サバイバルフーズの環境負荷を考える ~缶入りフリーズドライ食品/長期保存食/サバイバルフーズのLCA分析及びCO2排出量比較~
Abstract(要旨)
本研究では、災害備蓄用非常食の環境負荷について、製造、包装、輸送、および更新回数を含む簡易ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から比較検討(※注記1)を行った。対象として、25年保存可能な缶入りフリーズドライ食品「サバイバルフーズ」と、5年および7年保存のアルファ化米(パウチ包装)を取り上げ、カロリーを基準とした「公平食」条件により比較した。
単回調達においては、軽量かつ高エネルギー密度のパウチ製品が輸送重量およびCO2排出量で有利であり、缶入り製品は包装重量の増加により不利となることが確認された。また、フリーズドライ製法は他の乾燥手法と比較して製造時のCO2排出量が大きい傾向を示した。一方で、長期備蓄という実運用条件(25年間の継続維持)を考慮すると、保存期間の違いに起因する更新回数の差が環境負荷に大きく影響することが明らかとなった。すなわち、25年保存品は1回の調達で済むのに対し、5年保存品は5回、7年保存品は4回の更新が必要であり、累積輸送負荷および包装材使用量は大幅に増加する。
さらに、包装材の特性については、アルミ多層パウチは軽量性により製造段階の環境負荷が低い一方で、複合素材であるためリサイクル性に課題があり、国内での実効回収率は不透明である。これに対し、スチール缶は単位重量当たりの製造負荷は大きいものの、日本における高いリサイクル率(約94%)により、長期的な残存環境負荷の低減が期待できる。
以上より、非常食の環境負荷評価は単回の製品性能だけでなく、「保存期間」「更新回数」「包装材の循環性」を含めた長期運用視点で評価する必要があることが示された。特に長期備蓄用途においては、更新頻度の低減効果により、25年保存の缶入り食品は総合的なLCAで優位性を持つ可能性が高いと結論づけられる。
第1章「加工方法別の製造段階におけるCO2排出量比較」
フリーズドライ製法とその他の加工方法との炭素排出量を、使用するエネルギー条件を同じに考えて単純に比較した場合、以下の通りとなる。
| 方法/製品例 | 合計(gCO2e/kg製品) |
|---|---|
| フリーズドライ(野菜) | 12505 |
| 熱風乾燥(野菜) | 5285 |
| 冷凍(野菜) | 705 |
| 缶詰(野菜) | 2586 |
| エアードライ(α化米) | 4020 |
| スプレードライ(全粉乳) | 8429 |
- 公表されている食品加工エネルギー原単位、含水率データ、乾燥・冷凍・加熱工程におけるエネルギー消費量等を基に、完成製品重量1kgあたりの製造段階CFP(Carbon Footprint of Products)として簡易試算した。
- 原料生産、輸送、販売、廃棄段階は含まず、主として加工工程における電力・熱エネルギー由来のCO2排出量を対象としている。
- 電力および熱源の排出係数は共通条件で設定し、加工方式間の比較を目的として算出した。
フリーズドライ製法は、食品を凍結した後、真空状態で水分を昇華除去するため、
・凍結エネルギー
・真空維持エネルギー
・長時間乾燥エネルギー
を必要とする。そのため、一般的な熱風乾燥やα化米のエアードライ製法に比べ、製造段階でのエネルギー消費量が大きくなる傾向がある。
また、本比較は「完成製品重量あたり」で評価している点にも注意が必要である。乾燥食品は水分を大幅に除去して軽量化されるため、乾燥後1kgを製造するには大量の原料と水分除去工程を必要とする。例えば、生野菜の水分含有量を90%と仮定すると重量10kgの生野菜は水分除去後1kgの乾燥状態となる。(実際には水分を100%除去することは難しく、加工方法により水分除去率は大きく異なるが、高度なフリーズドライ加工を行うサバイバルフーズでは最大98%の水分除去率で製造されている。)このため、乾燥食品系の加工方法は、重量基準ではCO2排出量が相対的に大きく表示されやすい特徴を持つ。
その結果、フリーズドライ製法は、アルファ化米や熱風乾燥に比較して、概ね2〜3倍程度のCO2排出量となることが分かる。
一方で、この数値はあくまで「製造段階」に限定した比較であり、
・保存期間
・更新回数
・輸送効率
・廃棄頻度
・実際の備蓄運用年数
