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ホーム > 防災コラム一覧 > 防災一考 > エボラ出血熱と日本のBSL-4施設を考える [2014.10.3]

エボラ出血熱と日本のBSL-4施設を考える

防災コラム


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BSL-4(バイオセーフティレベル4の最高度安全実験施設)は日本で稼働するのか?

安倍首相が、2014年10月2日、所信表明演説に対する代表質問への答弁(参院本会議)で、西アフリカのエボラ出血熱流行などを踏まえた感染症対策について―――《 さらなる強化が必要で、一層取り組みを進める。(高度安全実験施設については)施設が立地する地元関係者の理解を得て、早期に稼働できるように対応したい 》、と述べたそうです。

ここで注目すべきは「BSL-4施設(高度安全実験施設)」について、述べられたことです。

BSL-4施設とは、エボラ出血熱、ラッサ熱など最高危険度(1類感染症)の感染症・病原菌を安全に取り扱える唯一のWHO規定リスクグループ4施設をいいます。
BSL-4施設は現在、アメリカ、ヨーロッパ、中国、台湾、シンガポール、インドなど41か所の先進諸国の大学や研究機関で稼働し、ここでウイルスの診断や分析が行われ日々ワクチン開発が行われています。

日本のBSL-4施設は使用を見合わせている


しかし、日本では、国立感染研(東京都武蔵村山市)と理化学研(筑波)に既に施設があるものの、現時点では、近隣住民の反対の声があるなどの理由から、BSL-4施設としての使用を見合わせているといいます。
30年前、1987年に海外渡航者が帰国後にラッサ熱を発症した際、日本国内のBSL-4施設の使用ができず、患者の診断をアメリカにお願いした事件があったそうです。

さて、

私は、2006年くらいに、このBSL-4の話(日本では稼働してない)を聞いたような覚えがありますが、それからもずっと何も状況は変わってなかったとニュースを読んで知りました。

原発放射能漏れ事故、研究論文不正が取りざたされている今、科学者が発する"安全です" の伝わり方は、30年前と今とでは、だいぶん印象が異なるでしょう。
また、「有事の備え」は、「今、危険が迫っているから」という切迫的な段階より、もっと経済的にも余裕があったりする平和な時より行うべき、と先人の知恵にもあります。
だから、面倒を棚上げせず、もっと昔から "地元関係者の理解" を得ることに注力すべきだったと思います。

もう30年以上も一部の住民と話がこじれちゃった東京の施設は、理解を得ることに時間をかけるだけ無駄かもしれませんし・・・。

聞くところによると、アメリカにも、地元住民の理解が得られずに稼働できないBSL-4施設があると言います。

危険な病原体による国内症例がでたときにきちんと診断でき、そして、できるだけ早くに治療薬をつくって、多くの人を救うことができる施設が必要なのは誰もがわかっています。
でも、誰だって、自宅のとなりに「あなたの隣りのBSL-4施設に、治療法がみつかっていない致死性感染症患者が全国から集います」なんて状態になったら嫌ですもんね。

自衛隊が災害救援に出動しただけでジャーナリストが文句を言うような平和ボケな国で、テロリスト(バイオテロ)にも備えるべきBSL-4施設が本当に安全に運用できるかもわからない。
これだけのセーフティーレベルを維持する管理運用には、当然に、巨額な予算がかかりますし、職員の教育などにもかなりのノウハウと時間・コストがかかりそうです。
原発と同じくらいの基準で、国が責任もって厳正に安全に運用できる、そういうのがきちんと見えないと、なかなか理解は得られないかもしれません。

とにもかくにも、他の大学や研究機関に新たに設置するなどの計画も今後はありそうですので、できるだけ早期の稼働を期待しています。

今年の感染症法改正のポイント


さて、

今年(2014年)、感染症法の改正案が10月の国会に提出される見通しです。

改正のポイントは、感染経路の特定にあたる行政機関(都道府県)に患者や病院からの検体提供を求める権限を与えたこと。

●すべての感染症患者の血液など検体の採取を要請できる。また、致死性が高い1類(エボラなど)・2類(結核など)の感染症の場合、強制的に採取できる。

●鳥インフル(H7N9)と中東呼吸器症候群(MERS)を新たに2類感染症に指定 ※1類・2類感染症の患者に対しては検体採取を「措置」として強制できる

●感染症検査精度の向上のため、国が検査方法とそれに必要な設備について全国共通の基準を策定する

例えば、デング熱とか新型インフルエンザといった、いままで確認されていなかった新たな感染症がみつかった場合、感染拡大を防ぐために、できるだけ早くに、患者がどこで感染したのかなど感染経路を特定する必要があります。

