じドングリなど木の実を食べる野生動物も増えていて、山では秋の味覚の奪い合いも発生しているのだとかで、食べ物が足りなくなった、と考えられています。

クマが人の生活圏に近づいてきており、標高の低い地域や都市部でも目撃されるようになってきた結果、東日本を中心に多くの地域で人里に現れたクマによる人身被害が増大しています。

今年の死者数は過去最多となる12人(岩手県5人、秋田県3人、北海道2人、宮城県1人、長野県1人)を数え、重軽傷者103人(2025年10月30日現在)という異常事態となっています。

死者のこれまでの最多記録は2023年の6人だそうですから、今年は10月末時点でその2倍を超えているのです。

※環境省 > クマ類による人身被害について [速報値]
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/injury-qe.pdf

※環境省 > クマ被害対策等について(2025年10月30日)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kumahigai_taisaku/dai1/shiryo1.pdf

※関連コラム
無病息災を願うお粥「臘八粥」のお話:七十二候「熊蟄穴」(2024.12.09)


政府も手をこまねいていた訳でもない

10月26日、相次ぐ熊被害で「県民の命が脅かされる異常事態である」として、秋田県の鈴木健太知事が自衛隊派遣の意向をInstagramで表明しました。その後、防衛省を訪問した知事は小泉進次郎防衛相に自衛隊派遣を正式要請します。

これに前後して【子供が死なないと(政府・政治は)動かないのか?】というキーワードがSNS上で話題となりました。

時系列を見ると、政府も手をこまねいていた訳でもないようです。

昨年2024年4月には、環境省、農林水産省、林野庁、警察庁、国土交通省が協力してクマ類による被害を抑制するための「クマ被害対策施策パッケージ」が策定されており、指定管理鳥獣対策事業の交付金に「クマ対策」が追加されるなどの動きがありました。

今年2025年4月には、駆除のため、人の生活圏での猟銃の発砲を許可する法律の改正(人の日常生活圏における緊急銃猟を可能とする鳥獣保護管理法改正)が成立し、9月から施行されてもいます。

そして、先日の2025年10月30日(木曜日)、首相官邸で「第1回クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」が開催されました。
このなかで木原内閣官房長官は『クマ被害対策施策パッケージ(バージョン2か?)』を11月中旬までに政府で取りまとめ、より実効的な対策をしていく、と述べています。


子供の“死”と政治

さて、子供が死なないと(政府・政治は)動かないのか?
――は、昔から巷間でよく話題になります。

古くは、「児童福祉法(1947年)」が有名です。

戦後すぐの頃(1946年)に、東京の上野駅周辺で何人もの子供が餓死・凍死したことが報道されると、戦後に親を失った戦災孤児・浮浪児が急増した事実が国民共通の課題となり、翌年の「児童福祉法」の制定につながったとされています。
法施行により、児童相談所・養護施設・保護制度が法的に整備されることなりました。

暴漢の浸入により児童8人が刺殺された池田小事件(2001年)では、学校の安全性に対する不安が高まって、全国の学校施設への出入りの管理徹底やオートロック導入など安全システム設計が見直される契機となりました。

災害対策でも、震災の後に学校の耐震化が全国で加速する事例は多く、木造から鉄筋コンクリート造の小学校が増えたのも、大正時代の関東大震災(1923年)で、児童生徒の被害が多かったことが発端とされます。

近年でも、2018年6月18日に発生した「大阪府北部地震」の際に、通学中の小学4年生の女子児童が倒壊したブロック塀の下敷きになって死亡した事故を契機に、全国の通学路や学校施設のブロック塀の安全点検と規制強化が進めらました。

ほかにも、割と交通量の多い幹線道路などで、朝8時30分まで車両進入禁止となるといった、謎の時間規制も全国で多いと思われますが、現地では本当かどうか誰も知らないのに関わらず、その昔にこの道路で児童生徒が車に轢かれ亡くなった、といった“子供を理由とした規制の噂(都市伝説)”があったりするものです。


人柱(ひとばしら)、人身御供(ひとみごくう)

これらを民俗学的に考えてみます。

疫病、地震、水害、戦争、飢饉など、対抗手段のない災厄に直面したとき、古代の祭祀や鎮魂儀礼では、神や自然の怒りを鎮めるために生贄(いけにえ)が捧げられてきました。

特に子供や若い女性を犠牲にして災厄や水害を鎮める風習は、一般に「人身御供」あるいは「人柱」と呼ばれ、神話的な祭祀・鎮魂儀礼の一形態として、日本を含む世界各地に伝承されています。

ヤマタノオロチの神話では、毎年娘を生贄として捧げていた家族を、スサノオが怪物を退治することで生贄になる娘を救ったと語られ、『日本書紀』には、仁徳天皇の時代に河川工事の成功を祈って、人身御供が捧げられそうになった逸話も記されています。

似たような逸話はいくつもあり、岩見重太郎なる豪傑が、人身御供の娘を救うため、自らその身代わりとなって妖怪(大蛇など)を退治するといった講談が日本各地に伝わっています。