などを含めたライフサイクル全体の評価では結果が変化する可能性がある。特に長期保存型非常食では、保存年数の違いによって更新・廃棄回数が大きく異なるため、単純な重量基準比較だけでは実使用時の環境負荷を十分に評価できない点に留意が必要となる。そのため本研究では、各製品と比較検討するため公平な比較条件を設定した。
第2章「本研究の比較条件と評価指標(公平食の設定)」
まず、本調査の「公平化」は、次の考え方に基づく。
“1缶10食入り”の製品 と “1袋1食”の製品をそのまま食数で比べるのは不公平である。サバイバルフーズの代表例として、現在の公式サイトにある「洋風とり雑炊+洋風えび雑炊」60食セットを使うと、総重量は約4.5kg/60食、箱は約49×33×20cmで、各缶の内容量はどちらも408gで、熱量はとり雑炊が378kcal/100g、えび雑炊が409kcal/100gである。対して、5年保存の一般的なアルファ化米の白飯は100g・366kcal・50袋/6.15kg・422×307×198mm、7年保存の一般的なアルファ化米の白ご飯は100g・387kcal・50袋/約6.5kg・450×313×200mmである。
この前提だと、サバイバルフーズ雑炊系の平均は1缶あたり約1,605kcal、つまり表示1食あたり約160.5kcalとなる。一方で、アルファ化米の1袋は5年品で366kcal、7年品で387kcalなので、表示上の「1食」は同じではない。そこで今回は、1食=370kcalを基準にして、1000公平食 = 370,000kcalを同一サービス量として比較することにした。
第3章「保存期間と更新回数の影響(長期備蓄の前提)」
25年保存のサバイバルフーズを一般的な非常食である5年保存品、7年保存品の非常食と比較してみると、25年間の更新回数はそれぞれ1回(25年保存品)、5回(5年保存品)、4回(7年保存品)となる。したがって、以下の考察が可能となる。輸送距離を同じと考え、1食で比較せず、1食カロリーを揃える事で公平な比較が可能である。
- 第1に、単発の500km輸送だけを見るなら、同じエネルギー量を運ぶ条件では5年保存・7年保存のアルファ化米の方が軽く、輸送CO2も小さい。
- 第2に、25年間ずっと同じ備蓄量を維持する条件にすると、更新回数の差でサバイバルフーズが逆転し、累積の輸送CO2と累積の梱包重量は最小になる。
第4章「単回調達における輸送・梱包負荷の比較」
梱包重量の考え方は、
梱包重量 = ケース総重量 −
内容物重量
である。
これで逆算すると、サバイバルフーズの雑炊セットは60食あたり2.052kg、5年保存アルファ化米は50食あたり1.15kg、7年保存アルファ化米は50食あたり1.5kgが梱包重量となる。つまり、1回の調達だけをみれば、スチール缶入りのサバイバルフーズは梱包が重い、というのがまず出発点となる。
輸送CO2(*注記2)は、国の共同ガイドラインの改良トンキロ法(*出典1)の例として、営業用・軽油・最大積載量10,000~12,000kg・2025基準の0.0463L/tkmを使い、同じガイドラインの軽油38.0GJ/kl、炭素排出係数0.0188tC/GJから0.121kg-CO2/tkmに換算して計算した。ここは数値例であり、3製品に同じ原単位を当てる限り、相対順位は変わらない。
この前提で、1000公平食(=370,000kcal)を1回だけ調達して500kmの距離を陸送するとなると、次の結果となる。
サバイバルフーズは230.5缶必要で、総輸送重量172.8kg、そのうち梱包重量78.8kg、500km輸送CO₂は10.48kg- CO₂である。
5年保存アルファ化米は1010.9袋必要で、総輸送重量124.3kg、梱包重量23.3kg、輸送CO₂は7.54kg- CO₂である。
7年保存アルファ化米は956.1袋必要で、総輸送重量124.3kg、梱包重量28.7kg、輸送CO₂は7.54㎏-CO₂である。
| サバイバルフーズ | 梱包重量78.8kg、500km輸送CO2は10.48kg-CO2 |
| 5年保存アルファ化米 | 梱包重量23.3kg、輸送CO2は7.54kg-CO2 |
| 7年保存アルファ化米 | 梱包重量28.7kg、輸送CO2は7.54kg-CO2 |
つまり、単回の公平比較ではアルファ化米が有利であった。サバイバルフーズは、同じ370,000kcalを運ぶのに、5年保存・7年保存アルファ化米より約39%重く、500km輸送CO2でもアルファ化米の方が約28%少ない。これは、雑炊系サバイバルフーズがフリーズドライで重量が軽い一方、1表示食あたりのエネルギーが低く、しかも缶の比率が大きいためとなる。
