この記事では、非常食やサプリメントを使って野菜不足を防ぐ方法を紹介します。
非常食に野菜を取り入れる重要性

災害時の避難所では、炭水化物が中心の食事になりやすく、野菜が不足しがちとなります。避難所の配給は、保存が効きやすい米やパンなどの主食が中心となり、野菜類などの副菜は後回しにされることが多いのです。
農畜産業振興機構によると阪神・淡路大震災では、家庭、行政ともに野菜類の備蓄がなかったため、避難所での食事は極端な野菜不足に陥ったといわれています。
これらの理由から、野菜をしっかり補給するためには、事前に自身で備蓄しておくことが重要です。
非常時の野菜不足が健康に与える影響
災害時に備蓄食として炭水化物中心の食事に頼るのはリスクがあります。炭水化物はエネルギー源として重要ですが、栄養バランスが偏ると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。特に野菜に含まれるビタミン、ミネラル、食物繊維が不足すると、以下のような影響が考えられます。
- 持病の悪化
- 血圧の上昇
- 口内炎
- 便秘
- 風邪
- 皮膚の免疫力の低下
- 心理状態の悪化
他にも、野菜に含まれる栄養素の不足によって、以下の症状を引き起こすことが知られています。
栄養素 | 症状 |
カリウム、食物繊維の不足 | 高血圧や糖尿病など生活習慣病リスクが高まる |
ビタミンA、ビタミンC、亜鉛の不足 | 免疫力の低下し風邪をひきやすくなる |
ビタミンB、ビタミンCの不足 | 疲れやすくなる(疲れが取れにくくなる) |
鉄分、葉酸の不足 | 貧血を起こしやすくなる |
野菜に含まれる食物繊維の不足 | 便秘になりやすくなる(便秘症による免疫力低下) |
ビタミン、カルシウムの不足 | 精神的不安定、イライラしやすくなる |
参考:全国健康保険協会「野菜が足りないとどうなるの?」
栄養バランスが崩れると体調不良が続き、様々な健康問題を引き起こす可能性から、極端な場合は命に関わることさえあります。一度失った健康を取り戻すには、長い時間が必要です。
災害だから仕方ないではなく、心身共につらい災害時だからこそ、栄養バランスを意識した食糧備蓄が求められます。
非常食の野菜不足防止におすすめの備蓄食品

非常食の野菜不足を防ぐため、フリーズドライ食品やレトルト食品、乾燥野菜、野菜ジュース、さらにはサプリメントを備蓄しておくことをおすすめします。これらは比較的に常温での長期保存ができ、複雑な調理なしに簡単に食べられて、栄養価を補うことができます。
ただし、野菜ジュースにはショ糖・糖質など糖分が多く含まれ、割安な保存食品ほど保存性を高める目的で塩分が多く含まれる場合があります。それらの食糧品に含まれる糖分相当量や塩相当量には留意しましょう。
また、食料品の保管・管理の手間を軽減するために、ローリングストック(使ったら使った分だけ新しく買い足していく循環備蓄)という手法を併用することや、できるだけ入れ替えの頻度が少ない賞味期限の長い食糧品やサプリメントを備蓄するのが良いでしょう。
関連記事:非常食をローリングストックで管理するポイント3つ|備蓄品リストや選び方も
サプリメント
栄養補助・補給に特化した錠剤タイプの製品で、手軽に必要な栄養素を摂取できるのが最大の利点です。調理も不要で、食事が摂れない状況でも最低限の栄養を補うことができます。メリット | デメリット |
・軽量・コンパクトで場所を取らない
・長期保存が可能(一般的に1〜2年、長いものでは最長7年) ・調理不要で、すぐに摂取可能 |
・食事としての満足感はほとんどない
・一般的なサプリメントは栄養素の補助が目的のため、エネルギーや満腹感が期待できない。 ※エネルギー補給用サプリメントやカロリー摂取を目的としたゼリー飲料などの商品もあります。 |
フリーズドライ食品・乾燥食品(乾物・ドライ食品・即席食品)
フリーズドライ食品や乾燥食品は、主に、食品内の水分を除去し水分活性値(AW)を物理的に下げる工夫等により食品の劣化を防いだ食品です。特にフリーズドライ製法では低温で乾燥させるため、ビタミンなどの栄養素が損なわれにくい特徴があります。食品の水分がほとんど無いため、とても軽く、抜群の保存性、気温等の環境変化にとても強い特徴がある一方で、湿気など水分には弱いとされます。食べるには、湯や水を加えるだけ、または、そのまま水なしで手軽に食べられます。
シチューやカレーなどの調理済みの料理(主にフリーズドライ食品)から、野菜や果物だけといった単一食材(乾物やドライフルーツ)まで豊富な種類の商品が売られており、調理済みの料理には野菜や肉、魚なども含まれていることが多く、味も本格的なものが増えています。非常食として備蓄する野菜の一例として、以下のようなものが挙げられます。
- フリーズドライ食品(缶入りやパウチ封入)
- 野菜フレーク・パウダー
- 野菜チップス・ドライフルーツ
- シリアル・お菓子
メリット | デメリット |
・軽量・コンパクトで持ち運びやすい
・調理なし(お湯や水を注ぐだけ)または、そのまま食べられる
・食事としておいしく満足感がある ・長期保存も可能(一般的なフリーズドライ食品で半年~1年、非常食として販売されるもので3年~30年) |
・栄養補給に特化しているわけではない
・水やお湯が必要な場合が多い |
レトルト食品
レトルト食品とは、調理済みの食品を密封し、加圧加熱殺菌することで保存性を高めた食品です。加熱殺菌による栄養素の損失はあるものの、密封状態で保存されるため、家庭で調理したものよりも栄養価が高い場合もあります。温めるだけですぐに食べられる手軽さが魅力で、おかずやカレー、スープなど種類も豊富で、調理済みのために、食事としての満足感も高いです。
メリット | デメリット |
・調理済みなので、温めるだけで食べられる
・味のバリエーションが豊富 ・普段の食事に近く、満足感がある |
・温めずに食べられるものもありますが、味や食感が大きく劣る場合がある
・フリーズドライ食品やサプリメントと比べると保存スペースが必要 ・袋を開けた後に洗う水がなく、臭いや衛生面で問題になることがある |
災害時に野菜不足が深刻化した場合、野菜ジュースを飲むことは有効な対策の一つです。野菜ジュースには、ビタミンやミネラルなどの栄養素が含まれており、被災者の栄養補給に役立ちます。
また、飲み物としてだけでなく、だしや調味料の代わりとしても活用できる便利なアイテムです。ただし、野菜ジュースには糖分が含まれていることが多いため、摂取量には注意が必要です。
メリット | デメリット |
・飲むだけで簡単に栄養摂取・水分補給が可能
・常温保存できる製品が多い ・保存期間も数ヶ月〜長いもので5年程度 |
・料理の満足度や豊富な栄養に欠ける
・糖分が多い場合があるため飲みすぎには注意が必要 |
長期保存ができる野菜
常温保存できる野菜を備蓄しておくと、冷蔵庫が使えない状況でも安心して野菜を摂ることができ、健康維持に役立ちます。以下に常温保存ができ、栄養価の高い野菜を紹介します。常温保存・長期保存ができる野菜 | 保存方法 | 常温保存の期間 | 代表的な栄養素 |
たまねぎ | 皮が付いたままネットやストッキングに入れ、風通しが良く直射日光が当たらない日陰に吊るす。 | 約3~4ヶ月 | ビタミンC、ビタミンB6、葉酸、カリウム、食物繊維、ケルセチン、硫化アリルなど |
ごぼう | キッチンペーパーまたは新聞紙で包み、ポリ袋に入れ直射日光が当たらない涼しい場所で保存。土に埋めておくのもおすすめ。 | 約2週間 | 食物繊維、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、葉酸、ビタミンB6など |
芋類(じゃがいも、さつまいも、里芋) | 土や泥がついているものは水洗いせずに、そのまま保存。直射日光が当たらない風通しの良い場所で保存。 | 約1~3ヶ月 | 炭水化物、食物繊維、カリウム、ビタミンCなど |
かぼちゃ | かぼちゃのヘタを上にして冷暗所で保存する。カットしたものは傷みやすいため、備蓄には不向き。 | 約2~3ヶ月 | 炭水化物、β-カロテン、カリウム、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE など |
メリット | デメリット |
・栄養バランスの確保(野菜不足を解消できる)
・調理すれば食事のバリエーションが広がる |
・調理が必要(生では食べづらい)
・季節によって手に入りにくいものもある |
非常食を準備するときのポイント

