おはようございます。
本日で、2011年3月11日の東日本大震災(M9.1)と福島第一原発事故から 14年(5219日)です。
2024年1月1日の令和6年能登半島地震(M7.6)から1年5か月(539日)です。
平成7年(1995年)1月17日の阪神・淡路大震災(死者6,437人、重軽傷者43,792人)から 30年 です。
異例の6月猛暑でした。
先週は毎日のように暑い日が続きました。
先週、一時、梅雨前線が消えてなくなり、太平洋高気圧とチベット高気圧の二つが列島を覆ったことから、まるで梅雨が明けたような晴天が続き、全国的に真夏並みの厳しい暑さが続くことになりました。
夜間も気温が下がりにくく、熱帯夜(夜間の気温25℃以上)となった地域も多かったようで、エアコンをつけずに寝ている人が熱中症で亡くなるケースもみられました。
今週は、本州付近に再び梅雨前線が停滞する見込みで、西日本から北日本を中心に梅雨空が戻りそうです。
広い範囲で、曇りや雨となるとのことで、先週のような暑さはいったん落ち着きそうですが、週間予報では30℃前後の日が続くとのことで、湿度が高く蒸し暑い日となりそうです。
引き続き熱中症対策に心掛けください。
さて、
昨日6月22日(日曜日)午後、
気象庁は「小笠原近海で発達中の熱帯低気圧が“台風2号”になる見込み」と発表しました。
現時点では、台風になっても、太平洋高気圧の縁を北上しながら勢力を落とす見通しだそうで、6月25日(水曜日)頃には伊豆諸島付近まで接近しますが、その頃には熱帯低気圧に変わる予測となっております。
ただ、日本付近に停滞する梅雨前線などとの影響から、東日本で雨雲が発達しやすくなる可能性もあるそうです。
今後の動きにご注意ください。
“予知夢”をもとにした災害預言が話題です。
今年7月5日、もしくは、7月に大災害(大災難)が日本で起こる…
といった噂がネット上などで広がり、気象庁をはじめ複数メディアも「科学的根拠のない情報」や「偽情報(フェイクニュース)」だとして取り上げています。
この噂を端緒にして、香港では日本旅行のキャンセルが相次ぎ、香港の旅行会社は日本への旅行を控える動きとなり、香港で日本便の減便や欠航が発生、結果的に日本に来る旅行客が激減してしまうといった影響が生じました。
単なる噂だったものが、SNSなどで拡散された結果、社会不安を引き起こし、経済活動にも影響を及ぼした、ということがニュースとなった訳です。
これを受けて、
6月13日(金曜日)、気象庁の野村竜一長官が記者会見で、現在の科学では地震の日時などを特定して予知をすることは不可能とした上で「デマと考えられるので心配する必要は一切ない」と、この種の噂を信じないよう呼びかけました。
6月18日(水曜日)には、偽情報や誤情報の拡散を防ぐための非営利ファクトチェック機関「日本ファクトチェックセンター(JFC)」も、「根拠不明の情報」として日本語と英語の記事を公表しています。
※2025年7月に日本で大地震が起きる? 日付特定する地震予測は不可能【ファクトチェック】
・https://www.factcheckcenter.jp/fact-check/disasters/no-evidence-major-earthquake-in-japan-july2025/
・https://www.factcheckcenter.jp/english/disasters/eng-earthquake-strike-japan-july2025-no-scientific-basis/
噂の中心的な情報源となったのは、たつき諒(竜樹諒)さんの「私が見た未来(完全版)」という予知夢について記された漫画本で、香港ではベストセラーとなっているそうで、AP通信など海外メディアでは、この話題は、今年(2025年)初めに香港を中心にソーシャルメディアを通じて広がり始めた、と紹介されています。
それ以外も、香港や台湾の著名な風水師らが「2025年7月に日本で地震が起きる」と発言したり、YouTubeに日本語や中国語で、この噂に関する関連動画が4月末時点で1,400本以上(再生回数1億回超)も増えるなどして、こうした複数の要因が重なって、噂がどんどん拡散してしまったそうです。
一般に、潜在的な不安があるところで流言は広がりやすい、と考えられています。
今回の潜在的な不安とは、例えば、地震は予知できないのに、現実では被害地震が身のまわりで発生している、などの漠然とした人の不安でしょうか。
もともと、地震や津波、台風、洪水などの災害については、不安をあおる偽情報や根拠のない情報が広まりやすくなる傾向が昔から知られていました。
人類史でも、この種のデマは、災害の発生前には“予知”という形で広まり、災害の発生直後は“天譴思想”や“世直し観”などとして広まったりしたようです。
今回の地震の噂について、詳しくはファクトチェックをお読みください。