第5章「25年間維持条件における累積負荷の比較」
ここからが本題となる。
25年間、同じ備蓄量を切らさず維持するという条件にすると、25年保存は1回調達、7年保存は4回調達、5年保存は5回調達になる。すると25年間の累積では、サバイバルフーズは総輸送重量172.8kg、累積梱包重量78.8kg、累積輸送CO₂ 10.48kg- CO₂。7年保存アルファ化米は総輸送重量497.2kg、累積梱包重量114.7kg、累積輸送 CO₂ 30.15kg- CO₂。 5年保存アルファ化米は総輸送重量621.7kg、累積梱包重量116.3kg、累積輸送 CO₂ 37.70kg- CO₂になる。
| サバイバルフーズ | 累積梱包重量78.8kg、累積輸送 CO2 10.48kg-CO2 |
| 7年保存アルファ化米 | 累積梱包重量114.7kg、累積輸送 CO2 30.15kg-CO2 |
| 5年保存アルファ化米 | 累積梱包重量116.3kg、累積輸送 CO2 37.70kg-CO2 |
上記から、25年スパンの簡易LCA(梱包材+輸送+更新回数)ではサバイバルフーズが優位となった。
累積輸送
CO2は、サバイバルフーズが7年保存アルファ化米より約65%少なく、5年保存アルファ化米より約72%少ない。累積梱包重量でも、サバイバルフーズは7年品より約31%少なく、5年品より約32%少ない。
したがって、まとめると、以下の通りとなる。
- 同じカロリーを1回だけ運ぶなら、アルファ化米の方が環境負荷は低い。
- しかし、25年間備蓄を維持するという現実の運用まで入れると、更新回数の差が非常に大きく、サバイバルフーズの方が累積LCAで有利になる。
第6章「包装材の特性比較(スチール缶と多層パウチ)」
そして、今度は包装容器の材質を確認する。サバイバルフーズは非常食としては珍しいスチール缶を使用している、一方で通常の個食非常食は、アルミ多層パウチ(*注記3)を使用している。
公開LCAや業界・公的資料(*出典2, *出典3)を踏まえると、同じ内容量の食品を入れる前提では、スチール缶よりアルミ箔入り多層パウチのほうが、気候変動負荷や輸送由来負荷は低く出やすい。ただし、回収・再資源化のしやすさはスチール缶のほうが強い、というのが最も実務的な整理となる。なお、ここでいう「アルミパウチ」は、一般にアルミ箔を含む多層ラミネートのレトルト/高バリアパウチである。カナダ政府資料(*出典2)では典型的なレトルトパウチをポリエステル・ナイロン・アルミ箔・ポリプロピレンの積層体として説明しており、欧州の比較LCA(*出典3)でもパスタソース用パウチは PP/Alu/PA/PET/PE の多層構成として扱われている。
今回もっとも参考となった比較のひとつは、欧州市場を対象にした ifeu(Institut für Energie- und Umweltforschung Heidelberg gGmbH=ハイデルベルクエネルギー環境研究所)の包装LCA(*出典3)であった。これによると400gのパスタソースでは、パウチの一次包装重量が10g、スチール缶が54gで、パウチは気候変動影響が69%低く、総一次エネルギーも39%低いという結果となる。オリーブのケースでも、パウチ6g、スチール缶36gで、気候変動影響72%低、総一次エネルギー37%低だった。つまり、単純化すると、軽さによる原材料使用量と輸送負荷の低減が、パウチの大きな優位となる。もっとも、この study(*出典3)では水域富栄養化ではパウチが不利という例外も出ている。
ただし、これは「アルミが低負荷」という意味ではない。素材1kgあたりで見ると、IAI(International Aluminium Institute の略称=国際アルミニウム協会)は2022年の世界平均の一次アルミニウムを 15.1 tCO2e/t(*出典4)、worldsteel(World Steel Association の略称=世界鉄鋼協会)は2023年の世界平均の粗鋼を 1.92 tCO2/t(*出典5)としている。境界条件が完全一致した数字ではないので厳密な横並び比較ではないが、アルミは質量あたりの製造負荷が大きい一方、パウチは使用量そのものが非常に少ないため、包装単位では有利になりやすい、という理解が妥当である。