福井県九頭竜川の、洪水を鎮めるため女性が生きたまま埋められたとされる人柱伝承や、大阪の野里住吉神社の奇祭「一夜官女祭り」は、河川の氾濫を鎮めるため、処女を捧げたという言い伝えです。

海外でも「人身御供」や「人柱」に類する風習は広く存在し、特にメソアメリカ文明(アステカ・マヤ)や古代中国・インド・ギリシャなどで、災厄や建造物の安定を祈願して人間を犠牲にする儀礼が行われていました。

古代ギリシャのイフィゲニア伝説では、トロイ遠征前に、アガメムノンが若い娘イフィゲニアを神に捧げて航海の安全を祈願したと伝えられます。

これら象徴的犠牲として乳幼児や若い女性が選ばれるのには、きっと、その深層に、人の感情の鎮静装置(感情のはけ口)としての機能があるのだと思います。

子供や若い女性らは「穢れなき存在」「神に近い存在」とされ、神への供物として最も効果があると信じられていたり、社会的に抵抗できない存在であるため、人々の感情的な共鳴と儀式的な正当化が容易だったこともあるとされます。

つまり、対抗手段のない災害や社会不安に直面したとき、象徴的な犠牲を捧げることで、神や自然の怒りを鎮め、将来への住民の不安や怒りを収めようとする儀式には、政治や宗教的な意味があったのでしょう。

このような風習が日本だけでなく世界各地に見られることから、民俗学的に、子供の犠牲が人々の感情を収束させる象徴的な装置として機能していたことも伺えます。


リスクコミュニケーション「感情の政治理論(Politics of Emotion)」

社会心理学では「Politics of Emotion(感情の政治)」という概念をイギリスの文化論者サラ・アーメッド(Sara Ahmed)さんが、2004年の著書『The Cultural Politics of Emotion』で提唱しました。

このなかで、特に子供や弱者の死が「政策の正当性を高める触媒」として機能する、としています。

人々の「悲しみ」「怒り」「恐怖」といった感情は、ただの気持ちでなく、社会のルールや集団の境界線を作り出す力を持っている、というよなことが書かれています。

“Emotions do things, and they align individuals with communities — or bodily space with social space — through the very intensity of their attachments.”
(Sara Ahmed,”The Cultural Politics of Emotion”, 2004, p119)

《 感情は何らかを起す。
感情は、個人を共同体と結びつけたり、
身体的空間と社会的空間を結びつけたりする。
その結びつきは、感情の強度により生じる。》

つまり、子供が事故で亡くなる「悲しみ」や「怒り」が共有されると、人々は「こんなことは二度と起こしてはいけない」「この問題に立ち向かうべきだ」と感じるようになり、結果として、法改正や安全対策が進む、という理論です。

また、犯罪といった「恐怖」が広がると、「犯罪者が恐いので、私たち仲間を守るために、脅威(の対象)を制限しよう」という動きが生まれる、のだそうです。

そして、この境界は、感情で、強くなったり、変化したりするといいます。

こうした“感情”によって形成される世論が、健全な方向へ政策を後押しするのであれば、何ら問題はありません。

しかし、世論を誘導する宣伝手法は「プロパガンダ(propaganda)」や「世論操作」と呼ばれ、群衆の感情を煽って行動を促す技術は「アジテーション(agitation)」とされています。

とりわけ、紛争など相反する政治的利害が絡む場面では、こうした手法がマスメディアを通じて頻繁に政治利用されているのが現実です。

人は理屈よりも感情で動く存在なのだと、改めて痛感させられますね。

※amazon書籍 > Sara Ahmed“Cultural Politics of Emotion”
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…最後に余談ですが、

九州では野生のクマはすでに「絶滅」していたのですね。
今回、環境省の資料を読んで初めて知り、正直驚きました。
そう考えると、クマやイノシシ、サル、シカといった、比較的身近にいてもおかしくない野生動物に、そもそも全く縁がない、見たこともないなんて地域で暮らしている人も、いらっしゃるのかもしれません。

大きな野生動物との思いがけない遭遇は、たいていは恐怖以外の何ものでもありません。
どうか“平和ボケ”せず、注意を心がけていただければと思います。



《 執筆者 》
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらいひろや)

平井敬也

防災士(日本防災士機構登録No.040075)、日本人間工学会会員。
1970(昭和45)年、東京都世田谷区生まれ。神奈川県横浜市在住。日本大学大学院で安全工学・人間工学を専攻。大学院修了後、大手ゲーム製造メーカーに入社、企画開発、PL(製造物責任法)担当や品質管理(ISO9000)に携わる。2001(平成13)年、災害用長期備蓄食〈サバイバル®フーズ〉の輸入卸元、株式会社セイエンタプライズ取締役に就任。阪神淡路大震災で家族が神戸で罹災、日常の防災意識や危機管理の啓蒙普及を企図した無料メールマガジン『週刊防災格言』を07年よりスタート。毎週月曜日に防災格言を発信し続け2万人の読者を得ている。
【書籍】天災人災格言集―災害はあなたにもやってくる! ¥1,650(税込)




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