いずれにしても、
大きな被害が想定されている南海トラフ巨大地震などの発生確率が高まった、と考えられているのは科学的事実で、その発生が“いつ頃か?”が予測できない、というのが現在の状況です。
近い将来に確実に発生するだろうとされる首都直下地震や南海トラフ巨大地震は、10年後、30年後なのか、はたまた50年後なのかは分かりません。
フェイクニュースがあろうが、なかろうが、いつか起こる災害を知っていて、何の対策も講じないのは問題ですから、それらの既知のリスクに対し、平和な日常である今から、備えておくに越したことはありません。
フェイクニュースがのさばる理由
脳研究者の池谷裕二さんのコラム「フェイクニュースがのさばる理由」(池谷裕二著「すごい科学論文」(新潮社 2025年))によると、
人は、オンライン検索をすればするほど誤情報(フェイクニュース)を信じてしまう、そうです。
2023年末にネイチャー誌に掲載された論文で、セントラルフロリダ大学のアスレット博士らが、のべ1万人を超えるアメリカ人で実験したところ、
オンラインで検索すると、その情報の信憑性に対する信頼性が誤って高まる可能性があることが示唆され、また、人が検索した情報の信憑性への確信度は、その情報が曖昧であるほど増幅することも分かったそうです。
多くの場合、誤情報は「意図的に作られる」ことから、広く注目を集めるためにキーワードで上位に検索されるように様々な工夫がされて発信される一方で、正しい情報を発信する良心的な人は、そのような検索クエリ対策をしていないので、結果として《
悪報は良報を駆逐する 》ということになる、と分析されています。
薬学の専門家である池谷裕二さんは、自分の専門分野では、普段から論文や原著をあたってファクトチェックする習慣が身についているものの、自分の専門外の情報については、つい安易なオンライン検索に頼ってしまうため、コラムでは、
《 この態度こそがデジタルリテラシ―の欠如 》
であり
《 本来は専門外の知識こそ、しかるべき文献にあたるべきでした 》
と締めくくられておられます。確かに、自分にとってどうでもよい些細なことほど安易にネット検索で終わらせてしまう傾向がありますよね。気を付けましょう。
※ネイチャーの論文
・Online searches to evaluate
misinformation can increase its perceived veracity,Kevin Aslett, Nature
volume
625, pages548–556 (2024)
予知夢と言えば…
神や魂の存在をどう考え、死後や人生の意味をどこに求めるかといった宗教観や倫理・哲学的な思想があるように、災害や事故についての予知や預言は、それが許される許容限度というのも当然あるのでしょうが、私は、世の中にそういうのはあった方が良いのだろうなと思います。むしろ、あった方が、人の心の安寧に役立つと思うのです。
個人的に、私は民俗学が好きですし、出口王仁三郎は歴史的な偉人と思っていますし、以前、弊社講座(麹町アカデミア)で登壇頂いた月刊ムーの三上編集長とお話した際にはずいぶんと興奮したものです。
SFや神秘的事象の多くは、科学とオカルトの境界線上にあるため、多くの人も興味を覚えやすい話題なのだろうな、と考えます。だからこそ、オカルトの話題が嫌いな人は少ない、のでしょう。
これも限度があるものの、まだ科学では分らない部分があるのですから、多くのものごとをただ単に非科学的と切り捨ててよいものではありません。
※関連記事
・出口王仁三郎の随筆「天災と人災」
さて、
不吉な夢をみて乗るはずだった飛行機に乗らなかったら、その飛行機は墜落して、結果的に命が助かった…なんて虫の知らせと言うべき「予知夢」「予感」の話を聞きますが、
一般的には、これらは、単なる偶然か、事後的な記憶の再構成(記憶バイアス)による勘違いと考えられているようです。
記憶バイアスというのは、私たちが過去の出来事を思い出すときに、実際とは異なる形で記憶が歪められてしまう心理的傾向「認知バイアス(思考の偏り)」の一種で、無意識のうちに起こるとされます。
ちょっとした外部刺激やら、思い込みが、割と簡単に、人の記憶を書き換えてしまうということですね。
心理学や脳科学では、人間の記憶はとてもあいまいで、不正確なものとされています。
人の記憶はビデオのように「再生」しているのではなく、断片的な情報をその都度「再構成」していることが、脳科学的には分かってきました。
そのため、記憶は、人の言葉や、自分の感情に影響されやすく、思い出すたびに記憶が変化することも珍しくない、のだそうです。
ところが、この記憶のメカニズムは人が生きるためには必要なことでもある、といいます。