一方で、循環性はスチール缶が優勢である。worldsteel は、鋼は磁力で分別しやすく、繰り返し品質劣化なく再生できると説明される。これに対し、WRAP(Waste and Resources Action Programme=英国資源行動計画機関)はアルミ・プラスチックのラミネートチューブやパウチには再資源化上の技術的課題があるとしている。実際、thinkstep(LCA of Beverage and Food Packaging in Australia and New Zealand=LCA分析を専門とする国際コンサルティング会社)の豪州・NZ向け包装LCA(*出典6)では、ある市場条件でpouch(アルミを含む多層複合パウチ)のリサイクル率を0%、対してsteel(スチール缶)を56%、aluminium(アルミ缶)を63%としてモデル化している。これは地域依存の前提となるが、使用後段階では缶が有利になりやすいことを示している。
以上から、結論を一行で言うと、CFP(Carbon Footprint of Products)や輸送負荷を重く見るならアルミパウチ寄り、回収性・資源循環を重く見るならスチール缶寄り、となる。
では、果たして、アルミパウチは環境負荷が少ないと言えるのだろうか?
それには、リサイクル(資源循環)と併せて考えなければいけないのでは無いかと考える。リサイクル率に関しての信頼できる数値は、プラスチックに関してのものであり、アルミパウチ(アルミ箔を含む多層ラミネート)は再資源化が難しく、かつ、回収率もプラスチックの一部でしかないため、高いとは言えない結果となる。環境負荷におけるアルミパウチの優位性は、使用量の少なさにのみあると言える。
日本では、スチール缶の94.4%のほうが、アルミパウチよりはるかに“信用が置ける数字”となっている。理由は単純で、公開されている主要集計(*出典7)では、スチール缶は独立した回収・再資源化指標があるのに対し、アルミパウチは独立カテゴリとして扱われていないからである。2024年度実績として、経団連の容器包装3R集計(*出典7)ではスチール缶94.4%、アルミ缶99.8%、プラスチック容器包装68.1%が示されているが、ここに「アルミパウチ」単独の全国率は無い。
| スチール缶 | 94.4% |
| アルミ缶 | 99.8% |
| プラスチック容器包装 | 68.1% |
しかも、日本の制度上、食品用のアルミパウチはたいていアルミ単体容器ではなく、アルミとプラスチックの複合素材として扱われる。経産省FAQ(*出典8)でも、アルミとプラスチックの複合素材は重量比の大きい側で表示し、プラスチックが50%超ならプラマーク、アルミが50%超でも飲料・酒類用缶でなければアルミ缶のような独立区分にはならないと整理されている。つまり、LCAでアルミパウチに「アルミ缶99.8%」を当てはめるのは不適切であろう。
さらに、政策資料(環境省の意見募集結果)(*出典9)でも、アルミ蒸着物や複合素材マルチレイヤーフィルムはリサイクルに不向きという扱いが繰り返されている。経産省・環境省の審議会資料(*出典10)では、委員意見として「アルミ蒸着物等もリサイクルに不向きではないか」と明記されており、環境省の採択事業(*出典10)でも、“マテリアルリサイクルが難しいとされるアルミ蒸着などを含む複合素材マルチレイヤーフィルム”を対象に実証が行われている。要するに、制度側もまだ、“通常どおり高い割合で回収・再資源化される包装”とは見なしていない訳である。
以上から、スチール缶のリサイクル率を94.4%でとり、アルミパウチを0%としてロス率を計算しなおすと、25年間の製品保存(更新してのパッケージ利用)を考えれば、いかに少量のパッケージ利用であっても5年保存においても5回、7年保存においても4回の新規パッケージ製造(新規CFP)があり、累計するとスチール缶には及ばない。
アルミパウチを7年保存25年更新回数4回で計算すると
Packaging-only /kg food:スチール缶 0.295 kg-CO2、アルミパウチ 1.333 kg-CO2
25-year service /kg food:スチール缶 0.320 kg-CO2、アルミパウチ 16.433 kg-CO2
となる。
フリーズドライ製法による CO2排出量は、熱風乾燥の一般的非常食に比較すれば3倍ほどになる。一方で、長期保存による更新回数の低減効果により、7年保存製品であっても25年間に4回の更新があり、3倍を超える CO2排出が考えられる。