この感染経路特定のためには、患者の血液採取や医療機関からの検体提供(情報収集)が欠かせませんが、いままでの感染症法では、感染経路を特定すべき最前線の都道府県には、それらを集める法的権限が与えられていませんでした。

そのため、患者が拒否すれば検査ができず、また、医療機関の中には患者の個人情報を理由に検体の提供を拒否するケースもあったそうです。

今回の法改正は、間違いなく、70年ぶりにデング熱の国内感染が見つかったこと、中国など近隣国で新しい感染症が猛威を振るっていることなどから感染症が身近な脅威となってきたことからの法改正でしょうが、今までの権限のあやふやなグレーな部分を少しばかりクリアにしたものとして評価できますね。英断と思います。

感染症患者の即時強制隔離の問題

結核患者のサナトリウム(明治村)
今回の法改正では触れていませんでしたが、現行の感染症法では1類・2類の患者については「入院勧告」、勧告に従わない場合に「入院措置(即時強制隔離というのでしょうか)」ができるように既に権限が定められています。

そのため、鳥インフル(H7N9)と中東呼吸器症候群(MERS)でも新たに入院措置できるよう法的に可能になりました。

しかし、ここで懸念される問題がもう1点あります。

それは、現実的に患者の「強制的な入院」が可能なのかどうか、という問題です。

例えば2類に指定されている「結核患者」のいくつかの実例を聞くと、現実的には強制的な入院(患者が勝手に退院することを阻むのも難しい)を行うことは難しく、そのため法律に実効性が伴わないなどの指摘もあります。
この辺も今後クリアになるかどうか注視したいですね。

(2015年8月10日追記)

2015年8月3日、30年以上稼働を見送られてきた国立感染症研究所村山庁舎のBSL4施設について、東京都武蔵村山市が「稼働やむなし」と方針転換し、国と稼働させることに合意した。
実際、G7主要先進国の中でBSL4施設が稼働していない国は日本だけだったそうで、近く、村山庁舎は国内初のBSL4指定施設となるようだ。

BSL4施設は、世界人類を脅かすエボラ出血熱など致死性の高い6種類の最高度レベルの病原体の診断、解析、ワクチン開発などの治療、研究を行う施設で、生物兵器やバイオテロなど有事の対策でも重要な役割を果たす国家的な専門施設である。過去のラッサ熱騒動の時のように外国に分析を頼み込んで、日本国内には、貴重な危険ウイルスの知見が得られなかった、なんてことは今後なくなるだろうと思う。この分野で、日本がようやく国際貢献できるようになるのはの基本的に目出度いことなのだろう。

ただ、施設自体がテロの標的となる可能性もあるので、管理・運用面の厳重な対策が必須とされる。

具体的には、テロリストなど侵入者への警備強化のほかに、施設に出入りする研究者や関係者の国籍や身元をきちんと確認するとともに、国際線のパイロットよりも厳重に、研究者らの定期的な健康診断と精神状態のチェックも欠かさないというよなことが行われるものと思われる。
・・・とここまで、各社報道にも少しは書かれている内容だけれども、地震・津波・巨大台風などの自然災害に対する施設自体のリスク、こうした災害時の混乱の時には職員も参集できないだろうと思われるがそうした運用面にどう対応するのか等、に関しては、どこのメディアも何故だか言及していない。
もしもの時には自衛隊なども、もしかすると関わって来るのかな、とも思うのだけれども、この辺が、良く分らない。
きちんと想定外も想定して、安全に運用して欲しいものである。

文責:平井P 初出:2014年10月3日 / 更新:2015年8月10日


《FYI》
エボラなど危険な病原体の輸入検討…施設稼働で(讀賣新聞 2015.08.04)

実験施設稼動、市方針転換に住民「出来レース」(讀賣新聞 2015.08.04)

「漠然とした危機感ある」「BSL4」施設で周辺住民(産経新聞 2015.08.04)

武蔵村山市長「稼働やむなしと判断」レベル4施設、国と合意(日経新聞 2015.08.03)

国立感染研:レベル4施設、稼働へ…国と武蔵村山市が合意(毎日新聞 2015.08.03)

病原体扱う実験施設、首相「早期に稼働したい」(読売新聞 2014.10.2)

感染症の情報収集を強化…政府、法改正案提出へ(2014.10.2 読売新聞)

感染症法の改正案:臨時国会に提出 厚労省(2014.9.10 毎日新聞)

Seishop Facebook > 死亡率35% 新型コロナウイルス(MERS)に要警戒(2014.6.27投稿)

Seishop Facebook > エボラ出血熱の感染・死者数をグラフにしてみた(2014.8.6投稿)

Seishop Facebook > 史上最恐の感染症「エボラ出血熱ウイルス」に警戒(2014.8.1投稿)

Seishop Facebook > エボラ出血熱対策について雑感(2014.10.23投稿)

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