災害や事故の強い恐怖や衝撃的な体験で、心が深く傷つき、その影響が長期間にわたって続く心の病「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」が知られていますが、人はつらい記憶を薄めたり、都合のよい形に変えたりすることで、心の安定を保っているのだそうです。
つまり、記憶のあいまいさは「弱点」であると同時に、人が活きるのに必要な「機能」でもあるのです。
※関連記事
・PTSDを定義した精神科医カーディナーのお話
では、予知夢について、簡単に考えてみましょう。
未来の出来事を夢の中であらかじめ見る現象を「予知夢」とすると、残念ながら、科学的にはその存在は証明されていません。
ただ、心理学的な観点から、精神科医のフロイト(1856〜1939)とユング(1875〜1961)は人の夢を分析しました。
フロイトは夢を「抑圧された無意識の願望が変形して現れたもの」と捉えて、夢は過去の体験や欲望を象徴的に表現したものであって、未来を予知するものではない、と考えました。
一方、ユングは、彼自身が「予知夢」を体験したこともあって、この種のことに寛容だったと言われています。
ユングは、夢を「個人的無意識と集合的無意識の表現」と見なし、夢の中に現れる“象徴”を重視して、予知夢のような現象も、未来を的確に予測する訳ではないが、無意識が現在の状況から可能性のある未来像を描き出すのかも…と、一部を肯定的に捉えていたようです。
そして、ユングは、因果関係では説明できないが、意味のある偶然の一致を指す概念を「共時性(Synchronicity)」と定義しました。
例えば、「ある人のことを考えていたら、その人から突然連絡が来た」など、ちょっと不思議な体験を指します。
何となく不安を感じていたら、家族に事故が起きた…という嫌な予感を覚えると、実際に悪いことが起きた、という体験のことを日本語で「虫の知らせ」と呼んでいますが、これは、ユングの言う「共時性」と非常に近い概念のように見受けられます。
1990年代になると、ノーベル物理学賞を受賞したイギリスの理論物理学者のロジャー・ペンローズと麻酔科医のスチュアート・ハメロフという人が、コンピュータのような決まった手順(アルゴリズムという)では説明できない脳内で起る「直感」や「ひらめき」「気付き」といった人間の非アルゴリズム的な意識を「量子力学的」な現象で説明できるのでは、と考え「量子意識理論(Orch-OR理論:組織化された客観的収縮理論)」が提唱されました。
いわゆる「量子脳理論」です。
それ以降、脳内の情報処理が量子的である可能性や、意識の本質に迫る研究が続けられており、最近は、あくまでも仮説ですが、こうした人間の意識や無意識が、空間を超えて“つながっている”可能性を量子理論の不思議な性質を用いて説明しようとする向きもあるようです。
2023年、ソルボンヌ大学やパリ脳研究所らの研究チームが、ネイチャー・ニューロサイエンス誌に面白い研究を発表しました。それは「睡眠中でも人は外界の言葉を理解し、反応できる意識状態が存在する」というものです。
※論文(Nature Neuroscience)
・Behavioral and brain responses to
verbal stimuli reveal transient periods of cognitive
integration of the external world during sleep
今までは、人は、深い眠りのノンレム睡眠と、夢を見ているときの浅いレム睡眠(覚醒時に近い)を繰り返すので、身体と脳の休憩でそれぞれ異なる役割を担っていると思われていましたが、この実験では、どちらの睡眠でも一様に、被験者が外界の言葉にきちんと反応を示したのだそうです。
一般的に、睡眠時は無意識だと考えられていましたが、睡眠中にも意識が開いている、と考えると、人の可能性が広がりますね。
なんだかニュータイプ(機動戦士ガンダム)のような、人の可能性を想像します。ワクワクしますね。
◆執筆者
SEI SHOP(セイショップ)総合プロデューサー
平井敬也(ひらいひろや)
防災士(日本防災士機構登録No.040075)、日本人間工学会会員。
1970(昭和45)年、東京都世田谷区生まれ。神奈川県横浜市在住。日本大学大学院で安全工学・人間工学を専攻。大学院修了後、大手ゲーム製造メーカーに入社、企画開発、PL(製造物責任法)担当や品質管理(ISO9000)に携わる。2001(平成13)年、災害用長期備蓄食〈サバイバル®フーズ〉の輸入卸元、株式会社セイエンタプライズ取締役に就任。阪神淡路大震災で家族が神戸で罹災、日常の防災意識や危機管理の啓蒙普及を企図した無料メールマガジン『週刊防災格言』を07年よりスタート。毎週月曜日に防災格言を発信し続け2万人の読者を得ている。
【書籍】天災人災格言集―災害はあなたにもやってくる! ¥1,650(税込)
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