更新回数は、そのまま物流コストにかかる回数であり、従って物流においても更新回数が CO2排出量と大きく関わってくる。一般的な非常食の梱包に使用されるアルミ蒸着多層フィルム(アルミパウチ)は、梱包資材として優れており、スチール缶に比較して同量の食品を梱包するのに使用する量が少なくて済む。量が少なくて済めば、包装容器を製造するのにかかるCO2も減らすことが可能となる。
第7章「リサイクル率を考慮した容器由来CO2の評価」
さて、ここでも問題としたい条件が長期保存を維持することである。サバイバルフーズはアルミパウチでは長期保存は出来ない、スチール缶を使用することにより初めて25年間の長期保存が可能となる。
仕様素材を考えるにおいても、更新回数が仕様素材の製造回数となる。しかし、 CO2の排出量を検討するにあたって、梱包資材の製造回数は、資源のリサイクル率(ロス率)と併せて検討しなければいけない。
日本ではスチール缶のリサイクル率は著しく高く(94.4%)、プラスチック容器(68.1%)を大きく引き離す。プラスチック容器は便利だが、リサイクルには向いていないのかもしれない。また、アルミパウチ(多層フィルム)はプラスチックの一部としてカウントされており、独立した全国回収率の公表が乏しく、多層複合材として再資源化が難しい側面がある。
従って、スチール缶は容器重量が大きい一方で、25年間そのまま保存・使用できるため、保存期間の短いアルミパウチ製品のように途中で複数回製造・更新を行う必要はない。25年間の累積で見ると、結果としてCO2排出量を抑えられる可能性がある。
1000食(カロリーベースを公平にしたアルファ化米とサバイバルフーズ(雑炊):370kcalと160kcal x 2)を1回だけ調達した場合、サバイバルフーズは約230.5缶必要で、缶材重量は約45.7kg、容器製造負荷は約89.1kg- CO2eである。これに日本のスチール缶リサイクル率94.4%を掛けた簡易残存負荷は約5.0kg- CO2eとなる。
先の議論の通り、日本ではアルミ箔入り多層パウチ単独の全国リサイクル率は確認できない。そのため、ここでは参考値として、3R推進団体連絡会が公表する「プラスチック容器包装」のリサイクル率68.1%を用いて簡易試算を行う。
5年保存アルファ化米は、25年間で約1010.9袋が必要となる。パウチ材重量は約6.52kg、容器製造負荷は約19.5kg-CO2eである。このうち、リサイクル率を68.1%と仮定した場合の簡易残存負荷は約6.2kg-CO2eとなる。リサイクル率を半分の34.1%とした場合は約12.9kg-CO2e、0%とした場合は約19.5kg-CO2eとなる。
7年保存アルファ化米は、25年間で約956.1袋が必要となる。パウチ材重量は約6.17kg、容器製造負荷は約18.4kg-CO2eである。リサイクル率を68.1%と仮定した場合の簡易残存負荷は約5.9kg-CO2e、34.1%では約12.1kg-CO2e、0%では約18.4kg-CO2eとなる。
| サバイバルフーズ | 容器製造負荷は約89.1kg- CO2e 簡易残存負荷は約5.0kg- CO2e |
| 5年保存アルファ化米 | 容器製造負荷は約19.5kg- CO2e 簡易残存負荷は約6.2kg- CO2e |
| 7年保存アルファ化米 | 容器製造負荷は約18.4kg- CO2e 簡易残存負荷は約5.9kg- CO2e |
ここだけを見ると、単回の容器製造負荷はアルミパウチが明確に軽い。
サバイバルフーズの缶は、1回調達の gross(製造負荷そのもの)では5年袋の約4.6倍、7年袋の約4.8倍である。これは、スチール缶が丈夫で長寿命な分、単位容器あたりの材量が大きいためだ。
一方で、日本の公表リサイクル率を掛けた簡易残存負荷(※注記4)で見ると、25年累計はかなり逆転する。
| 品目 | 25年累積 gross | リサイクル率 | 25年累積 簡易残存負荷 |
|---|---|---|---|
| サバイバルフーズ 25年・スチール缶 | 89.1 kg-CO2e | 94.4% | 5.0 kg-CO2e |
| 7年保存 アルファ化米・パウチ | 73.6 kg-CO2e | 68.1% | 23.5 kg-CO2e |
| 7年保存 アルファ化米・パウチ | 73.6 kg-CO2e | 34.05% | 48.5 kg-CO2e |
| 7年保存 アルファ化米・パウチ | 73.6 kg-CO2e | 0% | 73.6 kg-CO2e |
| 5年保存 アルファ化米・パウチ | 97.5 kg-CO2e | 68.1% | 31.1 kg-CO2e |