非常食を準備する際には、ただ食べられるものを用意するだけではなく、長期保存できるものや栄養バランス、家庭ごとのニーズを考慮することが大切です。とくに、災害時に不足しがちな野菜やビタミン類を補う食品を選ぶことで、より健康的な避難生活が送れます。
非常食を準備するときのポイントについて詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
非常食は1週間分用意する
非常食の備蓄は、最低でも3日分が推奨されていますが、実際には1週間分を目標に用意することが理想的です。災害発生直後は、避難所の設置や支援がすぐには届かない可能性があるため、長期的な備えが重要です。とくに広い地域に甚大な被害が及ぶ可能性のある南海トラフ巨大地震では、「1週間以上」の備蓄が望ましいとの指摘もあります。※1交通や物流が途絶える場合も想定し、1週間分の備蓄があれば、少なくとも自分と家族の生活を支えることができるでしょう。
参考※1:内閣府「できることから始めよう!防災対策 第3回‐内閣府防災情報のページ」
非常食は家族のニーズに合わせる
非常食や防災グッズの準備は、一般的なチェックリスト※2を参考にしつつも、家庭ごとに異なるニーズをしっかり考慮することが大切です。参考※2:災害の「備え」チェックリスト│首相官邸
例えば、子供や高齢者がいる家庭では、普段食べている野菜や、食べやすい形・サイズにしたものを用意するといった工夫が必要です。
野菜は日頃から意識的に取り入れる
成人が健康を維持するために摂取すべき野菜の量は、1日350gです。しかし、厚生労働省健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料によると、実際の摂取量は平均280g程度と約7割の人が目標量に達していません。日常的に野菜が不足しがちなため、非常時にはより意識的に栄養バランスを考えて備えることが重要です。
まとめ
もしもの時の“野菜不足”を防ぐためには、災害時の食事で足りない栄養素を補助する「サプリメント」の摂取がもっとも適しているといえます。ただ、栄養素は摂れてもサプリメントは食事ではないので、栄養素はサプリメントほどでないものの、食事の主菜やおかずとして、常温保存ができる野菜類、フリーズドライ食品やレトルト食品、野菜ジュースなどを非常食に常備するなどして災害時に役立てましょう。これらをローリングストック法で備えておくことで、いつでも健康的な栄養補給が可能になります。野菜不足が深刻化しやすい非常時こそ、栄養バランスをしっかり考えるようにしましょう。
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