| 5年保存 アルファ化米・パウチ | 97.5 kg-CO2e | 34.05% | 64.3 kg-CO2e |
| 5年保存 アルファ化米・パウチ | 97.5 kg-CO2e | 0% | 97.5 kg-CO2e |
第8章「総合評価と結論(長期備蓄における最適解)」
以上の分析から、サバイバルフーズは国内リサイクル率94.4%のスチール缶を採用し、かつ25年保存を実現している点に特徴がある。同じ25年間の備蓄機能を維持する前提で比較すると、5年保存品は5回、7年保存品は4回の調達・更新が必要になるのに対し、サバイバルフーズは1回の調達で対応可能である。これにより、更新に伴う製造・輸送・廃棄の発生回数を、5年保存品比で80%、7年保存品比で75%削減できる。したがって、長期備蓄用途では、更新回数の少なさから、25年間累積でのCO2排出量を抑えやすい構造となる。
また、袋入り非常食で多く用いられるアルミ箔入り多層フィルム(アルミを含む多層ラミネートパウチ)は、軽量で輸送負荷を抑えやすい一方、複合素材であるため、缶類と比べるとマテリアルリサイクル面で課題が残る。日本ではスチール缶のリサイクル率が高水準であることも踏まえると、長期備蓄全体で見た場合、サバイバルフーズは累積環境負荷を抑えやすい備蓄方式の一つと位置づけられる。
注記
- *注記1
- 本研究における結果は公開資料に基づく簡易的な比較試算であり、ISO規格に準拠した詳細なLCAや第三者認証を受けた値ではない。したがって、結果は参考値として解釈する必要がある。
- *注記2
- 輸送CO2は、経済産業省・国土交通省『ロジスティクス分野におけるCO2排出量算定方法共同ガイドライン Ver.3.2』(*出典1)に示される改良トンキロ法の考え方に基づき、輸送重量と輸送距離から試算した。
- *注記3
- アルミ箔入り多層パウチは、欧州市場を対象にした ifeu の比較LCAでは、スチール缶より気候変動影響が低く出る例が確認される。一方で、日本国内ではアルミパウチ単独の全国リサイクル率は主要集計上確認できず、スチール缶については3R推進団体連絡会の2024年度実績(*出典7)で94.4%というリサイクル率が公表されている。
- *注記4
- 本稿の「簡易残存負荷」は、容器製造負荷に公表リサイクル率を掛けて残存分を概算した当社試算であり、第三者認証LCAまたは公的CFP値ではない。
出典
- *出典1
経済産業省・国土交通省『ロジスティクス分野におけるCO2排出量算定方法共同ガイドライン Ver.3.2』(令和5年6月) - *出典2
Canadian Food Inspection Agency “Flexible Retort Pouch Defects Manual” - *出典3
ifeu Heidelberg “Comparative Life Cycle Assessment of different pouches and alternative packaging systems for food (Pasta Sauce and Olives) on the European market” Executive summary report, commissioned by Flexible Packaging Europe, April 2021. - *出典4
IAI(International Aluminium Institute), aluminium facts / GHG emissions data. - *出典5
World Steel Association “World Steel in Figures 2025” - *出典6
thinkstep-anz “LCA of Beverage and Food Packaging in Australia and New Zealand” Prepared for Tetra Pak Oceania, 2021. - *出典7
3R推進団体連絡会『容器包装3R推進のための自主行動計画2025 2025年度フォローアップ報告(2024年度実績)』 - *出典8
経済産業省 > 容器包装の識別表示Q&A - *出典9
環境省『「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令案」等に対する意見募集の結果について』別紙 - *出典10
環境省『令和5年度脱炭素型循環経済システム構築促進事業(うち、プラスチック等資源循環システム構築実証事業)(補助)の二次公募結果について』






